61.【俺】激突『不落』はじめての死
いい曲だ。今までと違う曲調。ボス専用なのだろう。
≪NPCのボス化 露見→ボス というように貴方の正体を知った強NPCがボスとなります。人側に知られ情報が出回った場合、貴方の活動が劣勢に追い込まれますのでご注意下さい≫
「先に言えっ」
スティックを弾き、一気に駆ける。
≪パワースラッシュLv2≫
2に上がった超威力の攻撃を開幕からたたき込む。三人が跳んで避ける。そこへ
≪スピニーエッジLv2≫
斧が地面を叩いたと同時に回転技を発動。こちらも2に上がったことで威力が上昇し、更にグルグルと回転数が増えた。狙うは当然ニアムだ。だが──
ポーネソン :おっと
ポーネソンの剣に受け止められた。物理法則を無視しているかのように斧による一撃がピタリと止まる。これがレベルの差。確か20台後半とかだっけか。鑑定を掛けたいが暇がない。予めしっかり見とけばよかった。
【ニアム 魔法フレア】
ニアム :燃えなさい
剣を振るって弾かれたサブサブロへとニアムの炎が襲いかかる。
「おまっ僧侶つったろ!?」
回避不能。咄嗟にガードするが魔法なので防げない。HPがみるみる減っていく。炎を纏いながら有無を言わさず切りかからんとするポーネソンを吹き飛ばした。
ポーネソン :なっ!?
ゴート :はっは あんま強くねえがニアムの炎を喰らって足を止めねえとはお前本当に人間かよっと
【ゴート ハイスラッシュ】
剣のスラッシュなら俺も使えるが恐らくはその上位技。余りに鋭い攻撃だった。
「くっ避けれねえよこんなの」
スキルを纏ったゴートの突きが肩を抉った。HPが危険水域に達し、サブサブロがよろめく。その際、斧の柄で何とか反撃でき相手に傷を負わせたが──
【ニアム サークルヒール】
HPが回復してゆく。ざっとニアムを一番後ろに回し、二人の男が庇い立つ。前衛と後衛に分かれたこのフォーマルな戦い方。相手にすると厄介なことこの上ない。勇者PTを一人で相手取る魔王が卑怯だと言いたくなる気持ちもよくわかる。
激闘が続いた。だが手強いコンビネーションの前にサブサブロが地に沈む。
ゴート :終わりだな
「糞」
ニアム :ねえ顔見ておかない?本当にリーデシア兵か魔物なのか
ゴート :そうだな。仮面くらいは引っぺがしとくか
ポーネソン :待てゴート
ゴート :あん?
ポーネソン :悪しき波動を感じる。呪われる可能性がある。
ゴート :っち面倒なやつだ
ガンっと蹴られ、鎧の隙間から短刀を差し込まれた。HPがゼロになり死んでしまった。暗転。赤いgame overの文字が躍る。マジで死ぬほど悔しい。
≪コンティニューしますか?≫
当然だ。こんなので終われない。ただどこからなのかが不安だった。スパ迷宮はこれで終わりなのだろうか。それは嫌だ。頑張って作ったし、リスナーにも紹介し少ないながらも好評を得ていたのに。
ドキドキしながら、はいを選択。驚いたのはその場だったから。しかも──
ゴート :なっ
「え?」
僅かだが彼らの体力が減った状態。仕切り直しじゃなく、まさかの引継ぎだった。
「なんだ。だったらヌルゲーじゃねえか」
滅茶苦茶上手い人はこのゲームを死亡縛りとかするのだろう。まあ、このゲームをやってるプレイヤーが他に存在するのかは不明だけども。
ちょっと卑怯だが、今回は遠慮なくこのシステムを利用させていただく。絶対にスパ迷宮は落とさせない。
【ニアム ホーリーアンデッド】
魔術も使用可能なニアムの杖から迸った白魔法が俺の身を包むが何のデバフも掛かることなく呪文が弾けた。この世界の僧侶は攻撃魔法も使えるのか。もう覚えたぞ。
ニアム :こいつっ!?アンデッドじゃない!
ゴート :ポーネソンっダンジョンマスターが不死という情報は!
ポーネソン :聞いたことがない。だが、ここが迷宮であり稼働しているというのならボスを倒しさえすれば門は開くはずだ。蘇るアンデッドと闘ったこともあるがその時は復活までの時間扉は開かれて……
当然だが、挑戦する前に巻き戻っていないのでアイテムも引き継ぎ。先ほどヌルゲーと評したが突破できなければこれはガチで詰むやつかもしれない。
ニアム :来るわ!つまりどういうこと!?
ポーネソン :迷宮の門が正常に起動しているというのならそもそも死という概念が無い者なのかもしれない
ゴート :なっ!?ふざけやがれ。そんな馬鹿な話があってたまるか
何か喋っているが完全にあったまった俺は連打して読み飛ばす。こいつらを絶対倒す。そしてバッツの仇を討つのだ。リスナー人気も高かったというのに。マジで許さねえ。
【ゴート ハイスラッシュ】
一度見た技は流石にモーションを覚える。フェイントもない打ち出しなど──
「当たるかよっ」
ゴート :こいつ動きが!!
ニアム :警戒して私を狙ってる
ここからは根比べ、勝てるまで寝る気もない。たとえ徹夜になろうとも。それぐらい俺は腹を立てているのだから。




