46.【俺】前途多難な迷宮運営
トレント2体に魔鳥2匹にゴブリン一匹+兎という陣営(糞弱そう)がここに揃った。
≪人間と区画を分け会わないように気を付けて下さい。反感度が高くなるとテロや離脱が起きます。住人のメンタルも含め運営を心がけましょう≫
「結構制限あるんだな」
難しそうだなと思いつつ徹夜で作った魔物区画へと案内する。分かれているがいつか人と魔を結べるようになれば多分一緒に暮らせるようになるのだろう。
大福や魔界鳥はともかく、ゴブリンは女性に厳しそうだ。休日の親父のようにゴブウェイに覇気がないけど……。
「ほら、ここがお前らの家な」
肩で争うバワンと大福以外全員キョトンとしている。よく分からないが二匹の仲がすこぶる悪い。種族が違うとはいえ、最初に仲間にした同士なので仲良くしてもらいたいものである。後、せめて離れてやって欲しい。カメラを一人称にするとこいつらが視界に入って気が散るため俯瞰的な三人称視点に切り替える。
ゴブリンは家、トレントは庭、鳥は鳥かご、兎は小屋。格差社会だが、魔物だから大丈夫かと思った。
ゴブウェイは恐る恐る入っていき、トレントは明らかに喜んでいた。鳥は家鴨声の雄が飛び跳ねていたが鳩声の雌、バワンがチラっとゴブリンの家を見てじぃいいいっと俺を見てきた。どうにもご不満らしい。
「結構意思表示してくんだなこのゲーム。何でか考えてること分かるわ……」
「ぴゅい」
もの悲しい声を出す大福。こいつもお気に召さないと。犬小屋作ったのに贅沢な兎である。魔物とはいえ雌にはやっぱこだわりあるのかも知れない。
トレントを見習ってほしい。あいつらは野晒しでも喜んでいるというのに。自分の家を紹介したら大福とバワンが家を持ってきて俺の部屋に配置した。
「えぇ……そういうこと?まあいいけどさ」
ビビるくらい仲間がいう事を聞かない。信頼値が足りないのだろうか。魔物や人間には色んなパラメーターがあったが多いのでサラっと流し見た。とりあえず反逆値とやらにだけ気を付けていればいいと思っている。
≪住人が10名に達しました。簡易命令を行うことができるようになりました≫
≪幹部の魔物が6人揃いました。6傑集会を開くことができます≫
「へー6傑集会とかカッケエ」
早速6傑集会をやってみる。狭い一室で天井に引っかかるトレントに、暴れ回る鳥と兎、ゴブリンは眠り。俺はそっ閉じした。
多分、モンスターの心をもっと手に入れる必要があるのだろう。何言ってるのかわからないのが問題なのだ。そう思おう。
「まあ、仮だしな……まず面子かな」
魔物側はこれで置いておいて、人間側の方へ俺は行く。やること一杯である。計画立てないとグダグダになりそうだ。
「やっぱ配信は稼働の目処がたってからだなこりゃ」
絶対にグダる未来が見える。準備しよう。とりあえず人間側をどうにかする。そして依頼を受けつつ仲間を増やそうと方針を立てた。
◇◇◇
ってことで人間側。完全に軟禁状態だが白銀連盟の面々は思いのほかくつろいでいる。今、肩に乗せてるのはバワン。サブサブロの肩がお気に入りの場所らしく大福と順番で乗せることにした。
サブサブロが入るとエリーとかいう毒で倒れていたエルフが駆けてきた。
エリー :助けて頂いたと聞きました。あの有り難うございました
魔王サブサ風呂:カマワン 報酬ヲ 貰ウカラナ
レナ :随分、遅かったわね。どこ行ってたのよ
パイネ :肩……それ魔怪鳥
バワン :フルッフゥ
イミール :貴方はテイマーなのか?兎のような者も連れていたと思うが
魔王サブサ風呂:……
イミール :あっ詮索するつもりはないんだ。勿論、ここの事も誰にも言わないと誓う
レナ :それで?アンタ私たちをどうするつもり?
イミール :れっレナ、私達は助けて
レナ :だとしてもどこだか分からない場所に軟禁されているようなもの。その気なら襲えるじゃない
魔王サブサ風呂:ドウモシナイ 帰シテ ヤッテモイイ ガ ドウシテ アノヨウニ ナッタノカハ 知リタイ トコロダ
ライザ :私たちのせいなんです。私たちが狙われたせいで
エリーとライザが俯く。それをイミールが慰めるがパイネが厳しい視線を向けた。
パイネ :聞く、始め貴族に見初められたと思った。でもエリー毒受けた。彼がいなかったら死んでたほどの毒。合点がいった。迷宮の中で殺そうとしていた。君ら本当にただの学生?
「あれ?これストーリーか?」
話の展開がどうにもそれっぽい。てっきりただのクエストだと思っていたが、いやそもそもデュアミはオープンワールドでそういうのないと俺は思い込んでたけど、何とメインストーリーらしきものまで用意されてるとは。確かに言われてみればサブサブロがいなかったらエリーという少女は死んでいただろう。攫おうとする者に致死性のある毒を使う者はいない。まあ気づいていたけどなと俺はキリっとし、ライザとエリーは訳アリだと言わんばかりの真剣な顔グラで口を開いたのだった。