3.【俺】魔王ってより現状ただの死体荒らし
戦争ってあまりお金を持ち歩かないものなのだろうか。ゴソゴソと兵士たちの懐を漁るが銅貨数枚しかでてこない。貨幣価値は不明だが、まあ小銭だろう。
「んー」
普通のゲームならアイテムボックスに装備入れまくって店で売るところなのだが
「アイテムボックスないのキッツいな」
そう、アイテムボックスの項目がメニューに存在しないのである。
「やっぱすぐ終わる感じかな?」
それともまたどこか別で取得できるものなのか……。兎に角、お金だけはゲットできるということでこうやってかき集めているわけだ。
「魔王ってより死体荒らしだな」
だが、ゲーマーの血が騒ぎ一つも拾えるアイテムを取り逃したくないのである。
「よし、こんなもんか。何かここまでリアルだと埋めてあげたくなってくるな」
埋葬してあげたいが数が数だ。祈るだけにしておこうとエモートから祈るポーズを選んでやっておく。
「オフゲーだよな?なんでエモートあるんだか」
MMOかよってくらい沢山のエモートが存在しているのだ。開発者の遊びなのか。このゲームの特徴なのか。
「NPCと交流図れるとか?」
それだったら凄いがどうなんだろうか。
「とりあえず、NPCでも人のいるところに行きたいな」
グラは綺麗だが殺風景すぎる。死体だらけだし、いい気分はしないと斧を担いでその場を離れる。しかし、全く指示がない。マジでオープンワールドかも知れない。どの方角に向うか悩んだ末、人間の多い、人がきたであろう方を俺は選んだ。
魔王だけど人と交わりたい。ゲームだし、敵対すればやり直せばいいのだ。まだ戦えていないがちょっと嵌り気味。もう徹夜の気分だった。
◇◇◇
カチカチカチっと室内で連打する音が木霊する。完全に嵌った。まだ碌に技を使えないというのにこのゲーム戦闘が面白いのだ。
「しゃあ!」
ドサッと目の前でトレントが倒れ伏し、ガッツポーズをとってしまった。雑魚だろうに中々歯ごたえがある。久しぶりの良ゲー感がヤバい。
「あ゛ーこれこれこの難度だよ。最近のヌルゲーだったからありがてえ」
10円ゲームまさかの大当たりに頬が緩む。しかし、魔王のはずだが普通に魔物に襲われた。
「魔王でも魔物と闘ってく感じ……ん?」
まだ息があるが、トレントがカタカタカタと震え動かなくなった。この世界のトレントは細身なので、何だか可哀想になってくる。いや、普通に痩せてる?でも経験値のためと斧を振り上げると──遮るようにポンっと音がなった。
「おっ」
メニューが光り開いてみると使役の文字が。
「使役ってマジか。これ仲間増やしてく感じか?」
さてどうするかと俺はトレントを見つめる。ぶっちゃけ弱そうである。いや苦戦したけどもこちとらレベル1なのだ。間違いなく弱い。そして記念すべき最初の仲間が木っていうのはどうなんだろうと思う。
「んー」
っとこいつを経験値に変えるか否かで唸ればトレントがむくりと起き上がりじっと見つめてきた。何故かセクシーポーズなのが腹が立つ。木なのにしなやかだ。
「分かったよ。やってやる。失敗しても恨むなよ」
使役ボタンを押すとサブローが手を掲げて紫の光を放った。ボワーっとトレントを包み込むとピンっとシステムメッセが入る。
≪トレントを使役しました≫
仲間になった曲が何かに似てた気がするがきっと気のせいだろう。
「よし!……なのか?」
≪配下となった魔物に名前を付けて下さい≫
「じゃあ、ツリーでいいや。とっとと進みたいし」
ってことで雑ながらツリーに決定。喜びのダンスを踊った後でおずおずと俺の後ろにトレントが並ぶ。まあ何か可愛いからいっかと思った。
「行くぞツリー」
エモートで来いを選ぶと連なって歩き出す。〇クエかな?そう思いつつも俺は色んな魔物を配下にする自分の姿を想像し、思い馳せるのだった。