58.【俺】黒幕を告げる
スパーダの町、スパ迷宮。そしてそこに住まう者達と自分のレベルアップに俺は勤しんだ。レベルは18となり≪投擲LV1≫を覚えた。これで一応サブサブロに遠距離攻撃という択ができた。まだポイントは余ってる。新しい技を得るかはマジで迷ったが元々持ってた≪パワースラッシュ≫と≪スピニーエッジ≫のレベルを2に上げた。ステータス値が低いからこそ技の火力を上げようという魂胆だ。
そして勿論、冒険者ランクを上げることも忘れていない。
俺は没頭し、依頼をこなしまくってDランク中級となってもうCランクの背中が見えてきた。これで切り株ダンジョン以外のダンジョンにも行けるのだという。
ただCランクに上がるには中々な作業ゲーがあるのと試験があるそうでまだもうちょっとだけ先となりそうだ。
魔物も何匹が捕まえた。ただユニークは冒険者の見回りが多く無理だった。何かしらの制限が掛かってるんだろうと俺は判断した。
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ケイズスライム
モックモック蝶
ネイドキッド
ポロポロポロロ
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まあ見事に小物ばかりでありこいつらを成長させずに迷宮稼働はさせられない。ただ、迷宮に配置できるようになったので殺風景だったスパ迷宮がちょっとだけ賑やかになった。そして今日は白銀連盟との相談日。町で仕入れた情報を彼女達に伝える項目がでたのだ。
魔王サブサ風呂:町デ情報ヲ 仕入レテキタ
イミール :聞こう
(……)
真面目な話とわかりリーダーさんが真顔となったが、白銀連盟の面々がアホほどリラックスしていてゲームとはいえジト目になってしまう。いや、演出なんだろうけどソファーで寝転んで漫画は流石に寛ぎ過ぎではなかろうか。
というかファンタジー感薄れるのでやめて欲しい。ここスパーダの町の施設開放には何故か現代的なものが多く含まれていた。
(まあ、気になって漫画コーナーとか解放した俺も悪いけどさ)
レナ :ねえその前に聞きたいことがあるの
魔王サブサ風呂:ナンダ
レナ :この漫画とかいう物語続きがないんだけど『結婚したことを後悔してももう遅い』ってやつ
(なんだそれ)
魔王サブサ風呂:解放サレルマデ 続キハナイ
レナ :今できるかしら?
魔王サブサ風呂:デッデキナクモナイ
圧が凄い。どんだけ読みたいのかあのサブサブロがタジタジである。
パイネ :レナ無理強いは駄目
レナ :アンタは自分好みの技術書がいっぱいあるからでしょ
パイネ :ぬ
イミール :何か仲間がすまない
魔王サブサ風呂:構ワナイ ガ 話ヲシテ イイカ?
ライザ :わっ私たちも聞いていいですか?
イミール :当然だろう。いっいいよな?
魔王サブサ風呂:座ッテクレ
ライザとエリーも頷き合って座る。俺も何となくゲームの空気に合わせて真顔になった。
魔王サブサ風呂:デハ説明スル
説明を終えて皆無言となる。案の定というか白銀連盟の面々も狙われていた。何よりも──
イミール :指名手配っ!しかも私達が英雄を誘拐しただとっ!
──となっていたのが彼女達にとって一番厳しい情報か。スケープゴートってやつだな。罪だけ被せてゴートとかには後は好きにしていいとか言ってたんだろ。
レナ :出鱈目よ
その通りだが、それを否定するのは容易じゃないだろう。俺が思った以上にペルシアギルドの上層部というかギルドマスターは腐っていた。地球でいう所の中世。法律も定まっておらず魔女狩りに近い。審問官と呼ばれる者がいてスキルで真偽を測るらしいがそれがどこまで頼りになるかは不明だった。
まあわざわざこんな手の込んだことをするってことはそいつらが結構な力を持ってるってことの示唆なんだろうけど。
魔王サブサ風呂:英雄ガ狙ワレタ 理由ハ ワカラナカッタ
ライザ :あっいいんです。私たちもずっと調べててわからなかったことだから。わざわざ調べて頂いて有り難うございます
ペコっとライザとエリーが頭を下げる。
魔王サブサ風呂:ダガ サシムケテイル モノノ正体ハ看破シタ
エリー :本当ですかっ!
魔王サブサ風呂:賢者アーロン
イミール :なっ!?
「やっぱ有名なんだな」
何故か町の人は知らなかったけど。
イミール :誰だ?
レナ :いえ
パイネ :分からない
知らんのかいっとガクッとなったが、エリーとライザの顔グラは蒼白となった。
エリー :けっ賢者様は私達の国で英雄と謳われるほどの人です
ライザ :凄くいい人で!名誉にも興味ないくらい謙虚な人であのアーロン様が私達を狙うだなんてありえないよ
その後も彼女達は信じられないと嘘っ……そんな……と漏らしている。それでも落ち着き彼女達自身の口からその人物のことを説明してくれた。賢者アーロンは英雄と呼ばれ、彼女達が住むメルカトル魔導大国なる場所で慕われている善人であると。事実、何度も人を救っている姿を彼女達も見たのだという。
やれ食料問題を解決したとか、やれ魔物の大軍を吹き飛ばしたとか、やれ難病の特効薬を生み出したとか。尾ひれが付いているかもしれないがまるで小説の主人公であるかのようにその活躍は多岐にわたっていた。俺が一切その話に辿りつけなかったりドラムニュート王国出身であるイミール達が知らなかったのは彼が自らの存在を国外に知られることを強く拒みそれに王が応え、緘口令を敷いたからなのだそうだ。
そして一番重要なのは彼のジョブが英雄であるということ。
そう、英雄が英雄を狙っている。実にゲーム的で俺好みになってきたじゃないかと自然と口角があがった。




