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21.【ペルシア住人】何かやべえのがきた④ギルド編 完

【受付嬢シアラ】


 暇、暇、暇。ギルド受付嬢の仕事は案外退屈だ。同じ文言を冒険者の数だけ繰り返すのだ。これで飽きない方が可笑しい。


 シアラ・ルクレール。もう勤めて2年になるが、業務に関しては一週間でモチベが尽きた。それでも私が受付嬢を続けるのは玉の輿に乗るため。


 上級冒険者の稼ぎは一般成人男性の10倍に相当する。


 まさに金の卵を選別するには最高のポジショニング。業務合コンといっても過言ではない。向こうだってそういう気で誘ってくる。受付嬢が綺麗どころばかりなのは上級冒険者を囲う意図もあるのだ。


 絶対に見つける。私のハッピーウエディングを。


「ねえ、シアラ貴方が冒険者を見る目が最近怖いのだけれど」


 喋りかけてきたのは私の同僚フィーナ。その右手薬指には結婚指輪。結婚おめでとう。でも、こいつは妥協した。私はしない。最高のフィアンセを私は絶対に選び抜いてみせる。


「だから怖いって言ってるじゃないっ」


 ◇◇◇


 解せない。上位ランク受付から引き離されて新人登録待ち受け場に受付流しに遭ってしまった。ここに狙いがくるわけない。ダイヤの原石が眠っているかもしれないが基本的にはない。よって私のやる気がダウンした。


「だっる 帰りた――」


 そんな私の呟いた愚痴を阻むかのようににゅっと黒騎士がギルドに入ってきた。その姿を見た誰もが思っただろう。何故に戦う前からフル装備。何かヤベえ奴が来たと。


(アホだな)


 と私は彼をそう断じる。魔物の素材は商業区の店で売れるためギルドで卸す理由はない。依頼料なんてたかがしれてる。新人がよく誤解するがそんな高額が設定されていれば依頼者は貴族のみになってしまう。


 冒険者は信頼を得ることでより強力(高額)な魔物と闘う権利を得られるのだ。


 ギルドに登録するメリットはまずはそれ。そして、もう一つは顔を売る事。正直、ギルド加入の意味合いはこっちの方が多いだろう。


 強力な魔獣は限られた者以外では一人で倒すことはできない。また死闘を演じてもならない。治療費で収支がマイナスになるからだ。


 冒険者としてやっていくには仲間が必要だ。そしてそれは御伽(おとぎ)のように簡単にはいかない。性格、戦闘スタイル合うかなど様々な条件をクリアしないといけない。野良でやるにも顔は売れておいた方がいい。


 結論、ギルドで顔を隠す奴はアホか犯罪者である。


(まあ、逆の意味で目立ってはいるか)


 ただ、この売り方は逆に組みにくくなる。誰だって変な奴のPT仲間になりたくなどないのだ。私のフィアンセから最も遠い存在といえる。


(却下。無視ね無視無視)


 なのに……


 どうしてなんだろう。そう思った奴に限って私の前に立つのだ。はあっと溜息をつき受付モードに入る。女には二面性がある。覚えておくといいだろう。


「ようこそペルシアギルドへ。この度はご依頼でしょうか?」


 まあ間違いなく他の町から来た冒険者。依頼だったらあんな斧を装備したりはしない。鎧も合わせてかなりの重量のはず。まさかの凄腕?いや、でも身のこなしを見るにそこまで強くない。魔力量も多くないようだ。


 余談だが、受付嬢は全員簡易鑑定士の資格を持っている。これも実力ある冒険者を取り逃さないためだ。


(ん?)


 ピクリとも動かない。まさか私の可愛さに気絶したか。


「あの……?」


 ビクっとした黒騎士は起動したように動き出した。何だったのか今の間は。


「トウロクヲ シタイ」


「あっはい!少々お待ちください」


 返事をしつつも疑問が渦巻く。登録?その身なりで?今更?そして何で片言?


「あの冒険者の経験は?別の町で登録されていたとか?」


「ナイ」 


「え?」


「タダ ヘイシヲ ヤッテイル」


 そういって突き付けてきた兵士の証にうげぇっという声を漏らしそうになった。リーデシアの兵士。成程、合点がいった。それならソロで顔を隠していてもあり得る話。


 リーデシア兵士は不味い。同業が乱暴を働かれた話などゴブリンの数より余りある。眼を付けられてはいけない。絶対に。


「成程、リーデシアの兵士さん。ですが、それが今冒険者登録にでしょうか?」


「ナカマト ハグレ ホンゴクマデ モドル ロギン ガナイノダ マタ キョウカイ デ チリョウヲ ウケ ソノシャレイ ヲ スコシデモ テワタシタクテナ」


 嘘くせえ。おっといけない顔に出そうだった。触らぬ神に祟りなし。何せ相手はリーデシア兵。仮登録だけしてマスターに報告でいいだろう。


「そういうことだったんですね。えっと……」


「サブサブロ ダ」


「サブサブロ様ですね。では登録させていただきます。こちらの記入用紙に……」


 じぃいいっと見つめる。この中身はどんな顔なんだろうかと。まあ、私の好みなわけはない。それにシアラ・ルクレールはお金が大好きなのだ。こいつがどんな容姿であろうとこの私が惚れることはないのよ。

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