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32.【白銀連盟】出られなくなる

【冒険者イミール】


「糞糞糞っあいつら絶対許さないっ」


「無駄に体力を消費するっ! 口を開かず走れっレナ!追いつかれる」


 私達『白銀連盟』は同じC級であるPT『不落』に襲われた。あいつらの狙いはリーデシア兵じゃなかった。貴族からの依頼だろう。依頼人である学生二人をどうしても手に入れたいらしい。そしてわざわざ紐付けたのはあのリーデシア兵に罪をなすりつける腹づもりで間違いない。


 幸か不幸かあの得体の知れない兵士は10階層のボスエリアにて忽然(こつぜん)と姿を消していた。その戦いもツッコミどころ満載だったが今はそれどころではない。


「初級ダンジョンなのに冒険者がいない。最初から仕組まれてた」


 チームのタンク役ドワーフのパイネがドスドスと足音を鳴らしながら指摘する。確かにその通りだと私、イミールは怒りを鎮めるのに必死だった。


「まっ待ってください。私達はただの学生です。こんな大掛かりなことをする必要性なんて」


「審問官の高位鑑定から逃れる工作でしょうね。Cランクとはいえ女ばかりで(ぎょ)しやすいとでも思ったんでしょう。ここから分かることは貴方たちを求めてる人は結構なお貴族様ってこととペルシアギルドが全面的に協力してるってことかしら」


 淡々とエルフのレナが告げた予想にさっと学生二人ライザとエリーが青ざめる。私は溜息をついた。


「本気で腐ってる」


「イミール、このまま行っても……」


「分かってる。私達は袋の中の(ねずみ)。それでも隠れ場所にいこう。どんな状況でも依頼人を守り抜く。それが私達『白銀』の決まりだろ?」


 小さなプライドが彼女達の背を押した。私、パイネ、レナの三名は種族は違えど同じ村からでた同郷どうきょう。ずっと三人でやってきた。冒険者という職にプライドを持っている。そして女性を傷つけようとする者を許せない。


 頷き合い、護衛である学生を連れた私達白銀は迷宮最深部へと向かった。


 ◇◇◇


「ここよ。さあ、入ってエリー、ライザ」


「こんな所が……」


 切り株ダンジョン最深部20層──ボスの間の奥。ダンジョンコアが回るその壁際に謎の隠し扉があり、私達はそこに身を潜める。


「私たちの斥候役の子が見つけたんだ。それより今更だけどいいのか?付いてきてしまって。私達が君たちを騙してるかもしれないぞ」


「今更ですよイミールさん。彼らから攻撃仕掛けてきましたし、『不落』でしたっけ。私たちの事を見る目が血走っていましたから……ね、エリー」


「騙そうとする人が迷宮の奥には行かないと思います」


 光を灯すが5人では狭く息苦しい。


「ここって何なんですか?何もないですけど」


「分からない。ただ、ダンジョンマスターの宝物庫だったと言われている。私達が見つけた時には(もぬけ)の殻。ギルドもこの場所を知ってるだろうから遅かれ早かれバレる」


謎の空間。まるで先があるかのように途切れているように感じるが……。って考察してる場合じゃないだろ私は。


「それでどうするのよイミール。向こうの方が強いって話だし、こっちはPT欠けてるし……この状態であいつらと闘うなんて無理よ」


「ここで耐える」


「干からびるまで?」


 自嘲的(じちょうてき)な笑みを浮かべたレナに私は首を振った。


「あいつらがこんな手段をとったのは目撃者から審問官にバレる事を恐れたからだ」


 審問官と呼ばれる高位鑑定を持つ彼らを欺くことは難しい。ドラムニュート王国には奴隷制が存在するが人攫いは重罪。貴族であろうとその首にお縄が掛けられる。


「じゃあ、街中に入ればっ!?」


「解決したとはいえないけど、大っぴらに手は出してこないはず」


「イミール、私なら出口を押さえて張るわ」


「だとしても限界があるはず。初心者ダンジョンをそう長く閉鎖は無理だろう。幸い食糧には余裕がある。冒険者に紛れれば……。ライザ、君は探知が使えるな?」


「はい」


 一筋とはいえ希望が出てPTの雰囲気が明るくなる。けれど、私の表情は誤魔化し切れているだろうか。正直、かなり強引かつ杜撰(ずさん)な作戦と言わざるを得ない。あのゴートは悪漢のような見た目だが相当に頭が切れる男。こんな手が通じるとは思えない。何より町に戻ってそこから無事に抜け出せるのだろうか。


 犠牲になるのは私だけでいい。どうにか皆を逃がす手段はないものか。私は悶々と考え続けるのだ。奴がやってくるその時まで。

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