51.【俺】魔獣店モードックを訪れる
迷宮街スパーダを作成したことで俺にいくつかの機能が解放された。全部の紹介はまた今度にして今使うものは魔物召喚である。そう聞くと新種を召喚できると思うだろうが普通に捕まえた魔物を転移させるだけであった。ちょっとガッカリ、ただ便利は便利だ。
Eランクの採取依頼を受け、ついでに仲魔増やしとユニークを狙う俺は早速、魔怪鳥バワンを呼び出し魔獣登録所に向かう。大福は既に登録を済ませていて訪れるのはこれで二回目だ。ああ、ギルドでもやって貰ったけど二ついるんだそうだ。ゲームなのに無駄にしっかりしてる。
魔獣店は店名と同じモードックという細い枯れ木のようなおっさんが切り盛りしている店で、魔獣を売り出したりもしている。軽く読み飛ばしてしまったが、年々テイマーの数は減っていて俺が来て驚いた的な話だったと思う。
サブサ風呂 :マジュウ トウロク ヲ タノミタイ
モードック :全く、貴方は前回と同じく急なお人ですね。早々魔獣は懐かないはずなんですが……そうだった。貴方は魔道具で躾けているんでしたね。へえー魔怪鳥だね。可哀そうにリーデシア兵に捕まってしまって。君、うちにこないかい?高く売ってあげるよ
バワン :フルッフゥ
危機を察知してかバワンがさっとモードックの手を躱し飛び乗った。
モードック :凄いね。警戒心たっぷりの魔怪鳥がもう懐いている。ねえサブサブロ前回も言ったけれど、その魔道具とやらを僕に譲る気はないかい?見せてくれるだけでもいいんだけれど
サブサ風呂 :ナラン キミツダ
モードック :なら仕方ない。リーデシアに睨まれれば商売なんてできないからね。じゃあこれを脚に付けてあげて
≪従魔の証を手に入れました≫
サブサ風呂 :リョウカイシタ
特に騒ぐことなくバワンに装着できた。彼女を選んだのは索敵に期待してだ。見張られてるかもしれないことと高位のモンスターを見逃さないようにするため。
モードック :君達が少し羨ましいよ
サブサ風呂 :キサマモ テイマー ダッタトキイタ
モードックは隻腕。かつてテイマーだったらしいが今は魔物を連れていない。まあ引退しなければならないできごとが起こったのだろう。
モードック :僕も色々ありまして。ハハッ
サブサ風呂 :ソウカ 詮索ハセン 邪魔ヲシタ
モードック :ええ、助かります。あっ魔獣を売るようなことがあれば是非うちにお願いしますよ
もう俺が魔物に感情移入してるせいかも。檻に入れられて可哀そうと思う。うちのゴブウェイとかベッドですやぴぴしてるというのに。それに改めて思うがこのペルシアの町はどこかうっすらと暗く淀んでいる。サブサブロの体の元となっているリーデシア帝国が影響しているのは間違いないが。
「属国設定がマジで意味不明なんだよな」
俺がアホなのもあってマジで理解できない。辺境のせいか辺りをリーデシア兵が闊歩してるわけでもなく、その設定いる?っていう。
「ノストラも言ってた王都ってとこにいきゃ分かんのかね」
バワン :フル
俺の言葉に反応したわけはないがふっと笑ってしまった。
「そうだな。重要ならいずれ分かるだろうし俺達は俺達だ。マイペースにスパーダのために動こうかバワン」
気に入ったのか気に入らなかったのかわからないがバワンは従魔の足輪をやたら嘴でいじっていた。
◇◇◇
Eランクの依頼を受けて西の森、切り株ダンジョン近くまでやってきた。今回はそこに近づかず依頼の薬草が生えた群生地帯に赴く。
「うっとおしいな」
愚痴ってしまったのは俺を付けている者がいるから。魔怪鳥バワンの能力によってある程度は特定していて一人だと分かっている。
襲うなら多数集めるだろうから本当に見張りなのだろう。バワンに確認させたが切り株のダンジョンは閉鎖され物々しい雰囲気だったという。
ああ、バワンが話せるようになったわけじゃない彼女のスキル《索敵》によって地図が表示されて大体がわかるのだ。
「さっさと疑いが晴れてくれればいいんだが」
俺が思った以上に相手が本気であるということがわかった。そこまでして《英雄》を葬りたい理由は一体何なのか。
「なんだろうな。英雄を利用した方が効率よさそうだけど……。邪魔になるってことだよな?英雄のジョブがどう扱われてるか調べられればわかりそうなんだけど」
当人達に聞くのがてっとり早いと思うのだが選択肢が出ないため教えて貰うことができなくてやきもきする。まあこればかりは仕方がない。
ささっと素材を回収して依頼をこなし、切り株ダンジョンから離れた場所の依頼を受けた時、やっと監視が外れてくれた。
ってことでテイムしまくりである。この辺りに生息しているグレーターウルフと呼ばれるオオカミの魔物が5体俺の前でお座りしている。
問題は名前である。いよいよ難しくなってきた。
「んーワンだと被るんだよな」
バワンにしたことを後悔する俺。配信もしようと思っているので分かりやすいのにしたい。
「フェンリルって北欧だっけ?」
何となく知ってるモンスターを選び、北欧─スウェーデンの数え方を選んだ。
「じゃあ、エット、トヴォ、トレ、フィーラ、フィムで」
向こうの言葉で1~5だ。グレーターウルフは一匹の雌に4匹の雄が付き従って群れを為す逆ハーモンスターらしいので一番女性らしさを感じるフィーラを雌に付ける。
バワン :フルッフゥフルッフゥ
バワンが鳴き、グレーターウルフたちがキャンキャン鳴く、先輩風を吹かせているのか多分会話している。
「心だっけ。もっと取らねえとマジで意思疎通できねえよな。バワン索敵っと」
索敵を選択すればバワンが飛び立ち周囲を見回ってくれる。地図に大きい赤点が表示されキタっと俺はテンションが上がった。
「ユニークモンスターだ」
漸く、お目当ての相手が見つかったと俺は笑みを浮かべたのだった。




