79.【教会】私達は出会いました。使徒様に
ペルシアの町にある寂れた教会。それがこの町でのサブカル教の地位を証明しているといえるだろう。何と愚かな者達が多い町かと司祭ミハエルは首を振る。
世界で最も信徒がいると謳われる巨大宗派なのにどうやらその威光はこの田舎までは届いていないよう。だが、決してミハエルは諦めない。どんな文化も愛せを教えとして掲げるこのサブカル教を絶対に布教してやると心に誓う。
どこに行っても冷たい対応をされボロボロになったミハエルは今日も今日とてルーティーンである神への祈りを行う。いつか神が応え救ってくれると信心深い彼は信じていた。そんな司祭に呆れた目を向けるのは若いシスター、クレハだ。
そばかすのある赤髪の彼女はそんなことをしても無駄なのにと常々思っていた。貧乏育ちの田舎娘。シスターという職を得たがまるで裕福となったとは言えない。
いや、寧ろ恵んで貰ってる分悪くなった気がする。神がいればとっくに助けてくれてないとおかしい。このままじゃあの薄ら禿げのために体を売ることになるのではと。流石にそうなったら逃げ出すが餓死コースは決定だろうか。
(あーあ結婚とは言わなくてもせめてイケメンを見ながら死にたかったわ。そうよ出してみなさいよイケメンくらい。サブカルの神様はそんなこともできないのかしら。今日くらい祈ってあげるからやってみなさいよ)
ここに二つの祈りが交錯した。そしてどんよりとした一日を終え気分転換のために最上少年がデュアルミッシュの電源を入れたことで奇跡が巻き起こる。
初めにその異変に気づいたのはミハエルだった。室内なのに風。彼はズラがずれると押さえたがそのままのポーズで固まった。次にクレハも気づき口をあんぐりと開ける。
ゲートがあった。青年が出現したかと思うと天使の羽根が舞った。ボトリとズラが落ちるのも気にせずミハエルは震える手を羽根に伸ばした。触れた瞬間、光の粒子となって消え、ミハエルは確信したこれは神の啓示なのだと。
そしてシスター、クレハもまた好青年の甘いマスクに見惚れ動けずにいた。金髪に人形めいた美しさ。武骨な鎧を纏っているのがちょっと気になるが、イケメン無罪である。自然とミハエルと共に跪いていた。
「フム、ドウヤラ復活シタ ヨウダ」
金髪のイケメンが喋った。復活?何で片言とクレハは疑問を持ったがミハエルは現世に慣れておられない神なのだと確信した。
「使徒様」
「何者ダ」
「私の名はミハエル・ミッツハイト。司祭としてこの地をこの私が守り続けてきました」
「ツマリ オ前ハ 人ノ守護者トイウ コトカ」
「はい」
ミハエル即答。え?守護者なの?初耳なんですけどとクレハは隣で目を剥いた。
「ソチラノ者ハ?」
「彼女は見ての通りシスターで……私の……生涯の守護者です」
おいぃいいいいい。生涯の守護者って何!?それは一体どういう意味よとクレハは口元を引き攣らせる。何頬赤らめてんのあの禿。どさくさに紛れて告らないでとクレハは慌てたが反論するよりも先に青年が前に立っていた。スッと手が伸びてきたかと思えば二人そろって頭ポンポンされる。
「ソウカ大儀デアッタ」
辛い目にあってきたからこそ二人は涙が出る思いだった。理解したこれが“救い”なのだと。ぐううっとお腹が鳴ってクレハは真っ赤になった。
「ン?腹ガ減ッテ イルノカ」
「いっいえ」
不思議な間があってからイケメンは動き出した。
「丁度スキル 上ゲ ニ 作ッテ オイタモノガアル 食エ」
そう言ってライスバーガーが二人に手渡された。エルダイン人からすれば見たことがない食べ物。ただ、凄まじくいい匂いがして恐る恐る食べた二人はその美味さに脳と舌が蕩けた。
「うまっ!?あっじゃなくて美味しいです///」
「これが天界の食べ物、神々の食事」
◆───-- - - - - - - – --───◆
TIPS 信者の獲得。町で死亡した場合、貴方は信者が存在する教会で復活します。存在しない場合は復活できないため町で蘇生したい場合は送り込む必要があります。信者化には好感度を最大にする必要があるため食事や道具をプレゼントして高めましょう。 代用できる特殊なアイテムも存在するよ みきみき
◆───-- - - - - - - – --───◆
何だこの宙に浮かんだ文字、全然読めないとクレハが首を捻ればミハエルがわなわなと震えた。
「ししし神聖文字っ」
「神聖文字?」
「馬鹿者、神々が使われる言葉だ。やはり使徒様。彼は今啓示を受けられておられるのだ」
確かにイケメンはじっとそれを見つめている。
「ミハエル司祭あれって何て書いてあるんですか?」
「全くわからん」
……ホントお前司祭なん?とジト目を送るクレハ。反論したいミハイルだったが使徒ことサブサブロが外に出て行こうとしたため慌てた。
「ししっ使徒様どちらへ?」
「ギルド ダ」
そう言って颯爽と出て行くサブサブロ。ポケーっとするクレハを尻目にミハエルはハッとした。
「追いかけるぞクレハよ」
「え?追いかけるんですか?」
「使徒様は我らの窮状を見てお怒りのようだ。天罰が下るぞ」
ニチャァっと笑うミハエルにドン引きしつつも確かにこのまま彼に逃げられては生活が変わらないとクレハもコクリと頷いた。
「行こう!使徒様の許へ」
彼らは駆けた。離してなるものかと。口元にご飯粒をつけて。




