44.【俺】幹部候補(弱そう)を招集する
朝。チュンチュンと小鳥が鳴くが俺の隣にいるのは抱き枕さんのみである。ハーレム主人公じゃなけりゃこんなものだ。
「んー」
いつとも違う時間に眠ったためお年寄りタイムで起床してしまった。
「6時かよ」
家が学校に近いので8時出発。2時間も暇を持て余したものだから朝からゲームだと電源をオンにする。
歯を磨き戻ってくるとサブローがベッドで寝ていた。スパーダで落ちるとこうなるらしい。ちゃんと兜を脱いでて偉い。
≪侵入者有り 鍵扉を設置することをお勧めします≫
「侵入者?」
≪映像を見ますか?≫
見るを選択するとレナとかいう僧侶服をきたエルフがこそこそサブサブロの部屋に入って勝手に兜をとってヒャっと驚き、もじもじしてどっかにいった。
「何だこれ、何してんのコイツ。どういうイベだよ」
カメラ切り替えのボタンがあり、押してみると今の彼女達が映し出された。ビビるくらい適応しくつろいでいる。頼まれたとはいえ思いっきり幽閉したようなものなのだが、この世界の住人は逞しいようだ。まあ、NPCだけども。ってか普通に素顔がバレたけど大丈夫なんだろうか。ゲーム側が出してきたイベントなので平気だと信じるぞ。
「しかし盗撮し放題だな。まあ、着替えとか覗けるわけないだろうけど」
配信するし、高瀬さんが見るとか言ってるし、妹の魔の手もあるのでこれ18禁ゲームじゃないよねとちょっとビクビクしてる俺である。
彼女達に挨拶するか迷ったがまたクエストが始まったら敵わないと先に幹部候補の魔物達を引き入れることにする。
「久しぶりだな」
迷宮という拠点を作ったのでファームに飛べるのだ。俺が初めて仲間にしたツリーとか鳥のバワンとかと会うのも一週間近くぶりになる。
「第一ファームに転移っと」
そして俺は転移し、瞳を閉じ、蠢く木々に現実逃避したのだった。
「お前らまた……増えてね?」
トレントが名前を付けられないレベルで膨れ上がっていた。
◇◇◇
4万3215体。数えたわけではない、ファームに記載されているのだ。もうトレントの森といっていいのではなかろうか。二匹いる魔怪鳥のバワンとバッツの肩身が狭そうである。どうりでマナの増えが多いと思ってた。
とはいえ、この状態で迷宮をオープンしても焼き払われるのがオチだろう。俺がきたことでモーセのように森が割れた。気のせいかドヤってる白い木と普通のトレントとそれを見守るように立った古木がいる。
ツリー、キトゥエ、そしてキテンの三体。
「お前らさ……増えすぎ……もやしかよ」
せめて多少の命令が下せればよかったのにと心から思う。伝わらないし。呼べる魔物は6体。あっ大福が決定してるから5体か。何かガサガサと揺れているが、喜びを表しているようだ。
≪連れてゆく仲間を入力してください≫
「じゃあツリーとキテンかな」
キトゥエが愕然としているが、許して欲しい。キテンが何か意思表示してるっぽいが分からないので無視、俺がテクテクと歩き木々に止まってムシャムシャ木の実を貪る二匹の鳥を呼び寄せる。
地面に散らかった木の実。アホみたいに喰い方が汚い。教育システムとかないのだろうか。魔物にマナー教えるってのもいよいよ何のゲームだか分からなくなってくるけども。
「フルッフウウ フル フルッフウ」
「くあああークワックワ」
「あーもう分かったってホント騒がしいなお前ら」
多分、怒っているが口元に食べかすが付いてるので全く怖くない。魔界鳥エルーグルのバワンとバッツ。雌の方であるバワンが俺の肩に飛び乗り、横でふるっふうーと叫ぶ。催促っぽいのでエモートで嘴を撫でてやると明らかに気持ちがいいといった声質になった。
「フルッああ~♡ふーフルルっふうっ♡」
おい、止めろ朝から。烏でも変な声ださないで欲しい。
「クワッ!クワッ」
エルーグルは仲間意識が高いのかバワンにちょっかい掛けるとバッツがぶち切れる。だったら鳴き方統一して欲しいところだが、分かりやすいと言えば分かりやすい。
「ほら、ついてこい。お前ら入れて5匹であと一匹だ」
こっそりキトゥエが木から顔を出して窺ってるが今回はすまない。俺にはもう一人どうしても入れなければならない種族がいるのだ。それは唯一死者を出してしまった種族。全く関与しなかったとはいえ罪悪感がある。ゴブリンフライデーの死を無駄にしてはいけないのだ。
俺はゴブリン達のいる場所へ転移し、仲間に加えた。
「ゴブリンウェイズデイ、略してゴブウェイ。お前がとりだ」
「ゴブ?」
アホそう。何も分かってない顔をしているが腕を引っ張ってつれてゆく。そして今、ここに出揃ったのだ。魔王サブサブロが作りしスパ迷宮を守護する6傑が──
木 ツリー キテン
鳥 バワン バッツ
小鬼 ゴブウェイ
兎 大福
見よ。この並び立つ雄姿。
「駄目だ。超弱そう」
スパ迷宮始動。が、前途多難だった。