179.【俺】ドラムニュート入国
馬車自動運転モードで進みながらメニューから地図を開く。ペルシアからサブサブロが進んだ道が色付けされているものの周囲がほぼ灰色。相当広いことが分かる。未知があるというのはゲーマーとしてワクワクが止まらない。
小蕎 :冒険したくなりますね
「それな。まあでも探索は落ち着いてからだな。多分、チュートリアル終わってるだろうし、警戒度とかにも気を配らねえとエグいルートにいきそうなんだよなこのゲーム。ファストラとか何人かにバレてたし、あれもある種の忠告みたいな感じだと思うわ。それに何より今は迷宮がピンチだしな」
ヤヒヤヒ :拠点しっかりしとかねえとってこったな。よくできてるな
自宅警備兵 :コピーして売ったら売れるんじゃね?
「いや、同人ゲーだとしても捕まるから。ゲーマー名乗るならどんな製作者にも感謝しねえとって着いたな」
何から守っているのか王都を囲うように配置された対人用とは思えない巨大壁。同じく大きな門の前では旅人や冒険者達が順番待ちをしている。
ペルシアの時も思ったがこういうゲームって検問はガバいというか遊びとして描く必要がないのでスッと入れることが多いけど、リアルタイムアドベンチャーというジャンルなだけあって警備がやたらしっかりしている。
だからこそ、臨場感があってドキドキする。
赤の貴公子 :最近のゲームってこんなリアルなんだな。マジでそこにいるみたいだぜ
「ハードに拘らなけりゃ同じくらい綺麗なゲームは存在するし、何だったらVRでゲームに入れる時代だ。ただ、特にそう感じるのは演出のせいだと思う」
デュアミのこの本物感は異常に拘ってる演出の賜物だ。木や草、服の揺れ方すらパターンが読めないくらい存在している。これまでゲームのリアルさ=グラって考えだったのでちょっとそこは考えを変えさせられた。
うずまき姫 :それにしても随分と物々しいですの
「なっ、何かあったってイベントかもな」
そういえば、有栖川夜花は一度挨拶程度にコメに打ち込んだ後すっと出てこなくなる。割と学園では陰キャラだったし性格的な話なのかも知れないけど──
(もしかして裏で何かやってんのか?)
有栖川の考えや行動が掴めなくて気になってしまう。少し考えたかったけどゲームに動きがあって意識を画面に引き戻されてしまった。
並んでいた後方、押しのけるように一台の馬車が突き進んできた。日本人ブチ切れ案件だがもう一目で王族やら貴族やらが乗っていると分かる豪華さで、それも貧相な俺の横に止まるもんだから更に引き立った。糞、負けるな猪牛!しれっと相手のところに混ざってしまえ。
ってのは冗談でサブサブロを動かせないのでイベントのようだ。ゆっくり窓が開き、絶世といえる金髪碧眼の女性が顔を見せた。糞可愛い。
「っ」
小蕎 :!
自宅警備兵 : ( ゜д゜ ) ガタッ
ヤヒヤヒ :ふっ成程な
ゆうゆう :スッ(席から立ち上がる音)
ココアイ :ゆうゆう?
ゆうゆう :スッ(静かに着席する音)
何やってんのお前ら。男のロム勢も立ち上がってコメ欄が盛り上がる。女の色香に惑わされるとは分かりやすい全く奴らだ。っ、だけで留まった俺を見習って欲しい。
うずまき姫 :男って糞ですの
松江 :同意です
赤の貴公子 :どうしようもねえぜ
女性陣、俺は踏みとどまったからね?ってかやっぱり赤の貴公子さん女の人なの?
??? :テイマー……
ボソッと女性が呟いた。頭にティアラを付けているので王族だろう。テイマーに興味を示されるというのはどういうことなんだろう。しかしこの子どっかで見た気も。
付き人 :姫様、急がねばなりません
??姫 :分かっています
残念そうな顔をしたうずまきとは違う本物のお姫様はそのまま去っていってしまった。トラブルの予感を感じさせる。こいつはヒロインって奴かも。
これから描かれるであろうストーリーにワクワクしつつ冒険者サブサブロとして入場を果たした俺はドラムニュート王国の都市造形に絶句したのだった。




