210.【俺】やられっぷりに驚愕する
昨日は妹がやっていたこともあって一日デュアミをやらなかった。電源を切っていても時間が進むこのゲーム。まあ流石に内臓時計を使っての経った体だろう。何かイベント来てないだろうかとワクワクしながらコントローラを握ったわけだが、そんな俺を出迎えたのはスパ迷宮半壊という不穏な文字だった。
「へ?」
ゾッとする。ゲームとはいえ、もう愛着が湧いた奴らばかり。全滅となれば心が折れる。ネーム持ちの魔物達が全員無事であるのにホッとするも──
「うげぇ……まじかよ」
──王都に来る前に時間を掛けて搔き集めた魔物がほぼ死滅。スライムとぬへぇも半壊。階層主のコピー体も全てやられ最後の最後でファザチルが止めてくれた。
ここを抜けられてたら迷宮街スパーダも攻略され終わってた。まさか迷宮探査イベントがここまでシビアだと思っていなかったし、時間で起きるとも思ってなかった。確かに高位冒険者がいたがマジで攻略してくるとは……
そしてログに気づき、俺は顔を顰める。
「まじかこんなのもあるのかよ」
初めての離脱者。ミハエルとクレハの教会組とライザとエリーの学生組が行方不明となっていた。最終層まで突破されたデメリットだろうか。ミハエルはまあいいと言いたいところだが全員いいキャラしてたモブ達だったのでかなり悲しい。
≪貴方のスパ迷宮が大打撃を被りました≫
≪A級ソロ冒険者ジェイク・バンガードの撃退の成功≫
侵入者A級ソロのジェイク・バンガード。パーティでのやばさもあるがソロは単体で相応の力を持つとケルベックでしっている。そのA級ともなれば怪物。やはり桁違いだ。
「でも、やっぱこれ終盤だよな?Aだし」
最上位がSだと思うのでいよいよ終わりが見えてきたか。ヒーローとヴィランでマップが別個なのか。それともこれより上の存在が今後ゴロゴロ登場するのか。謎深まるが……。
俺はログを確認してゆく、侵入者の中にコースター・タグという男がいたのでジェイクはやっぱりあのすれ違って吐いてたおっさんくさい。まあジェイクって名前だった気がする。まさかここまでの強者だったとは。こんなことならあの水に毒でも混ぜとけばよかった。
≪A級を敗北させたことによりスパ迷宮の脅威度がUPしました≫
≪みきみき つんつんぱ ちんぴちんぴ いぱっい よるれべた≫
「うわーこれガンガン来る奴か」
動画は作るとしても予定をスパ迷宮発展完全重視に切り変えた方がよさようだ。ってことで配信なしの作業回。腹立ったので鬼強化する。もう来るものと思って動く。王都周辺の魔物を問答無用でとっ捕まえてしんぜよう。
受付嬢 :え?こんなに受けるんですか?あっちょっと!サブサブロ様!
モブでも可愛い受付嬢だがここは鑑賞せずいかせていただく。ゲーマー最上一郎の本気とくとみせようじゃないか。
さてドラムニュート王国近郊には三つのマナスポットが存在してる。これは属性マナが噴き出す場所でそれを糧とする魔物が集まるのだそうだ。王国の迷宮主はここから属性持ちの魔物を持ってきたという示唆だろう。
適当じゃなくこういう背景までしっかり描くゲームは大好物だ。ちょっと悩んだが製作者の指示通りというのもあれなので俺は独自路線を開拓する。サブサブロと言ったらやっぱり鎧。そしていい加減可愛いを卒業しカッコいいのを捕まえたい。一応目星はつけておいた。
エレメンタルナイトとコカトリス、そしてツヴァイサーブラックドラゴン。やっぱり男は黙って竜だろう。名前が強そうというアホな理由だけで決めたわけでは決してない。決してだ。
ファザ&チルを最終防衛に配置するとしてもストッパーとなる中ボスを増やしたい。今回ジェイクにボコられたがA級を退けたことでメイズポイントがガッツリ入った。ってかファザ&チルもよく勝てたな?あれ?もしかしてアイツらって俺より強い?いや、きっと辿り着くまでの道のりでボロボロだったんだろう。俺と高瀬さんの愛の結晶が打ち勝ったのだ。
俺は王国の迷宮を越えるスパ迷宮を創り出してみせると気合を入れエナドリをきめたのだ。
まず選んだのは湖近くの鍾乳洞である水のマナスポット。これは水系統が一番相手にして厄介だったからという理由。
魔法武器はやはり高級で珍しく冒険者でも持ってる方が珍しいようで物理耐性持ちは避けられるという情報もあった。減ったし未だ上限が見えないので片っ端からテイムする。
「スライムか」
最初に遭遇したのはやっぱりこいつ。流石にいらないかと思ったがちょっと考える。
「集めたら合体すんのかな?」
でかスライムになるならプニキと双璧を成して欲しい。次々とテイムしてスパーダに転送する。ここでの狙いはユニークであるコカトリス。石化ブレスに気を付けろと書かれるほど強力な状態異常を持つらしいので絶対確保したい。
そのまま様々な魔物と遭遇してバンバン仲間にしてゆく。
≪ウォーターマウスを仲魔にしました≫
≪ジェットラプターを仲魔にしました≫
そして最奥に辿り着いた。
「蛇だよな?コカトリスって」
中央に限りなくニワトリに近しい何かが鎮座してたけどあれは違うとスルーする。ぐるぐると探索しそこに戻って来る。ふむ……
「これなの?コカトリス」
コッコじゃん。急にいらなくなった。期待はずれかと離れようとした瞬間、コカトリスがパチッと目を開きコケっと鳴いた。うんいらないと立ち去ろうとした俺だったがこの直後悔い改めることになる。トングか6傑の誰かを連れてくればよかったと思うほどコカトリスとのまさかの死闘が始まったのだった。




