48.【俺】ゲーム屋で再会する
魔王サブサ風呂 :カマワヌ 好キナダケ イルガヨイ
サブサブロの言葉に白銀連盟の面々の顔がパっと明るくなる。というかもうずっと住んでください。匠の俺が一生引き籠りたくなるほどの最高の街作ってやっからよ。ありとあらゆる授業を犠牲にしてな。
魔王サブサ風呂:ダガ条件ガアル
条件という言葉にレナがほら来たと睨み、イミールが観念した顔で手首を付けてその両手を前に差し出した。
イミール :分かっている。私を奴隷に
魔王サブサ風呂:ソレハ不要ダ
もうこの子奴隷になりたがってません?ホント止めてね、俺配信すんだから。高瀬さんが見に来るんだから。
魔王サブサ風呂:願イヲ聞イタノハ コチラモ要求ガアルタメ 一ツメ忘レタ訳デハアルマイナ
レナ :ただの買い出しでしょ?そんなの幾らでもやるわよ
イミール :改めて聞くが本当にそんなことでいいのか?
魔王サブサ風呂:我ハ 忙シイノダ 手ガホシイ
イミール :そんなことであれば馬車馬のようにこき使ってくれ。
貴方にはそれだけの恩がある
これには皆同意と頷く。
≪白銀達の買い出し・白銀達の聞きだしの機能が追加されました≫
「おお」
≪※注意 ペルシアでは使用不可。貴方が別の街を訪れた際に利用しましょう。また転移を使う場合、予め拠点を構えていた方がバレにくくなります。貴方の正体が露見すれば討伐隊が組まれ、蹂躙されることになるでしょう≫
「蹂躙て」
なんかH。
イミール :やはり貴方も追われているのか?いや、詮索する気はないんだがどんな顔かなと気になってはいてだな……その
魔王サブサ風呂:ナラン ヘルムノ下ヲ 見タ者ニハ 死ンデ貰ワネバ ナラヌ
息を呑む治療師のエルフさん。ぴゅーぴゅーと口笛拭いてるけど誤魔化すの下手だし俺、君が見ちゃったのを見ちゃったし。
イミール :そっそうか、いいんだ。少し気になっただけだからな
パイネ :話戻す。ここにいていいけどもう一つ貴方の願いを聞く?
サブサ風呂 :ソウダ 我ノ モウヒトツ ノ 望ミハ オ前達ノ
そういってサブサブロは彼女達を指さしたのだ。
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【PT白銀連盟】RANK C
イミール(24歳女) LV23 種族人族 双剣士
HP1080 MP290 ATK240 DEF70
デュアルナイフ+5 アマゾネスの革鎧
≪ダブルスラッシュLV3≫≪デュアルブレイクLV2≫≪ファントムステップLV3≫
≪ノックバック耐性LV1≫≪毒耐性LV2≫
レナ (21歳女) LV22 種族エルフ 治療師
HP870 MP590 ATK30 DEF80
白上の杖 やすらぎのローブ
≪サークルヒールLV4≫≪タッチヒールLV3≫≪キュアLV2≫≪森の加護LV1≫
≪ジェルコートLV2≫≪麻痺耐性LV3≫≪毒耐性LV3≫≪睡眠耐性LV3≫
パイネ (19歳女) LV20 種族ドワーフ 重騎士
HP3270 MP60 ATK80 DEF350
吸魔の大盾 銀鋼の甲冑
《ギガシールドLV3》《タウントアップLV2》《シールドバッシュLV3》《騎士の守りLV2》《シールドトーテムLV2》《ガードフィールドLV2》
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正直スキル群はよう分からんが──
「いや、つっよ」
もう学校なのでゲームの電源は既に落としている。現在俺がじっと見しているのはスマホでスクショした彼女達の能力値である。そう、これがサブサブロが要求したこと。Cクラスの冒険者と戦いそうだし確かに見て良かったかも。話の流れ的に強者っぽい雰囲気出してたけどあの中でサブサブロが一番雑魚という事実。
白銀連盟よ気づいているか?お前達が頼る相手はお前達の更に下をゆく。震えて眠るぞ、この俺が。流石に学生であるエリーやライザより弱いのはショックだったが──
「違うな、英雄がチートなんだわ」
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ライザ (17歳女) LV17 種族人族 英雄
HP5270 MP460 ATK80 DEF350
《直感LV4》《万能LV3》《魔力制御LV3》《雷魔法の才》
《ライトニングベルLV2》《ボルトボールLV3》
エリー (16歳女) LV17 種族エルフ 英雄
HP5006 MP560 ATK80 DEF350
《直感LV2》《万能LV3》《魔力制御LV4》《火炎ノ才》
《フレアボールLV3》《フレアウォールLV2》
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なんなんHP5000超えて。そらヒドラの毒も使いますて。あんな可愛い顔してお前らが魔王だよ。こちとらつい最近までやったねサブちゃん3桁のったぞで喜んでたというのに。普通魔王側が体力多いもんじゃないの?私のHPは53万ですよでドヤるのが魔王なんじゃないの?
「ってかこいつら追い詰めたっつうなら不落もヤバくね?」
あれ?これ遊び過ぎてメインストの適正レベル大幅に下回ってるのではと思ったところでドンドンドンっとノックされた。
「遅刻するで一郎っ!アンタいつまで寝てんの」
「あー、起きてるって」
俺はきっと戦うことになるだろうC級冒険者との闘いをイメトレし、無意味にシャドーボクシングしながら部屋を出たのだった。
学校が終わり、クラスのマドンナ高瀬さんとも話せた帰り道。俺は何となくゲーム屋に立ち寄った。デュアルミッシュで大満足しているのでホント何となくだった。
超大当たりを引いたのでここに来るのも久しぶりだ。ガヤガヤと賑やかな音楽が流れ、最新VRゲームから古いコンシューマーのゲームまで取り揃えている。
(やっぱないか)
当たり前だけどデュアルミッシュは無かった。アレ一本だけだったのだろうか。まあ、使用ハードがPG5の時点で相当古い作品。そう何本もないだろうが……。
普通によくできた作品なだけにネットに名前が転がっていないというのが納得できなかったのだ。
「ん!?」
帰ろうかと出口を見た俺はピシリと固まってサッと隠れてしまった。あのバスで出会った変人お嬢様。いや、そんなこと絶対しなくていいレベルで一切関係性のない人なのだけれどヤバい奴という認識が自然と俺をそうさせた。
綺麗な子だとは思っていたが目を開き動く彼女はアイドル級だった。実際、歩くだけで周囲の客が見惚れ振り返るほど。
黒髪にパッチリとした目、ハーフだろうか鼻筋も通っていて日本人離れした美しさ。そしてだからこそこの場に相応しくない。
(あんなお嬢様でもこんな場所に来るんだな)
「ってちょっ!?」
てっきり最新VRでも見ると思ったのにこっちの安売りコーナーに真っ直ぐ向かってきた。向こうは俺の顔も知らないだろうにビクビクして俺はさささっとその場を離れる。その際何故か見られた気がしたがきっと気のせいだろう。
こんな凡人に興味を示すなどありえないから。ただ一体何の用だったんだろうか。あまりに場違いな彼女の姿を俺ははっきりと記憶したのだった。




