86.【森騎団】放置されたゴブリンと発見する冒険者
「よっと」
ポイっと拾ったものを放り投げたのはゴブリン。ほとんどが冒険者の遺品。もう結構集まっていて山となっていた。これだけのものを築いたのは過去にない。サブサブロとかいうテイマーの命に従ってやってはいるのだが、素材を集めよと言ったきりさっぱり音沙汰がない。
「なあ、俺ら忘れられてね?」
「忙しいんじゃないか?」
「何で俺ら従ってんの?」
「他にやる事ないからじゃないか?」
首を捻り合う二体のゴブリンのもとへもう一体がやってきた。ぽーいと投げて追加する。彼らは一郎に名づけられたゴブリン一週間。ゴブサーズ、ゴブサン、ゴブマンである。
「何かアイツがいねえとやる気でねえべ」
「アイツ?」
「ゴブウェイのことじゃないか」
ああっと頷く。そういえば一体だけあのテイマーに連れていかれたんだと。
「アイツ元気でやってかな。いっつも寝てたけど」
「大丈夫だろどこでも寝れる奴だったし」
「なあゴブウェイってなんだっけ?」
「お前もう忘れたのかよ。アイツの名前で俺らも似たようなもん付けられたろ。ゴブフライ……は死んだんだったか。お前はゴブサーズ、俺はゴブマン、であいつはゴブサン。何からモジったかは知らねえけどな」
ああ、それならとゴブサンが冒険者の遺品に頭を突っ込みこれじゃないかと取り出した。ゴブサーズにはただの△の箱に見える。数字が沢山書かれていた。
「何だそれ?」
「聞いて驚け、俺は多少読めるんだ。えっと、からんだ?かれんたーだ。多分、奴らの暦だな。ほらここ」
そう言って曜日のラインをなぞりそれっぽいと納得する。
「これだな。お前良く分かったな」
「へへ、テイマーの匂いを覚えてたのさ。これを持ってるのは同じ匂いの奴だった。この国の連中じゃねえ」
「ん?ウェイがねえぞ。ウェンだ。他は一緒なのに何でゴブウェイだけ」
「間違えてるんじゃねえか?サブサブロ様、ゴブリンよりアホだったりしてな」
大発見な気がしてギャッギャっと騒ぐゴブリン達。それを物陰に潜み盗み見る存在があった。ペルシアの冒険者である。森騎団というCクラスのパーティー、その斥候役を担っている男二人が身を伏せる。片方は20代ほどの茶色の長髪を後ろで束ねた若い弓士の青年でもう一人は鍛えられた肉体を持つ壮観な顔立ちのまさに騎士といった男だった。青年が背負った弓に手を掛ける。
「ゴブリンです。見て下さいボッシュさん、奴ら完全に油断してますよ。やりますか?」
「待て!ウィル」
ボッシュと呼ばれた男は手で示しその目を細める。弓士の名はウィルソン、愛称でウィルと呼ばれていた。
「僕ら二人ならやれますよ?」
「馬鹿野郎、あいつらの後ろを見ろ。ありゃ塚だ」
「なっ本当ですか!」
ゴブリン塚。死体を漁り、装備を埋める習性がゴブリンには存在する。だが、余りに数が多いと埋めずああやって山を築くのだ。
「いいか、ウィル。ゴブリンってのは群れを為す。だがリーダー同士は互いをライバル視する。だから塚の数で群れの数が分かるんだ。それが一つしかなくあのでかさってことはだ」
ベテランの男の真剣な顔に森騎団に入りたての新人の弓士ウィルソンはゴクっと唾を呑み込んだ。
「ゴブリンジェネラル……最悪、ゴブリンキングが率いている可能性がある」
「なっ」
Fで楽に狩れる弱い魔物として名高いゴブリンだが、中には頭の賢い個体も存在し指揮できるものであると話は大きく変わる。近隣の村を楽に滅ぼす力を持ち、冒険者側も集団でなければ囲まれて殺される。
「何より奴らも動きが普通のゴブリンじゃねえ。まさか全員名付きか?依頼は中断。ペルシアに戻って団長に報告だ。あー一応ダンプストの野郎にもな」
「あいつらやらないんですか?」
「馬鹿を言え、殺したとバレれば攻めてくる。ゴブリン5体のリスクとしては不釣り合いだ。帰るぞ音を立てるなよ」
決死に帰還したボッシュ達によりその報は齎されギルドは大騒ぎになるのだった。一日後、最上一郎は画面越しでそれを目撃する。




