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27.【白銀連盟】謎多き鎧の男との邂逅

【冒険者イミール】


「ふざけるなっ! それを私達にやれだと!?」


「そうネ。これは指名依頼。断ることはできないネ」


 ギルドマスター室に白銀連盟のリーダー、私イミールの怒号が響く。あまり姿を見せないと有名であるペルシアのギルドマスターダンプスト。実際C級であるのに私も会うどころか言葉すら交わしたことはなかったが彼には失望した。自由を謳うギルドであっても結局は貴族の犬かと。彼は元A級と聞いて憧れていたがその鍛えられたはずの肉体は見る影も無くぶよぶよと太った糸目の男だった。


「リーデシア兵の蛮行を知っていてこんな依頼をやらせようっていうのかっ。私達は全員が女。それも今、別依頼で学生を預かっている身だぞ」


「冒険者となった以上女であることは理由にならんネ、イミール」


 湧きたつ魔力のオーラを抑え込む。腹がでた元A級など恐れるに足らないが彼は権力者。逆えばここでやっていけなくなるかもしれない。けれど私もPTのリーダーだ。仲間の命を守るために馬鹿な依頼は受けられない。


「今、私達は仲間が離脱している。ギルド指名依頼は5人でなければ受けられないはず」


「護衛している学生の彼女達を一時的な措置としてPT加入させるネ」


「なっ!?ライザとエリーをだと」


「蛮族リーデシア人は学生を好むとのことだネ」


 カっとなった。女を見下すにもほどがあると。こいつらはあれだ。辱められても命があって良かったと(のたま)う奴らだ。私は女であるからよく理解している。それで心を失った者を何人も見てきたというのに。


 もう知らん。ダンっと依頼書を叩きつけ睨み立ち上がろうとする。それにダンプストが待ったをかけた。


「どこへ行くネ?」


「さてね愛想がつきたからな。どこか別の国にでも行くさ。冒険者は自由だろ?」


「それは断っても同じ未来が待っていると言ってもネ?」


「何?」


「依頼失敗にかこつけて彼女達をメイドに召し上げたいそうだネ。といっても気まぐれ。成功すれば無かったことにすると言っておられるネ」


「それはリーデシアか」


「この国の貴族だネ」


「腐っているっ」


「属国化とはそういうことネ。辺境だから影響が捉えにくいが腐敗の温床となっているネ。寧ろ、実権を取り統治を行なってくれればよいものなのにネ。リーデシアも人が悪いネ。国を“盗って放置”など一体何を考えているのかネ。私もやりたくてこんな話を持ち掛けている訳じゃないのネ」


 いや、今分かった。ダンプストの目もドロリとした欲に満ちていると。これが元A級でギルドマスター?私はこんなものに憧れを抱いていたというのか。剣を抜き放ちたくなる気持ちをぐっと堪えて、私は依頼書を拾い上げた。


「理解してくれて嬉しいネ。イミール」


「っ……なあギルドマスター、冒険者って自由じゃなかったのか?これじゃ鎖が付いてないってだけの奴隷じゃないか」


 彼に言ってもどうにもならないが、私は苛立ちをぶつけていた。私が出るとPT仲間の治療師レナが凭れ掛かっていた。金髪碧眼の美女。ホントエルフってやつはどんな装備でも様になる。


「準備はできてるわ。それと対象がギルドに向かうだろうって話」


 話が早すぎる。


「お前聞いてたな?」


「私はエルフよ。精霊術でね。できる副リーダーでしょ?」


「私が断る前の段階で動いてただろうから微妙だな」


「あら、冒険者は結果が全てって貴方が言ったじゃない」


 冒険者か。国や誇りを失った者は何に寄り掛かればよいものか。


「行こうか。せめて対象が紳士的であることを祈って」


「無理よ。だってあのリーデシア兵だもの」


 ◇◇◇


 対象はギルドの受付嬢と話している。私達は酒場を陣取って観察し、同じ視線を送っているもう一グループの存在に気づく。


(不落)


 チーム不落。重盾を背負う大男ゴードをリーダーとする私達のライバルといってもよい存在。私が気づいたことに向こうも気づきにぃっとゴードが厭らしい笑みを向けてきた。きしょい。しかし──


(アイツらも依頼を受けている?しかも別口でか?)


 どんどん胡散臭くなってきたと溜息を吐く。その上、対象も棒立ちで怪しさが極まっている。本当にあれ受付嬢の話、聞いているんだろうか。


「ねえ?あの人を調べればいいんですよね?任せて下さい。黙ってたけど私鑑定が――」


 サイドポニーの学生ライザが血迷ったことを言い私は慌てたがガっとドワーフのパイネが掴んでくれ事なきを得た。


「い゛っ」


 パイネはパーティーのガード役。種族上小柄ながら力がありちょっとの力でも傷つけてしまう。


「ごめん。でも力の行使には気をつけるべき。仲間に入った以上リーダーの言うことに従って」


「関わりの薄い学園出身者とはいえ、リーデシアの悪行や魔道技術の高さは聞いているはずだ。向こうでは他者への鑑定は重罪だ。奴の魔道具で一発でバレる。だから誰も掛けていないだろう」


「ごっごめんなさい」


 私の説明に青ざめたライザ。それを諫め慰めるのはもう一人の学生であるエリー。彼女もレナと同じエルフ。その彼女の碧眼が私を捉えた。


「女性だけのPTと条件をつけた私達もあれですが、何故護衛任務の際にそれほど危険な任務を」


「今年中にBランクへ上がるためにどうしても受けなくてはならないんだ。近づかないし危険はないと約束する」


 Bランクと目をキラキラとさせる彼女達の姿が痛い。嘘をつくのは申し訳ないけれど話せば巻き込む可能性が高くなる。


「よろしくお願いします」


 揃って見目麗しい生徒。狙われるのも無理もない。二人を必ず守ると気合を入れ直したが私たちの想像を超えて対象サブサブロは変人で、度々その行動に絶句させられるのであった。


「イミール!また対象が棒立ちで停止したわよ」


「なんなんだこいつは……一体何をやっているというのだっ」


≪裏でご飯食べてます≫

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[一言] せめて座らせて放置しようよw
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