242.【俺】完全にノリが奴隷商のそれ
ふむ、プレイヤーに見立てたNPCが出てくるとは踏んでいたけど想像と違う登場ばかりしてくる。帝国に殺されたって話を聞いたり、迷宮の仕様を利用したミミックの分身体だったり、死んでミイラ化してたりと普通の形では出会えない模様。そして案の定、上位鑑定が糞の役にも立っていない。
(やっぱ上位隠蔽スキルの解除手段を先に編み出せってことか)
まあ多分そういうことなんだろう。スキルツリーにはそれらしいのが無いので今回ゲットした≪盗人の指輪≫のようにアイテム獲得で代用か。
「ねーねーイチ兄。プレイヤーってあるけどこのゲームってオンラインなの?」
そういえばいなかったっけか。奈々は配信全部見てるわけでもなさそうだし説明せんと分からんかと俺は壁を探索しつつ応える。
「いや、普通にNPC。お前の方から見てもネタバレかもだけど物語が俺らみたいなプレイヤーが関わってますよって展開になってってる感じだな」
「ふーん、名前は全員プレイヤーさん?」
「違うな。キコリンEXとか自分で付けたっぽい名前のやつも出てくっから」
ん?あれ?そうか。つい10番が13番の親戚とか思ったけど超丁寧にプレイヤーサイドを描いてたとしたら名づけ方の傾向が一緒過ぎて寧ろこれ同一人物説の方が確率高いって話になるのでは。
複垢とかサブキャラ?え?13体いるってこと?ヤバくねどんな廃人だよ。
「奈々よくわからないかも」
「適当でいいぞ。オープンワールドなんだし空気を楽しめ空気」
残念だけど魔王ベルフェゴートがいたであろう封印空間への道が見つからない。触手で移動して乗り移ってたしな。あそこに生身で行くのは不可能かも。
ちょっとだけ考えよう。もしこの10番の操縦者が王国ダンジョンを作った13番と同一なら、この空白の大地にポツンとある謎人工物も実はダンジョンなのでは?うちにも牢屋は存在するし。死んでるのが一番意味不だけどプレイヤーNPCの復活は駄目なのかもキコリンEXも逝ったって話だし。
ややこしいので仮でこいつを纏めて数字厨と名付ける。古代魔王ベルフェゴートを封印したのは数字厨で閉じ込めに成功したものの傷は深く、同士討ちとなった。
妄想だけどそんな裏エピソードも見えたのではなかろうか。これ動画化しよ。
「ねえ、兄。生き返らせるスキル無かったっけ?」
「あるけど、死者蘇生は流石に無理だと思うぞ」
と言いつつカチッとボタンを押して試すは試す。
≪死者蘇生の対象にするにはLVが不足しているため使用できません≫
うんレベルさえあったらできたわ。ただ蘇らせてどうする。仲間にできるとかか?
「んー気になっけどまた戻ってくる感じなら怠いな」
「持って帰れないの?アイテムボックスとかで」
「いや無理……いけたわ」
ネタのつもりだったのにシュンと10番が入った。いや待てボックス内に人間ゾンビはきしょくね?何かヤダ捨てよ。
≪これほどだいじなものを捨てるなんてとんでもない≫
≪これほどだいじなものを捨てるなんてとんでもない≫
≪これほどだいじなものを捨てるなんてとんでもない≫
うわ、勝手に大事な欄に入りやがった。わりと使ってないものも入ったりするゲームでよくあるやつ。まあしゃあない。とりあえず、ここはこんなもんだろうか。俺は盗賊の指輪を忘れず装備してバッツと共に故郷に向かった。
バッツ :くわっくわ クワクワッ! クワアアアア
「イチ兄、バッツ可愛い。私もペット欲しい」
「魔物使いじゃねえと……あーエルーグルくらいならいけんのかな。リングベルに魔獣店モードックみたいなところあったら何かはいけるだろうから探してみろよ。ただエルーグルは割と冗談抜きでうっさいぞ」
「そうなの?」
??? :ぴよぴよぴよ ぴよぴよ
??? :ほーホケキョッ ホケッきょおおぉお
??? :チュンピーチュンピー
??? :ニーニーニー
??? :ペンギン
??? :ホーホー
ほら、うっさ。巣に近づいてきたか。何でこいつら鳴き声統一されてないし、全力で声に個性だしてくんの。そしてペンギンってペンギンって鳴くのかよ。また一つ最上一郎は賢くなってしまった。悪いな猿、先に行く。
≪エルーグルの巨大ねぐら≫
ロケーションに到達し、馬鹿でかい鳥の巣を発見。空白の大地の何も無さっぷりを考えると思ったよりいいところに住んでる。素材木っぽいの多いけど、トレントじゃないよね?だったら闇だぞ。
「ねえイチ兄 何か来るっ」
奈々さん今、カッコつけた?空を滑空して近づいてきたのは位が高そうな二羽のエルーグル。バワンとバッツ見てるからか雄と雌って一目で分かる。雌は優しそうで雄の方は片目に切り傷があって猛者って感じ。門番的な立ち位置の鳥さんかな。
「高位鑑定っと」
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バワンとバッツの父 Lv24
狩猟部隊リーダー。狩りの長を務めるのは最も戦闘能力に秀でた者である。目の傷は幼少期に木に引っ掛けたもの。視力を失っている。ぴよと鳴く
≪ウィングアローLv4≫≪スワローターンLv3≫≪ポーキングナイフLV2≫≪索敵≫
バワンとバッツの母 Lv21
夫である父親を補佐する。エルーグルは雌の方が羽根が柔らかく、魔法操作に長けているため飛行能力が高い。ニーニーと鳴くのはヤマガラである。
≪風魔法Lv3≫≪魔力操作≫≪簡易調理LV4≫≪索敵≫
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「何か強くね」
サブロより一回り低いけど野生と考えるとレベルも高いし技も豊富の良個体。バワンも野良なのに階層主である大福に付いてきてるし、エルーグルってもしかして優秀か。
父 :ピヨ ピヨピヨピヨ
バッツ :くわ クワクワ
お父さん鳴き声ピヨで声渋。何か喋ってるけど全然わからん。モンスターの心で対話できるようになるシステム結局怠すぎてやってない。
母 :ニーニー
バッツ :クワァ クワクワ アフ クワ
バッツが説得してくれてるっぽいけどもういいや。
≪バワンとバッツの父を使役しました≫
≪バワンとバッツの母を使役しました≫
「あ」
父 :ピヨ!?
母 :ニー!!?
バッツ :クワッ!!
ゲームと現実共に絶句され、超空気読めない奴みたいな雰囲気が漂うが俺は止まらず秒で名づけを行い、スティックを倒しズンズンとサブロを侵入させる。
≪ピヨ―ドルと名付けました≫
≪ニードルと名付けました≫
次々とエルーグルが立ち向かってくるが──
「はい使役、バスリ。はい使役、フォーバ。はい使役、バファイブ。使役使役使役使役ぃいい!おいでよ明るい職場スパーダの森ぃいいい」
≪バシックスを使役しました≫
≪七鳥を使役しました≫
≪エイトバを使役しました≫
「イチ兄ッ!そんなのもうやってることHなやつで出てくる奴隷商人だよ」
「奈々、ヒーローサイドであるお前には分かるまい。俺は魔王だ」
キリッ。後、相手鳥だから決してHではない。ん?あれ?
≪他にマスターが存在するため使役を弾かれました≫
こいつだけ青色の魔怪鳥。高位鑑定を行使。出た名前に目を細める。
「ビバップ?」
何かどっかで会ってない?さてどうするか仲間にできないなら敵だし情報漏らされても困るのでこれは焼き鳥か?ちょっと魔王っぽいことを考える俺なのであった。




