37.【俺】現実とゲームのダブルで無茶苦茶
「ななななっ」
妹、奈々〈家なので地味子モード〉のジト目に激しく動揺した。
「その狼狽えようはHな奴だ」
「なっ違うって。健全なやつだ超健全」
「ふーん」
にやりとした笑みが怖い。いかん何も悪いことしてないのに弱みになってしまう。
「まっお兄もお年頃だから」
「お前幾つだよっってかマジで違うからな?」
「はいはい」
「見ろ、コンシューマーだぞ」
「今時!?って思うけどあるにはあるよね?」
ぐぬぬぬ。悔しいが押し問答になると諦める。
「そもそもノックしろよ!何の用だよ」
「お兄がうっさいからでしょ」
それはそう。確かに騒いでたかもしれない。ぐうの音もでない。兄、最上一郎。ここに完全敗北である。
「ねえ、イチ兄。これって何年前のゲーム?結構リアルだけど……。しかもこれ反応してない?」
見るとどうした?何で動かなくなったと白銀連盟の人たちが騒いでいる。
「だろ?こっちの行動に反応してくれるシステムがあんだわ。多分、結構古いはずだけどいつかは分かんねえな」
「へえ……」
じっと見据えて考え込んでから奈々は口を開いた。
「ねえ、イチ兄これ配信しないの?」
「え?」
「基本人気なのはVRMMOの配信だけど珍しいゲームって今ちょっとだけ需要あるんだよ。もしかしたら凄い人気が出るかもって思ってさ。何か面白そうだし」
「あー実は考えててさ。ただやり直す気は無いから区切りいい所までやって機材揃えてからかなって」
「全部は無理だけど幾つか貸すよ」
「え?マジ?」
「マジ」
「嬉しいけど何でまた?」
「何かね私ビビっときたの」
「ビビっと?」
「お兄が配信者として成功して奈々に奢ってくれる姿が見えた」
「はぁ……何か欲しいのあんのお前」
「うん、ブランドもののバッグ」
「……」
こいつ金の無い兄貴に一体幾ら貢がせようとしているのか。
「っと私行かなきゃだ」
「ノックしろよ?マジで」
「あっ一人でHなことする時は静かにね?」
「してねえよっ」
ひょいっと消えた妹の姿にホッと溜息を吐く。マジであれをやってる可能性はゼロじゃないので兄妹と言えどノックはして欲しい。
画面を見ると治療を開始しますか?という設問で止まっていたのでポチっと押すとサブローが動き出した。
レナ :何どうしたの?やっぱりできないっていうの?
魔王サブサ風呂:スコシ セキヲタッテイタ ナンデモナイ
全員の頭に?が浮かぶが仕方がないだろう。しかし、ここまでNPCが反応してくれると面白い。妹の言うように反響でるかもしれない。
≪職人:薬師を行います≫
ミニゲームを行なってエリーとかいうエルフの子の解毒薬を作る。頑張って集めた素材をしこたま使うが仕方がない。
パイネ :凄いっ
イミール :お前……薬師なのか?
魔王サブサ風呂:違ウ ダガ 我ニ 不可能ハナイ
サブちゃんカッコいい。大成功とサブローが飛び跳ねて喜び白銀連盟がぎょっとなった。ヤバい折角キメたのに無茶苦茶になってきた。ゲームでも感じるこの空気感。
魔王サブサ風呂:デキタゾ ノマセロ
ライザ :ごめんなさい。鑑定アナライズ
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解毒薬 中位 ヒュドラの毒すらも癒すことができる
鑑定アナライズ 鑑定の中級スキル 隠蔽を破る 触れなければ発動しない
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普通にヤバいのがいる。ライザとかいう学生少女が鑑定持ち。触れられると影の薄いローリング魔王とバレる可能性がある。どうやらエリーの友人のようで効果があると分かると慌てて飲ませた。光り輝き、ステータスから麻痺毒が消えてエリーの顔色が良くなり寝息を立てた。
まあこれでいいだろうと俺は離れようとしたが引き止められてしまった。
イミール :待ってくれ!
魔王サブサ風呂:ワレ モ イソガシイノダガ
イミール :先ほどはすまなかった。どうやら貴方は私が知るリーデシア兵とは随分と違うようだ。どうか私達を助けてはくれないだろうか
レナ :イミールっ !?貴方何言ってるのよ !こいつはあのリーデシア兵なのよ
イミール :悔しいが私たちは詰んでる。彼に頼るしかない。どうにか匿っては貰えないか。リーデシアの者は不思議な魔道具を持つと聞く。都合がいいことを言ってるというのは自覚している。報酬はこの私。それでどうか仲間達には手を出さないで欲しい。勿論、これまで私が貯めたお金もすべて渡そう。 それで何とか私たちを
レナ :駄目よ、そんなの
パイネ :うん、駄目 許さない
うーむ、メンドクサイ。ぶっちゃけ迷宮製作に本腰入れたかったのだが、本筋から逸れたクエストが始まってしまうのはゲームあるあるか。
(放置してえけど、このゲーム時限で消えるタイプっぽいんだよな)
◆───-- - - - - - - – --───◆
クエスト どうか私たちを匿って
白銀連盟のリーダー、イミールから助けて欲しいと頼まれた。彼らは取り乱していて詳しく話して貰えない。その内容を知るには待つ必要がある。
・今すぐ受ける ・待つ
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とりあえず受けるだけ受けるかと選べばイミールを奴隷にしますか?という選択肢が出て顔を顰める。
「配信する予定だしなこれ……」
燃える可能性もあるので、できるだけクリーンにいきたいと新たに出た選択肢で見返りなしを俺は選んだ。
魔王サブサ風呂:助ケテ ヤッテモイイ
イミール :本当か
魔王サブサ風呂:報酬モ 不要ダ
「イケメン過ぎやろ」
俺が惚れそう。
イミール :なっ
レナ :そんなの信じられないわ
魔王サブサ風呂:我ニハ ヤルベキ コトガアル シバシ 待ッテモラウ。マタ戻ッタ時 オ前達ガ ココニ イタナラ 脱出ヲ 手伝オウ 信ジラレナイ ナラバ ソレデイイ シンジナイモ オマエタチノ 自由ダ
サブちゃんカッコいい。デンデンデケデン・デン・デデン。よしこれで迷宮作りにいけるっと動かそうとした俺を学生の子ライザが止めた。
ライザ :あの……こんな時なんですけどどうしても気になって騎士様が首に乗せているものって
魔王サブロブロ:ダイフクダ
大福 :きゅい
何か色々台無しになった。