71.【俺】サブサブロとして再始動する
「はあー」
帰宅し、飯食った俺の顔は晴れない。頭に巡っているのはやっぱりお嬢様とのやり取り。これって告白かもって一瞬浮かれたが。時間が経って冷静になるとただの勘違いなんじゃないかって思えてきた。
「ぶっちゃけ結構あったしな」
手が触れあってあれ?こいつ俺の事好きなんじゃねって思った人が普通に彼氏できたり。ラブレターかと思ったら果たし状だったり、俺も猿のことを笑えないレベルで恋愛偏差値はゼロに等しいのだ。
できれば傷つきたくない。最悪も視野に入れつつあまり意識しないようにしようとデュアルミッシュの電源を入れた。『不落』撃破後、色々あって今まで何もできず仕舞い。よってバッツを蘇らせた後からだ。
たった一日だけなのに何か久しぶりな気がする。そう向こうも感じていたかのように俺が入ると魔物達が一斉に駆け寄ってきた。一番は魔怪鳥のバワンで次にナルケットラビの大福。彼女達は争うように縋り付いてきた。
他も心配そうに駆け寄り……いや、ゴブウェイは寝てるし、ユニーク狼ハヤテは何か唖然としているように見えるのは気のせいか?そんな口開けてたら顎外れるぞお前。
「ん?なつき度あがった?これ」
甘えっぷりがすっごい。そして大体、トレントのせいで前が見えない。後、五月蠅い。ソロソロと寄ってきたバッツに気づいた俺はお前の動画が一番伸びてるとエモートで頭を撫でてやる。
「クワッ」
照れてるのかそっぽを向きながらも擦りついてきた。ちょっと可愛いかもしれない。まるで魔物達の感情が見えるかのよう。デュアルミッシュ、ホント丁寧に作られたいいゲームである。
「ほら、一旦離れてくれお前ら。とりあえず確認作業に入るから」
『不落』との闘いでここを迷宮として稼働させるのはまだまだ不可能であると分かった。当分、戦力を充実させ鍛えつつも彼らには別の事をやって貰う方がよさそうだ。
(愛着湧いちゃったしこいつら失うの嫌なんだよな。別に迷宮で絶対使わなきゃいけないってわけじゃねえみたいだから私軍的な位置づけで使うか。でもなー魔王っていったらやっぱ迷宮だし。そっちのが配信映えしそうだし)
ふむと俺はメニューを開きステータスを確認する。サブサブロがレベル20に到達したことで死者蘇生という新たな力を手にした。
◆───-- - - - - - - – --───◆
≪死者蘇生≫
死んだ魔物を生き返らせる 魔王の技 レベルが上がれば人間もできるかも?
メイズポイントを消費 対象のレベルによって要求量が変化します
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が、ご覧の通りメイズポイントなるものを消費する。で、このメイズポイントは主に迷宮拡張に必要な超重要ポイントだが自分の迷宮内で冒険者を倒さなければ得られないとのこと。いや、それって難度高くないって俺は思うのだ。
10層程度でゴートみたいなのを受けとめられる気がしないし、稼働させずに冒険者を迷宮に呼び込める気がしない。このゲームのNPCってやたら鋭いし加えてめんどくさそうなスキルを持ってたりするので大変だ。バッツ蘇生を後悔してないとはいえそんな大事なものを速攻俺は使い切ってしまったわけで、いっそギルドに君もスパ迷宮で死んでポイントになろうって張り紙を出せないものか。
そんなおバカなことを考えつつ作成一覧表を弄ってると俺は面白いものを発見した。
「おっ」
◆───-- - - - - - - – --───◆
≪ミミックメイカー≫
魔物のコピー体を産み、階層主として配置できる。
作成メイズポイント 200
◆───-- - - - - - - – --───◆
これだっと俺は笑みを深める。まあ突破される度に生き返らしたり新しいの連れてくるとか手間が過ぎるのでこういうのがあって当たり前。これがあれば存分に魔物を配置できる。目下の俺の目標はやはりこのメイズポイント獲得となるだろうか。
(まあゴートで手に入ったし、ストーリーやれば多分手に入るよな)
進めればどうにかなるだろうと俺は続いてステータスを開く。20になったので当然スキルが振れるのだ。スキルレベル上昇の火力も助かったがゴート戦を経てやっぱり択も欲しいと感じた。デュアルミッシュはボタン割り振り型なので後二つ空いていると新技をゲット。
≪サブサブロはアックスウェイブLv1を覚えました≫
≪サブサブロはトマホークLv1を覚えました≫
アックスウェイブは地面に斧を叩きつけ衝撃破を放つ浪漫技。Lv1のせいか想像以上に遅いし小さいしで使い物にならない。まあ今後に期待。そしてトマホークは投擲から派生した技でブーメランのように小斧を放つ技である。
≪貴方のジョブが変化します。査定中≫
「遂にジョブが変わるな」
長かった。さよなら影の薄いローリングナイト。これだけ斧技を獲ったのだ恐らくアックスマスターとかバトルアックスなど超カッコいいジョブとなるに違いない。ありがとう不落。全ては君たちの経験値のお陰。ってあれ?そういえば不落って──
(ん?あいつら3人だったし明らか取り逃がしてるけど大丈夫なんかな?)
その辺アバウトなゲームなら助かるが。何せこのゲームはアドベンチャーRPG。『不落』のメンバーが出てくればちょっと気を付けた方がいいかもしれない。
人側の方である『白銀連盟』達の事も確認したいがあっちは顔を会わせただけでイベントが始まりそうなので取り敢えず、ツリーを呼び出した。
「お前ら魔物は待機でっと。もう一個の拠点は一応ツリー連れてくか」
初期の拠点だったあのトレントだらけのファームの確認もやっておくことにする。拠点同士はファストトラベルで移動可能。つまりペルシアの町と不毛の大地を一瞬で移動できるわけだがいまいちその活用方法は思いつかない。
チャンネルに人が増えたら配信でアンケートでも掛けてみようか。まぁ、まだまだそんなの先の話なんだろうけど。うし跳ぶぞ。
そして白色のトレント、ツリーを連れてファームに転移した俺は絶句した。
「何でお前ら繁殖するん……」
ファームの森がまた拡大していたのだ。




