39.【俺】いいゲームって徹夜するよね?
近づいて納得する。≪クエスト私たちを匿って≫と出ている。要はここに彼女達を連れてきて匿えって話なのだろう。
「いやいや大丈夫なんかそれ?」
この場所人側に知れたら問題なんじゃと考えたが、もしかしたら町と迷宮がセットなのはもう知られている情報なのかもしれない。少なくとも切り株ダンジョンは人側に落ちているということなのだから。上層部とかギルドのお偉いさんは迷宮に町がくっついているという情報を得ていてもおかしくない。
「ペルシアの町近くにダンジョンができたってのがバレると不味いくらいか」
まあ、ゲーム側が示してきたクエストなので落とし穴ってことはないだろう。どうにもリアルなのでガチで考えてしまう俺である。
≪彼女達を匿うために町を作って下さい。また貴方にとって優秀な魔物を待機させる場所でもあります。ブラック迷宮にならないようにホワイトな運営を心がけましょう≫
「……」
何か思いっきりファンタジーなのにこのゲームちょくちょく現代要素いれてくるのなんなんだ。
これまでファームで溜めたポイントを使ってせっせと町を作る。このためにトレント達を俺は引き入れた。まさに計画通りである。
「おー」
噴水とか、畑とか。低ポイントながら色々作れ配置を含めて俺はドはまりし、徹夜した。
≪長時間のプレイは体に有害であるため休憩を≫
「後五分だけな」
カチカチカチと連打する俺。鳥がチュンチュンと鳴き始めている。明るくなった外を見てふっと笑みを出る。今日学校死んだなと。
けれど後悔はしていない。俺の前には現状できる完璧な街並みが広がっていた。小規模だがペルシアより発展しているんじゃないだろうか。住人ゼロだけど。
「ふっふっふっふ、街づくり超楽しい……」
マナが欲しい。そのためにも魔物をもっともっと捕まえてこなくてはならない。いや、トレントをもっと増やし……。止めておこう。あれ以上はヤバい。それにしても迷宮として運営させるにはもう少し掛かりそうだ。色々と足りないものが多い。
「配信は迷宮稼働したタイミングかな?ふわぁ」
俺は楽しめるが作業が多いので見てる方は退屈するかもしれない。一応、なけなしの貯金を叩いてアマホンで購入した。妹は溜めるけど、俺は散財タイプである。
≪貴方にとって優秀な魔物を連れてきてください。6体まで≫
タスクが変わって魔物を連れてくる段階になった。ピョンっと飛び降りる。
「ぴゅい」
≪大福が幹部になりました≫
「一発目お前かよ」
しかも勝手に。最初の幹部白玉団子とか超弱そう。ただ音楽と共に踊られるとどうでもよくなってくる。ぴゅいっぴゅいっぴゅぴゅいのぴゅいと喜んでいる。
「あと5匹かー」
学校の授業を寝つつ考えようと再び欠伸。俺は白銀連盟の時間を見つつ電源を落とした。まだ時間はあるものの期限を過ぎればクエスト失敗と書いてあった。
◇◇◇
「ふわあ」
「兄寝不足?」
「んーちょっとな」
「どーせゲームばっかりやってたんやろ?アンタは」
朝ごはんの味噌汁を置きながら母が会話に参加してきた。
「ちげえよ。町作ってたんだよ」
「町?どこのよ」
「それは……ゲームの……だけど、結構リアルで考えてる時間の方が長く」
「はいはい」
ピっとネットニュースを付ける母。興味ないなら聞かないで欲しい。
「ねえ兄それってエロ――」
パンっと妹、奈々の口を塞ぐ。危なかった。我が妹やべえ。空気読めないにもほどがある。殺す気かとギっと見ればむーむーと妹が唸る。チラっと見るが母はニュースに見入っていた。ホっとして奈々をギロンと一睨み、すっと手を外した。
「兄、女の子の顔塞ぐとか駄目なんだから、あと手洗った?」
「お前が変なこと言うからだろ?あと、手は洗ったわ!」
「どうだかー、ねーねーイチ兄あのゲームの配信いつやるの」
「ん?まだもうちょい先かな。作業多くなりそうだからその準備終わったらで、今迷宮と町作ってんだよ」
「迷宮と町……ねー機材貸してあげるからやる時言ってね?」
「なんで?」
「私が見たいから、あとまたやってるところ隣で見せてよ」
「えー」
「駄目なんだ?妹に見られて困るもの……あっやっぱりH」
パンと塞ぎ、ジト目を送る。
「交換条件だ。見せてやるからHなやつだあ禁止。いいな?」
やったああっと喜ぶ奈々。ホントわかってくれたんだろうかと不安になりつつも俺はふと視線を感じ母がキョトンとした顔を向けていることに気づいた。
「んだよ母さん」
「アンタら仲良くなったん?」
「「それはない」」
最上家の日常。多分、近い未来俺がデュアミをやってる横に妹が加わるだろう。まあ、ずっとはしんどいのでほんの偶にね偶にちょっとだけ。