217.【ドラムニュート】サブサブロに振り回される者達①
【ウイスピー】
俺はウィルオウィスプのウィスピー。え?何でネームドでもないのに名前があるのかって?そりゃ自分で付ける知能があるからに決まってるだろ。いいか、ウィルオウイスプっつうのは迷宮で死んだ冒険者の魂が元となって極稀に生成されるんだ。
普通はこうやって意識なんて保っちゃいらねえ。何で俺ができてるかって?はっそりゃ俺が名の知れた冒険者だったからに決まってるだろ。正直、冒険者だったこと以外前世の記憶は残っちゃいないが俺の中には知識が詰まっている。
こうやってマナスポットを生息地に選んだのも相性がいいと知っているからだ。雷属性であるウィスプにとってここ雷の神殿は天国。
地面からあがってくるマナを啜るだけで満腹になるし俺自身も強化される。正直ネームドクラスの実力を持っているが隠している。
魔物で名が売れても何もいいことがねえ。次から次へと名うての冒険者が襲いかかってくるだけだ。俺は安牌を歩み生きながらえて見せる。そう思っていたのに……
(ついてねえ。何でここにこんな冒険者が来るんだよ)
巨斧を担いだ銀の騎士との邂逅。どう見ても高位冒険者。俺は霊体であるため素材はでない。なのに逃げても逃げても追いかけてくる。
(ちくしょう俺が何やったっていうんだ)
俺の強さが遂に知れ渡ってしまったか。やるしかねえと相対した俺は騎士が持った武器を見て、お?っと俺は視覚器官を見開いた。
俺に物理は効かない。そしてやっぱり持ってやがった魔法武器。しかし、その属性は雷。無論俺には効果がないどころか回復する。
(ははーん?さては装備から入るタイプのいいところの坊ちゃんだな。属性相性もしらねえとかD級。ほら、切って見ろよ。くはっ心地いいだけだぜ?諦めな)
諦めると思っていた。何度も何度も何度も何度も切りかかってくる。後、テイマーだと分かった。使役を通そうとしてくるのだ。
(うぐっ!はぁああ)
同属性の魔力吸い込み。容量を上回ることがここまで心地いいとは。俺の心が恥ずかしい声を上げ始める。
(はぁあん おい止めろって あふんっ てめえ男の喘ぎを聞いて嬉しいかっちょっマジでやめろ やめえあふん)
ヤベえ壊れる。
(分かった。お前のもんになってやる。だからもうやめろ)
伝わるわけがないが俺は叫んでいた。奇跡が起こった。奴が手を止めたのだ。助かったが遂に俺も年貢の納め時かと首を差し出す気持ちでいたが奴は素通りした。
(は?)
何だかよく分からないが助かった。どうやらやっと効いてないと理解してくれたらしい。俺の平穏は保たれ……
いや、耐えられるのか?もう二度とあれが味わえないことに。悠々と歩く奴の背を見て俺は理解した。焦らしプレイだと。
(ふっまさかこんな方法でこの俺を使役しやがるとはな。凄腕のテイマーってやつか。いいぜ、退屈してたしな)
俺は奴の背を追ったのだ。どうせアイツは諦めない。二度、三度と繰り返しいつか俺はテイムされる。それなら傷つけられる前にあれを味合う。改めて言う、俺の名はウィルオウイスプのウィスピーだ。
【クリスタルナイト】
私の名前はクリスタルナイト。これは種族の名前だが別に困らない。何故なら希少性が高く同種とそう遭遇することがないから。そう、存在してるだけで特別。私はクリスタルぅうううナイト。
当然ユニークである私は最強。一番いい場所を確保し、雷性のマナの大量取得に成功している。魔物生は順風満帆。まあ唯一の欠点は恐ろしく暇だということだ。
こんな見た目だがクリスタルナイトのドロップは不味いらしく、私も傷つけたくないから人と戦おうとは思わない。人と魔の戦いは終わった。今更何人か冒険者を殺したところで変わらない。
ここで出来ることは少ない。唯一の楽しみは配下にしたゴーレムと顔を交換すること。背が高くなるし、体が傷つくことを恐れなくていい。
そうやっていつものルートを散歩し鼻歌を歌っている時だった。凶報が齎されたのは
「クリスタルナイト様大変です」
「ん?」
「ゴーレムのモーゼが攫われました」
何だそんなことかと溜息をつきそうになる。
「ゴーレム一匹いなくなることもあるでしょ。そのようなことで私の気を」
「何を言っているのですか!クリスタルナイト様が交換した相手。つまり貴方様のお体もですよっ」
「へ?」
「モーゼはクリスタルナイト様の体ごと人間にテイムされたのです」
「なっ!!なんですって!?連れ戻しなさい!どこのどいつよそんなことしたの」
私は発狂し体とっかえて遊んでいたことを深く後悔したのだった。




