7.【俺】ファームを作って寝落ちする
んーっと転がり回り、できる限り高台に登り周辺確認をしまくった俺はようやく紫の大地が途切れている部分を発見した。だが、遠い。辿り着くだけでも結構時間が掛かりそうである。
「ふわああ 広ええなこのゲーム」
欠伸が出てしまった。退屈というよりはもう外が明るくなってきたのだ。土曜で学校が休みとはいえ流石に仮眠をとった方がいいと思いなおす。
「そういえばセーブは?」
探しても項目がない。まさかオートセーブか?と顔を顰める。手動なしのオートセーブならやり直しは利かない。色々慎重に動かなくてはならないかもしれないが……いやもう手遅れかと俺は振り返る。
付いてきた森。気のせいか疲れているように見える。俺は貴重かもしれない仲魔枠をトレントで埋め尽くしてしまったというわけだ。
正直、ここまで結構大変だったので仮に詰んでももう一度魔王ルートをやる気はない。やり直すにしても多分、英雄とか別の職を選ぶだろうと俺は思う。
「ん?」
メニューをいじっていたら迷宮の下にNEWの文字が出ていることに気づいた。
「ファーム?」
開いてみればファームの文字。農場という意味だがこれはと説明欄に目を落とす。
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ファーム初級
new草原ファーム new森林ファーム new岩石ファーム
一時的な魔物の住処を作る。マナを含む土地などを設置でき、待機場住処として利用可能。置いてあげると魔物達が喜び好感度があがる
◆───-- - - - - - - – --───◆
「好感度って何だよ」
低いと言う事聞かないってことだろうか。兎に角、これ立ててみてもいいかもしれないと俺は決める。
「えっと必要素材は……木材」
斧を抜いてチラっとトレント達を見ればビクリと震えた。何だか可愛く思えてきた。
「冗談だって、えっとこれで待機って伝わるかな?」
俺が両の手を前に出すエモートを行えば戸惑いながらもピタリと止まってくれた。
「よし、待ってろよ。お前ら来たら切り間違って倒し兼ねないからな」
俺は近くの木が生えた場所に移動し、木材を取りにいった。
◇◇◇
「あーめんどくさ」
ドスンっと奥から木をとってきて丸太にし、それを運んで所定位置に放り投げる。アイテムボックスがあれば楽なのに……というか普通あるのに。このゲーム変にリアルさがある。トレント達はキョトンしている。
「今日はこれで終わりかな。起きれたら夜にもうちょい進みたいけど……ふわぁ」
ヤバい欠伸が止まらなくなってきた。眼もショボショボする。
「あーお前手伝おうとしなくていいって」
白いトレント、ツリーが手伝おうとして断られ右往左往している。ふっと笑ってしまう。一体どんなAIを搭載しているのか。何だか喋り出しそうな雰囲気である。
「昔のAIはそこそこ凄かったんだな。VRじゃねえ分、予算掛けられたって感じか。ほらどいてくれ。出来上がりだ」
俺はキャラの手を伸ばさせるとファーム作成をクリックした。
≪森林ファームを作成します≫
「おー」
自動で舞台が組みあがってゆく。演出なのか。驚き倒れ込むトレント達もいた。
「ここお前達の仮住処な」
トレント達が唖然としてちょっと面白い。
≪ファーム機能が解放されました≫
「マジか」
鍵付きだがここでも大量のページが追加された。これは凄い。シルエットで家とか城とかそういうものが見える。ファームと称していずれこんなのが建てられるようになるっぽい。
「もしかしてシム的要素もあんのかな?町作れるとか」
だったらとんでもないボリュームな気がするが……。まさかなと俺は大欠伸をした。
「じゃあ寝るからお前後よろしくな」
意味ないだろうが、反応が豊富なので声をついつい掛けてしまう。まあ声は絶対届くわけがないので肩ポン。そんなお前に任せたエモートを行い、俺はプチっと電源を落とした。
そのままベットにダイブの自堕落ライフ。休日ってのは最高だ。
「って歯磨かねえと」
久しぶりに良いゲームをやった感覚に浮つきながら、俺は朝から眠りにつくのだった。母に怒られるまで。