8.【ツリー】集え 同胞 トレント達よ!
あのような大斧を使うのだ。力が強いとは理解していた。けれどこれは……。
主によってポーンと投げられた丸太がズドンっと目の前で詰みあがった。自分たちがこうなった時の姿を想像してしまい。ブルリと身が震えた。
(ふん、森を荒らしだしたぞ。化け物が)
(おい主に何て口を利くんだっ)
私のもとへやってきたのはやっぱりあの突っかかってきたトレントであった。確か名前は……。
(キートゥエンティー。俺の事はキトゥエと呼べツリー)
主が付けてくれた名を略すとは何事かと思ったが喧嘩になりそうなので止めた。同胞で争うことは主も望んでいないだろうから。
(自ら付いてきておいて、文句を言うのだなキトゥエ)
(自らだと?強制ではないか。トレントが脆弱であると知った上でな。使役されたものが使役者から離れればどうなるかお前も知ってのことだろう)
(使役されただけでは不満か?)
(不満不満大いに不満だ。何も与えない相手を主として仰げるものか。何を考えてるのかサッパリわからん。俺達もあの丸太に加えられるんじゃないか?)
イラっとする。主を侮辱されたことに強烈な怒りが湧いた。私は枝(手)をあげようとしたがそこに主がやってきて止まる。腰を折って跪けないのが残念だ。
主は余り喋れないのかジェスチャーで意志を伝えてくる。
(手伝うなということでしょうか?主様)
(何でこんなことができて魔言が使えねえんだよ。アホなんじゃねえか?そいつ)
(キトゥエっ!!)
(大丈夫さ。こいつには聞こえちゃいない)
(私はそういうことを言っているのではないっ。主を侮辱するなと言っているっ)
(はっ頭の中まで使役されたか?俺は違うな。どれだけ脅されようとトレントである
誇りは忘れねえ)
こいつとは馬が合わないと思ってはいたが、もう我慢ならないと動き出そうとした私の肩を主の手が掴んだ。
(主様?)
(はっ意外と臆病なのか?)
(キトゥエ……)
自分でも底冷えする魔言が放たれた。ガルルルルっと心で唸るが主はそのやり取りをも無視し、使役した時のようにスッと手を伸ばす。一体何をとその先を見つめた私は驚愕に打ち震えた。
(なっ)
キトゥエも絶句しているが無理もない。目の前で世界が生み出されていたのだから。大地が起こり、草木が生え、川のせせらぎが生み出された。空白を抜けたといえ、未だ木々しかない不毛の大地。そこに長年トレント達が夢見た楽園があった。
一本、また一本と積んであった丸太が消えていっていることに気づく。まさかたったあれだけの依り代でこのような奇跡をと倒れそうになった。
「スマエ……トレント」
(こっここを我々にお与えになるというのですか?)
何も答えてくれないがじっと見つめられる。
“やはりこの方はトレントの救世主なのだ”
(お前何が狙いなんだっ)
キトゥエが吠えるが主は無視し私に語り掛けてきた。
「シバシ ハナレル タクシタ ツリーヨ」
ヒュンっと音を立てて主が消えた。呆気にとられ茫然としてしまう。
(消えた?)
(ヒョッヒョッヒョ)
第三者の魔言にバっと振り返る。
(貴方は長老?何故ここに)
古樹。一目で長生きしているトレントであると分かる。トレントは年齢によって偉さが変わる。私は頭を垂れようとしたが待ったをかけた。
(お遊びで若者たちの中に紛れてみるものじゃ。まさか伝説の転移術をこの目にするとはのう。まあ使役されるとも思っておらんかったがヒョッヒョッヒョ)
(転移だとっ、馬鹿な! 古代呪文ではないか)
(何を驚いておるんじゃキトゥエ。天地創造を為されたお方だ。それも詠唱すらなしにのう)
ニヤリとする長老。まさに恐るべき主か。
(長老、これから一体どうすれば?)
(余り多くは語らぬお方。しかし、だからこそ試されているとワシは見た。これだけの広大な土地を我らにお与え下さった。この人数には余りある。つまり、戻ってくるまでに仲間を集めよという事じゃ)
成程と頷けば長老が私の目の前に立った。
(わしはもう長老ではない。キテンという名を賜った。以後わしのことはそう呼んでくれ、わしはお主の下に付こう。ツリーよ、お前がトレントの代表となるのだ。主はそれを望んでおられる)
(私が……代表)
(ここはわしが収めよう。お主は仲間達を集めるとよい。キトゥエよ、お前はツリーの護衛だ)
(は?何で俺がっ)
(お前さんの言う誇りとやらはこれほどのものを頂いても返さぬということか?)
(ぐっわかったよ。いきゃいいんだろ?おい、ツリー、俺が前だ、付いてこい。行くぞ)
私もこいつと行くの不満なんだがと思いつつもトップたるもの我慢せねばなるまいと溜息をついた。
(ちょう……キテン殿行ってまいります。もし、主様が帰ってきてしまった時は)
(うむ、どうにか伝えよう。トレントの未来託したぞ)
主の期待に応え、私は役目を果たす。一日、いや半日だ。半日でこの空白に住むトレント達をかき集めてみせる。あの急ぎよう。主様もきっと凄い戦いに身を置いておられる。そう思うからこそ。
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