18.【ペルシア住人】何かやべえのがきた①門番編
俺の名前はアラン。しがない門番をやっているものだ。年齢は29でかつて冒険者だったが、膝に矢を受けてしまってからこの職についた。
「っチ、日差しが古傷に響きやがる。忘れもしねえ、あれは名持ちのハイオークと闘いリーダーとして仲間達を逃がす生死の瞬間。俺は膝に矢を受けたのだ。くっ俺の事はいい!先に行けっ」
「もういいですってその話は。何千回目ですか」
俺の言葉を割るように冷めた事を言うのは同僚のポールだ。背が高くひょろい。弱そうだし実際弱い。まあ、それでもここの門番は務まってしまう。
「だってよー暇だろ?平和過ぎんだよ」
「いいことでしょ。魔物の侵攻がなくなって心に余裕ができたんだ。悪さをしようって奴も減りますよ」
変な奴がいればなーっと俺は入場料を支払う列を見ていれば明らかに変な奴を発見した。包帯をグルグル巻き。
「怪しい奴きちゃあああああ」
「何で不審者が来て喜ぶんですかアランさんは」
「よし、ポール。尋問の用意だ。俺に任せろ、しょっ引いてきてやる」
向おうとした俺の襟をポールが掴み、ぐえっとなった。背だけはあるのだこいつは。
「おい、何すんだよ」
「駄目ですって。彼の鎧をよく見て下さい」
「うげっリーデシアの兵士様かよ。何だってこんな所に」
「空白の大地で魔族との戦争を起こしただとか噂があります」
「空白ってそんなに離れてないだろ?軍隊なんかここを抜けたか?」
「彼らは転移魔道具を持ってますから、ドラムニュート王国の中を飛び回って魔族を狩ってるって話ですよ。本当かは知りませんけど」
「はっそんで恨みを買って俺達が盾ってわけかよ」
「属国ですからね。僕ら王国はリーデシア帝国の」
「っチ、胸糞悪い」
俺達ドラムニュート王国は帝国リーデシアに呑み込まれた。何とか自治権を認められたのは魔物の存在がためと言われている。見下すような視線や差別的な嫌がらせを王国の民は受けていた。
そんな奴らがこんな辺境のペルシアまで足を延ばしてきた。ここもいよいよ平和でなくなるかもなと再び包帯男を見たアランはある事に気づく。
「ん?転移で跳んでんなら何であいつ一人うろついてんだ?」
「多分、転移にも乗れないレベルの怪我を負ったってことじゃないかな。それかはぐれちゃったとか。包帯の巻き方素人っぽいし」
ふむっと腕を組み待っているとようやく男を観察することができた。馬鹿みたいに巻いた包帯。あれではミイラ男だが、もった美貌を隠しきれてはいない。隙間から覗く翠玉色の瞳を見ていると何故か古傷が痛んだ気がした。
「アイツは俺が見る」
「アラン、言動には気を付けてね。一般兵士にしては整い過ぎてる。貴族かもしれない」
「分かってる」
男は俺の前に立った。弱い。見て何レべかは神官でないので分からないがそれでも冒険者をやっていたためある程度の力量は測れる。こいつから感じる強さは一般人と同じ程度。けれど、どこか違和感があった。もしかすると隠蔽か?
「よお、アンタ偉い怪我だが大丈夫か?リーデシアの兵士様だよな?魔族との戦争って噂を聞いたがその帰りかい?」
「ソウダ ケガヲオイ キョウカイデ チリョウヲウケ ヤットウゴケルヨウニナッテナ」
「ん?こことリーデシアは同じ言語……だよな?遠方の出か?」
「……」
「いやっ!?すまない。詮索する気はないんだ。言いたくないなら言わなくていい」
何だ?と汗を拭う。仕事で聞かなければならないのに今、踏み込んでは駄目な予感がした。そして彼が貴族であると確信する。兵士であるのにこのボケーっとした空気。であるのに言葉から滲む謎の威圧感。
(死体荒らしはないな。こりゃ、リーデシアのお貴族である可能性が高え。厄介だな。いくら退屈でも顔を隠したお貴族様とか引いちゃいけないJoker。頼むから名乗らないでくれよ)
「兎に角、大変だったな。身分証はあるか?」
「ハゲシイ タタカイ デ ナクシテシマッテナ」
「それは災難だったな。冒険者ギルドで仮の身分証を作るといい。この町は初めてか?」
「ハジメテダ」
「そうか、ようこそペルシアの町へ」
◇◇◇
入ってゆく男の背中をじっと見つめればポールが声を掛けてきた。
「いいのかい?あっさり通して。正直、怪しいってもんじゃないよ彼」
「ギルド長に連絡だ。見張りも付ける。ただ、かなり慎重に。間違いなく奴は貴族だ。それも下手をすればかなり上のな」
≪いいえ、魔王です≫
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