64.【バッツ】生き返りし者
その場にいた誰もが絶句していた。いや、事情をわかっていないただ一匹を除いて。
「あれ?俺何やって?あっ姉者?何で泣いて……っ!?アイツにまた何かやられっぐええ」
起き上がりぼんやりとしていたバッツが意識を取り戻し、バワンは彼に抱きついた。
「良かったっ!バッツっバッツっ生き返ったさね」
「え?」
呆けるバッツが改めて周囲を見渡せば魔物に囲まれていた。スパーダ6傑とかいう馬鹿な名前を付けられた魔物達が心配そうな視線をバッツに向けている。覚えていない。いや──
記憶がジワリと蘇る。バッツは何があったかを思い出しブワリと汗が噴き出した。思わず自分の腹を彼は見てしまう。けれど、そこには傷がない。
「バッツ殿は冒険者に刺し貫かれたのですぞ」
教えてくれたのは古木のトレント、確かキテンだったかとバッツはまだ混乱しているとぼんやりする。
「貫かれ……あれ?」
「何で一匹で出たさね!」
「その通りです。主様から厳命されていたでしょうに」
怒るバワンの横からのぞき込んできたのは兎の大福。初めて声を聴いたかもしれない。凛とした女性の声だった。
「俺は……家族を連れてこようって思って……それで……」
「しかし、驚きましたね。本当に生き返った……いえ、この場合生き返らせたというべきでしょうか」
白きトレント、ツリーが感心したようにバッツを見つめる。
「雑兵、それも命令違反を起こした者に蘇生術を使用する。まこと信じられぬことよ」
相手はただ歩いただけというのに踏み込んだ前足にバッツの体が震える。メンバー唯一の名持ち『疾風のワーグ』ハヤテがくっくっと笑い牙を剥きだしにする。
「あのアイツは」
「あれなら力を使い果たしたのだろう。お前を生き返らせた後、消えた」
「っ!?だっ大丈夫なのか?」
「さてな、さしもの奴でも蘇生術だ。一体どれほどの魔力を費やしたやら。我らが生きている間に帰ってくればよいがな」
「主様なのです。必ず戻ってきます。正直、主様の足を引っ張る貴方がた糞鳥を地獄に落としたいですが……主様が生かした命……勝手をするわけにはいきません」
どす黒いオーラを放つ兎、大福。ギロっとバワンをにらみつける。
「特に私の居場所に匂いを擦りつけてくる雌。これに懲りたら今後は私に譲ることです。いいですね?」
「それは無理さね」
「何ですって?」
「弟者を救って貰った大恩があるさね。これを返さなくては魔怪鳥の恥。責任をとってアタイがサブサブロの嫁になるさね」
「……ふざけないで」
「確かに彼には多大なる迷惑を掛けたさ。でも、これほどの犠牲を払ってもなお魔怪鳥を助けたということはもうそれは好きということさね。事実アタイを肩に乗せた。求愛行動とされる嘴も何度も何度も撫でられた」
ギリっと大福の口内、その前歯が軋む。
「サブサブロ様と貴方ではまるで種族が違う。求愛も種で異なるもので彼が好意を抱いているとはわからない」
「そうさね。でもそれはアンタも同じさね。正直重そうで重そうで」
ブチンとバッツは何かがキレる音を聞いた。
「成程、久しぶりに殺したいという感情が芽生えましたよ糞鳥」
「そこは気が合うさね。発情糞兎」
フシー、フシャーっとエスカレートする女性陣に男性陣は押し黙り、その間を割るようにゴブウェイが欠伸をうった。
「よくわからないけど、暫く帰ってこないならオラは寝ていいってことノラ?」
「何でゴブリンの癖に怠惰なんじゃお主は」
ゴブウェイへのキテンの突っ込みに同意しつつツリーはハヤテに聞いた。
「すぐには帰ってこられないのでしょうか?ハヤテ様」
「うむ、我が思うに数か月は掛かるであろう」
「お分かりになられるのですね!!」
「我、賢狼ぞ。我に分からぬものなどないわ」
魔物達の尊敬の視線を受け満面のどや顔を晒すハヤテ。だが、サブサブロが一日で帰還し予想を大きくは外したことで魔物内での権威が失墜。加えてサブサブロからお手とお座りを教わった頃にはハヤテの自尊心はポキリと折れ無事彼は飼い犬と化すのだった。
第一章FIN→第二章へ
第二章は11時と20時の二回更新を予定しています。敵は強め稀にシリアスが流れますが勘違いでぶっ壊し一郎とサブサブロがまるでゲームのように無自覚無双するギャグ物語『デュアルミッシュ』
応援ホントに感謝 二章も駆け抜けます




