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60.【俺】NPCと激突する

 飲み物とお菓子を引っ張り出してセットして、スパーダ内を転移する。人サイドから魔物サイドへ少し歩いて慟哭(どうこく)が聞こえた。言葉は分からない、けれど泣いているのだとはっきりわかる。ぐったりと倒れたバッツの死体をバワンがつんつんと(くちばし)(つつ)き、叫んでいた。


 敵はここにはいないようでホッとする。俺が近づいたことに気づきバワンが怒り吠えたように威嚇(いかく)してくる。確か弟だっただろうか。そりゃそういう反応になるだろうが、ゲームなのにここまでしっかりとやられイベント作っているとはちょっと心を(えぐ)られる。


 大福が押さえようとしたが、俺はエモートで腕を振って止めさせた。血はでていないが胸に刀傷を負っている。


「何で外に出たんだ?」


 死亡場所が迷宮外になっている。詳しく見るがありタップしてその内容に顔を(しか)めた。


 ≪離反 家族のもとへ行こうとバッツは冒険者に切り殺され死亡≫


 まさかこのゲームにそんなシステムまであるとは思わなかった。魔物と会話という項目があった。何言ってるかわからないので無視してきたがそれをやっていれば結末は変わったのだろうか。復活項目を探すが残念ながら見当たらない。


「これ死んだ奴は蘇らせれないのか?」


 後悔してももう遅い。もっと慎重になるべきだった。俺が踏み出せばバワンがキっと睨みつけてきた。大福が止めようとするが構わないとエモートを行う。


 軽く撫でて立ち上がる。魔物達が付いてこようとするがそれも拒む。まだこいつらは戦わせられないし、俺でも相手にならない可能性がある上に、そもそもこの場が人サイドに露見し逃げなければならない段階かもしれない。


 それでも──


「止まるっつう択はねえだろっ」


 俺は斧を召喚し、最速である前転で駆けだしたのだ。今更、人目など気にしてなんかいられるものか。


 ◇◇◇


 ここに至るまでで俺は様々な補助スキルを獲得している。その一つが探知スキル。魔物がいれば必要ないかと思ったが離れた場合不便なので取得した。範囲は狭いが地図上に誰がいるか分かるようになる。


(冒険者が3人)


 これは厳しいかもしれないとコントローラーを握り込む。見えてきた。談笑しながら歩いている。丁度ボス部屋──適当に設置したゴブリンが死んでいた。


 目に付くシルエットは大男。Cランクパーティー、やはりこいつらか。


「チーム不落っ」


 白銀連盟を追い駆けていた者たち。タンク役である悪漢の大男、重戦士ゴートを先頭にして横に女性の治療師ニアムと半竜人の剣士ポーネソンを連れている。五人PTだったはずだが後二人とは別行動を取っているのかそれとも潜んでいるのか。


 ニアム    :あら?あらあらこんなところでリーデシアの兵士様に出会うなんて奇遇ね

 ポーネソン  :怪しいことこの上ない


 ゴート    :やはり俺の言った通りだろう?C級があの包囲網を突破できると思えねえ。手引きした者がいるとしても魔道具持ちに決まっているとな。ノイマンの野郎しくじりやがったな


 女僧侶がニアム、男剣士がポーネソン。人族のニアムは背が低く、紫髪の性格悪そうなお姉さん僧侶で竜人族ポーネソンは顔面が蜥蜴なので表情が読みにくいが落ち着いた危ない剣士といった感じ。


 ニアム   :決めつけはよくないわ。冒険者が迷宮にいるなんてこの世界じゃ当たり前のことじゃない。でも、あれよね。余りにもこの迷宮は弱すぎる。まるで出来立てみたい


(こいつっ)


 ゲームなのにネットリした視線を向けられてゾクリとした。恐らくゴートの方が強者であるがニアムは頭がキレるようだ。


 ポーネソン  :ふむ地図にも載っていない。つまりは未探索の迷宮。おかしい、お前は最近ここへ初めて来たと聞いたがどうしてこの場所を知っているのか


 これはヤバい。初めからこういうシナリオだったのだろうか。それとも分岐なのだろうか。バッツが死んだことで大体の難易度を理解した。露見すればこの迷宮を放棄しなければならないし、デュアルミッシュはオートセーブで時間が戻らないとあった。最悪全滅で一からやり直しまでいきそうだ。


(他の冒険者仲間に通じてたら終わりだな……ん?)


 そんな思いが通じたのかガラララっとボス部屋の扉が閉じられた。


 ゴート  :おかしいじゃねえか。ボスを倒したはずなのにお前が来たことで扉が閉まりやがった。つまりボスとして認識されたってことだろ。てめえ、ダンジョンマスターってやつか?


(っ!?)


 ≪露見 不落が貴方にとってのボスに昇格しました。倒さなければ情報を持ち帰られ、貴方は危機的状況に陥ります 即刻討伐を推奨≫


 ガっとゴートがゴブリンの死体を蹴り、俺は堪らずAを押して斧を構えた。


 ゴート  :おいおい、こいつは大当たりってやつじゃないか?大方白銀の女どもと学生連中もここにいるんだろう?他を出し抜ける上にダンジョンマスターのお土産付きだなんて。ツイてるどころの騒ぎじゃない。あっという間にB級にあがれるんじゃねえか?


 ニアム  :ゴート、気を付けて。ダンジョンマスターは油断できないわ

 ゴート  :大丈夫だろ。生まれたて。碌に魔物が出てこない上にボスまでゴブリンときた。赤子を捻るよりも簡単。まさに宝物庫のようなものだ。リーデシアってのも大法螺だろうしなぁ


 ポーネソン:油断は大敵だゴート。三人で囲んで殺すべきだ


 不味い。一対一でもステータス差があるというのに三人で連携を取られれば死ねる。本来は魔物を揃えた上でのバランスなのだろうが。まだ育っていないし何よりできても彼らを呼ぶ気はない。


 ゴート  :あん?捕えねえのか?

 ニアム  :もしこいつがターゲット消失の犯人なら転移持ちである可能性が高いわ。元よりダンジョンマスターは”跳べる”者が多いと聞くし、探し回るのはもう嫌でしょ?


 ゴート  :くっく、そうだな。拷問に掛けてえところだが、逃げられれば面倒。ってことでサクッと殺そうか。証拠は死体で十分だろ


 ゴートがPT名の由来であるだろう不落と名の付いた大盾を構え、ニアムが杖をそしてポーネソンが剣を取り出した。


(これは……各個撃破しかないな)


 狙うのは一番体力の低そうなのは女性であるニアムだろうか。第一、回復役から落とすのはセオリーだ。俺がボタンを押して斧を振るえば戦闘曲が鳴り響いた。

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