31.【俺】学生なので向かうのは学校
九十九高等学校。それが俺の行く地元の高校。合唱部と陸上がちょっと有名な取り立てて何もない普通の学校。ちなみに俺の成績も並。イッツザ凡である。
ただ一つだけ特異なことがあるとすれば隣が超お嬢様学校白百合学園であるということか。アホほどでかい。俺はバス通いなので、手前からずっと白百合の敷地が続いているのが確認できる。
「イチ、お前何見てんの」
「ん?ああ、ちょっと今嵌ってるゲーム。悪い」
一番後ろの一個前の窓際が俺のお気にの場所。隣にいる猿っぽい茶髪の少年が俺の友人、猿飛弥彦。またエルダインの地図を確認してしまっていた。謝ってスマホをポッケに直す。そうそう、俺のあだ名は一郎からとってイチ。大体、仲いい奴からはこの名前で呼ばれている。
「今時スマホゲーか?」
「いや、コンシューマー」
「ぶはっお前古の民かよ」
まあ、普通そういう反応になる。今は22世紀。VRMMO全盛期時代。誰も彼もがVRMMOだ。動画出そうかと考えてたがやっぱ恥ずかしいかもしれない。
「何とでも言え、糞面白えんだから」
「何てゲーム?」
「デュアルミッシュ」
「へー」
あっ興味ないなこれはと会話を打ち切る。夏真っ盛り。空調の音が激しい。
「それよりさフェスやらね?」
「やらねーVR高えもん」
現在若者たちを夢中にさせてるVRMMOフェス。やりたくないと言えば嘘になるがあれはマジで高い。専用のVR筐体パンドラボックスとやらも洒落にならない値段だし、電気代が恐ろしい。国が行なっている支援プログラムに入らなければできないが俺は漏れてしまった。
「ちぇっイチとやれば絶対面白えのにな。あーそうそう後さすげえゲームが出てくるかもって噂が流れてて」
「またかよ。幾らあっても金足らねー」
んで?何てゲーム?って顔をすれば弥彦はこう答えた。
「ライフイーター」
と。
◇◇◇
「終点 九十九学園前~。終点九十九学園前~」
「あ゛ー地獄に着いた帰りてえー」
学校に着いた瞬間のダルさは異常。ぐっと伸びをすれば弥彦がクイックイっと俺の服を引っ張った。
「ん?」
「隣見てみろってイチ」
「お前じゃん」
「ちっげえよ。馬鹿かよお前っ!俺の!隣の席だよ」
冗談が通じない奴だと体を伸ばして覗けば滅茶苦茶に可愛い女の子がスースーっと寝息を立てていた。黒髪ロングを編みこんだ美少女。とても華奢で、足がスラリと長い。白百合の制服が可憐。思春期真っ盛りな俺達にとっては目に毒だ。
「糞可愛いな」
「だよなっ!だよなっ!」
猿の弥彦が興奮している。友人として犯罪には手を染めないで頂きたいところだ。
「白百合通り過ぎたよな。寝過ごしか。ってかお嬢様もバス乗るんだな」
「そりゃ乗る事もあるだろうって」
よく見かけるのが高級外車から降りるお嬢様たちの姿。お隣りだがマジで無縁の世界である。
「なあ、イチ。これ起こしてあげた方がいいよな。なあっ!」
眼が血走ってて怖えよ。
「どのみちバスの運転手が起こすだろうけど、まあそうしたらいいんじゃね?ただ声掛けだけにしとけよ。肩ツンツンとか終わるぞ」
分かってるってと勢いよく立ち上がった友人に溜息をつく。女の子に近づいた弥彦だったが一瞬固まって起こさずに通り過ぎてしまい俺は首を捻った。
(ん?)
なんだ?っと俺も覗き込み固まる。女の子はホワイトボードを持っていた。
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DON'T TOUCH ME (触るな)
仮眠中の私に触れた者、異性であった場合チカンと認定します
それでも勇気があるなら貴方の好きにするといいわ
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成程、こいつはヤバい奴だと目を逸らす。触らぬ神に祟りなし。危険な事に首を突っ込まない俺はスルーしてバスを降りた。
「起こしたか?イチ」
「流石に無理。運転手さんに任せたよ」
「あー何て名前なんだろ。あんな子と付き合いてえええ」
「止めとけってお嬢様とかハードル高えし。絶対しんどいぞ」
女性に興味がないと言えば嘘になるが、現在、俺の恋人はゲームである。相手は超がつくほどのお嬢様。まあ絶対縁がないし金輪際関わることはないだろうと俺はフラグを立てるのだった。




