183.【俺】王都のギルド長に捕まる
「最上君それってドラムニュートの地図?」
場所は屋上。昼食は弥彦と俺と高瀬さんで一緒に食う流れになっていた。共通の話題はやっぱりデュアルミッシュ。ゲーム機PG5の機能を使って埋めた地図と資料をコピーしてきた。ドラムニュート王国なのでほぼ灰色だけど。
「そっ、普通にMMOクラスのボリュームあるからさ。ちょっと迷うだけでも時間溶けるしやる事ある程度決めとかねえと終わり見えなくなっちまうから」
「何かずりいよなイチは一人だけ最高に楽しんでてさ」
「猿はVRがあんだろ?そういえばあれどうなったんだよ。前にすげえのがあるって言ってなかったか?」
結構前に何か言ってた記憶がある。
「ライフイーターな。何か俺の勘違いだったらしい。あるにはあるんだけどなんかできる奴限られてるみたいなんだ。ほら、お前のデュアルミッシュみたいなもんだよ」
「いや、俺の10円だぞ」
「いうて非売品みたいなもんだろ。あー俺もやりてええっていいてえけど、手付けたらVR絶対できないしな」
「私も見専だけど最上君のやってたの見たらちょっとやりたくなっちゃった」
「何だったらキャラだけでも作ってみるか?つっても俺の妹も今度やるからデーター後一個しかねえんだけどさ」
「最上君の妹さんもやるんだ」
「何か見てたらやりたくなったらしい。まあアイツ飽きっぽいからいつまで続くかは分からないけどさ」
俺はチューと珈琲牛乳を啜り、それでどうする?と二人に視線を送った。
「ぐっ俺は止めとく。周りのこともあってVRがやめられねえ。これ以上ゲームに手を出したら廃になっちまう」
「私も見るだけにしとこうかな。下手だから無駄にしちゃうと思うし」
「気にしなくていいって言いたいけど俺と妹もやるから。すげえ間空くだろうしな。俺がクリアして貸して欲しいとかなら声かけてくれ」
ってことで三つ目のデーターは保留。無理して使うものでもないし、とりあえずは俺と奈々の最上家で当面は楽しむことになりそうだ。やりたい奴がいれば変わるかもだけど。
広げ置いてくれてる高瀬さんの弁当を頂く、申し訳ないので俺も作ってきたおかずと交換。クオリティに差がありすぎるが気持ちである。
「あっ」
「ん?悪い不味かったか」
「全然!凄く美味しい!そうじゃなくて私ちょっと思い出しちゃって。さっき猿飛君がライフイーターって言ったよね」
「んぐ、ああ」
何でバナナ丸ごと食ってんの猿。が、どうでもいいので俺は高瀬さんに注目する。
「高瀬さん知ってる感じ?」
「えーっと、お兄ちゃんがね。そのソフトが学校で流行ってないかって前に聞いてきて。本当にただそれだけなんだけど」
「流行ってんの?」
「いや、配信やってねえからそもそも出てないと思うぞ。流行ってるなら誰か配信すんだろうし、兄貴の話も人伝にそういうのあるって聞いたってことっぽいし。存在するなら非売品じゃねえかな」
ふむ。
「何だかデュアルミッシュみたいだよね」
確かに。
「でも、VRじゃねえしな」
「だよね」
「開発費高騰してるってニュースあったしテスター用に配ってるとかありえるくね。サカタの伝説とか抑えるためにコンシューマーでマップとかをまず作るって話も聞いたことあるぞ」
「うーん、デュアミは違うと思うぞ。想像してくれよ、あのトレント軍団をVR視点で見た時の事を」
「……」
「……」
嘘かホントかライフイーターって謎ゲーが存在しているようだ。もしもデュアミが終わってそれが手に入ったらやってみてもいいかもとちょっとだけ思った。
◇◇◇
そーいとカバンを投げてグッと伸びをする。帰宅と共に電源は付けた。学校が無かったら俺はずっとコントローラーを握って駄目人間になっていたに違いない。それほどの中毒性。
後、割と手間が掛かるゲーム性で体内時計でしっかり時間が進むため変わってる事が多く確認作業が必要だったりする。
マナの総量が増えてたり、勝手にトレントが増えてたり。
「うっし問題なしだな」
今日は作業回。といってもストーリーが進行したらそれもやる。極力配信でやりたいが碌にフラグが断たず突発的に始まることが多いので難しい。つけっぱも考えたが視聴者減る気がするし俺も一人でじっくり楽しみたい。
チャンネルが大きくなって欲しいと思いはあるけどマイペースに行こうと思う。あくまで俺がゲームを楽しむが一番だ。
まず訪れたのはドラムニュートの冒険者ギルド。といっても昨日もリスナーに紹介したので二回目となる。前回時点で注目されていたが更に警戒度が上がっている気がする。
王都ドラムニュートはペルシアの次の町となるわけで難度が低い訳が無い。バレないように鑑定した俺は周囲にいる冒険者たちの余りの強さに絶句した。レグナードクラスがごろごろいる。
(二個目にしては強すぎないか?ルート間違ってないよなこれ)
確か高難度ダンジョンが4つもあって冒険者が集結しやすいって説明があったがマジだった。大本営の王都だし集まってもおかしくないのか?いや、ちょっと変──
そう思った瞬間、ゆっくりと此方に近づいてくるNPCの姿で俺は待ち受けられていたのだと理解した。眼鏡を掛けた金髪のエルフ、横に出たウインドウに彼の肩書と名前が浮かび上がる。
ドラムニュートのギルドマスター、カイサレン。ペルシアのギルマス、ダンプストとは比べ物にならないほどちゃんとした奴が出てきた。
「さて、リーデシアの兵士様が私のギルドに何の用かな?」
一応変装したのに秒でバレた。画面越しに目を細めて観察し、互いに警戒心を露わにする俺とカイサレン。何故だろう。人気モブになる予感を俺はひしひしと感じたのだ。




