22.【俺】探索が面白すぎて嵌りました
ギルド登録してから3日経った金曜日。未だFランクなのは俺が探索に嵌ってしまったから。ビビるくらいに作り込まれていて町を見るだけでも面白く、図書館の資料読みで時間が潰れた。
「作り込みやべえーマジで凄えぞこのゲーム」
設定厨なので糞楽しい。地図も手に入れこの世界の事情も凡そ分かった。
改めてエルダイン。それがこの世界の大陸名。オープニングにもあった通り12種族がそこに住まい、人と竜族が現大陸の覇者となっている。全種族と敵対関係にある魔族は人の英雄によって魔王を討たれ辺境に押しやられてしまった形。
魔の脅威を払った人間は人同士の戦いに発展。
現在、俺のいる町ペルシアが属するドラムニュート王国もリーデシア帝国の属国となっている。
そう、リーデシア帝国。それが西の大国と呼ばれる魔工国家である。高度な技術力によって転移といった強力な魔道具の生産が可能で一般兵ですら所持し、個人もすさまじく強いのだそうだ。
ゲーマーとしての勘になるが──
「絶対戦うよな。俺魔王だし」
図書館にあった三枚の人物紹介ページ。リーデシアを取り纏める三大将、姫騎士アライア、魔盾グランプ、賢者マクベス。
態々顔写真があるなんて変だ。あれはプレイヤーへの説明用に製作者が設置したものだろう。いずれこいつらと戦いますよってのを示唆しているのだと俺のゲーム脳が言っている。何よりこのサブサブロの生身はそのリーデシア兵の死体なのだし、関わらないわけがない。
「となるとだ」
俺は宿の机に地図を広げた。いや、室内で開くと勝手にこうなるのだ。細かい。
(問題はどこにダンジョンを設置するかだ)
冒頭部分をやって理解したが、このゲーム恐らく優しくはない。チュートリアルでプレイヤーに配慮する一面は多少ながらあるものの、やり方をミスれば取り返しが付かないレベルで詰む可能性をヒシヒシと感じていた。
(ゲーマー舐めんなっつうの)
だからこその徹底した情報収集。そしてこの難度……面白いと口角が上がる。必ず一発でクリアする。
場所の候補はこの三日間ひたすら採取クエを受け、目ぼしい場所は×を付けてある。この町を利用した方が良いと考えたため、余り離れない位置が好ましい。
そうなるとペルシアの町の者を狩る事になるが、まあ向こうも冒険者だ。ゲームだしそこは割り切る。流石にただの町人を手にかけるプレイをする気はない。指名手配されて町に入れなくなったらヤダし。
「トレントばっか。配下をどう増やすかだよな」
現状、魔物を増やす手段はスカウトのみ。直接闘い使役をかけるという方法だ。クエストと一緒にやればよいという考えは思った以上に冒険者が周りにいるということで崩れた。
恐らく魔王だと露見すれば町施設は閉鎖され使用不可となる。できればそれは避けたいところだ。
「ダンジョンとっとと作るべきか?」
ただ、この面子で作っていいべきものなのかがわからない。魔物召喚という項目があったが何らかのポイントが必要らしく、トレントが蹂躙されて終わるのだけは避けたい。
「それともダンジョンに入れるようになるまでランク上げるか」
ペルシア近郊には2つダンジョンが存在しているとのこと。ダンジョン内のモンスターが使役できるかは不明だが、あそこなら視界は塞がれバレる恐れもぐっと少なくなるはず。
「決めた。ランク上げてダンジョンだな。参考に見ておこうっと」
方針が決まった。俺はインベントリーを操作して黒色メイルを装備する。目立つがゲームだから気にならない。ちなみに採取クエストと職人でレベルは4になった。
サブサブロ LV4
HP100 MP60
斧術Lv1
◇◇◇
≪警告:PT加入は正体が露見する可能性が高いため推奨しかねます≫
「分かってるっつーの」
だからソロプレイ。
受付嬢シアラ :ゴブリンの討伐ということですが、お一人で大丈夫でしょうか?
魔王サブサ風呂 :大丈夫ダ
何かいっつもこの人が対応してくれる。猫耳受付嬢のシアラさん。まあゲームだからだろうがもし現実なら担当レベルである。
クスクスと笑いが起こる。こういうところ無駄にリアルである。採取クエストばかりやっていると薬草騎士なんて称号を貰ってしまった。多分、馬鹿にされているという演出だろう。
チラっと見るとさっと目を逸らす。リーデシア兵は嫌われ恐れられている。正直、属国設定とやらは良く分からない。まあゲームだしで俺は理解していた。
受付嬢シアラ :こちら討伐証明袋となっています。耳を切り取って下さい。気を付けて下さいね。ゴブリンといえど命を落とす冒険者は少なくないですから
魔王サブサ風呂 :アア
シアラちゃんマジ天使。付き合うならこういう裏表のない可愛らしい女の子がいい。さあ、行こう。ゴブリン狩りへ。