17.【俺】黒騎士となってギルドデビュー
カンカンカンっと火花を散らしながらミニゲームに集中する。熱をしっかりと見てタイミングよく叩くのが基本。製作可能な装備から俺が選択したのは魔王用黒甲冑鎧初級。
魔王サブサ風呂 :ヤッタゾ 大成功ダ
「よし」
成功すると魔王サブローが声で祝ってくれる。頭、胴、籠手、足と立て続けに連続大成功を出したため、やったぞ大成功おじさんになってしまった。
演出なのだろうが周囲のドワーフ達が絶句しているのが気持ちがいい。
「ふっ見たか。MMOで鍛えた俺のミニゲームの実力を」
俺は満足げに出来上がった黒のメイルを見る。まあ、初級なのでショボ目だが満足の出来である。材料鉄と銅だけでどうして黒に染まったなどツッコミどころ満載だがゲームだからよいのだ。
早速装備。インベントリーから身に着けていくとドワーフ達がざわめいた。
「ん?」
遠く離れてヒソヒソ話し近寄ってこない。まあいいかと身に着け鎧の騎士となる。兜で顔が隠れたため見栄えがかなり良くなった。
足音もちゃんと変わった。ガシャンガシャンと鳴らしながら再び大鍛冶師ガストロのもとへ。ゲームでも日本人として挨拶は基本だ。
ビックリ演出。こんなものまであるとは実に細かい。カウンターで腰掛けていたガストロが俺の姿を見て目を見開いている。
魔王サブサ風呂 :世話ニナッタ
「おっ! ちゃんと礼言えるじゃんサブロー」
大鍛冶師ガストロ:ちょちょちょっ何だそりゃ?初めから持ってたのか?いや、まさか
魔王サブサ風呂 :我ガ ツクッタ
ちょっとドヤ入ってた。まあ全部大成功品なのでイキってもいいだろう。
大鍛冶師ガストロ:嘘をつけっ!こんな短時間でどうやって!?おいこら行こうとするな
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≪チュートリアル:ガストロの鍛冶初級≫
・承諾 ・skip
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何か始まったが……。
「鍛冶は分かるからいいや」
スキップし、ガストロが騒いでいたが逃げるようにその場を離れる。チュートリアルが追ってくるとか怖い。さあ、次は念願のギルド。既にワクワクが止まらない。
ギルド。それは説明する必要もなくファンタジーゲームで人気の施設。モンスターを狩りお金を貰えるハンター稼業。魔王なのに入るのかと言われればう゛っとなるが、やっぱりゲーマーとしては絶対に行ってみたい場所だ。
ちょっと駄目かなと思ったが警告がないので多分、大丈夫だと判断する。
冒険者地区中央に構えられたその市役所のようなギルドの門扉を俺は鎧の音を立てながら開くのだった。
(おー)
内部は二階建ての丸太作りでカウンターがあり、酒場があってのアニメに出てきそうな造りだった。職を示す装備を身に着けた冒険者達が掲示板を覗いたり、酒場で話したりしている。
「マジで作りこまれてんなー」
内装もそうだが特に感心するのはNPCの動き、各々に動きが設定され本物のように感じさせてくれる。ガヤガヤとした喧騒も音で表現されているのがグッドだ。
「NPCが反応示してくれんの面白いな。リアクトシステムだっけか」
予め設定されたワンパターンではなく、こちらの行動に合わせて動く仕組みの事をリアクトシステムと呼んでいる。詳しくは俺も知らないが高度なAIを使って為しているのだという。
鎧姿が目立っているようで、進む俺を冒険者達がぎょっと振り返るのだ。
気分よくなりつつも空いてるカウンターへ俺は進んだ。
受付嬢シアラ :ようこそペルシアギルドへ。この度はご依頼でしょうか?
猫耳受付嬢。茶髪のセミロングで黄色の目はクリクリしていて、大人しい系女子。その余りの可愛さに俺は操作するのを忘れて棒立ちとなってしまった。
「超かわいい」
受付嬢シアラ :あの……?
俺が動かないため困惑気になったシアラちゃんも……って駄目だこれでは限界オタク化していると俺はサブローを彼女の前に立たせる。
魔王サブサ風呂 :登録ヲ シタイ
受付嬢シアラ :あっはい!少々お待ちください
「おいーそこはもうちょい愛想よくいけよなサブロー。まあ、このゲーム恋愛要素とかねえんだろうけどさ」
受付嬢シアラ :あの冒険者の経験は?別の町で登録されていたとか?
魔王サブサ風呂 :ナイ
受付嬢シアラ :え?
魔王サブサ風呂 :タダ 兵士ヲ ヤッテイル
若干疑われたようだが、そう言ってサブローが兵士の証を突き付け、受付嬢シアラが納得した。
受付嬢シアラ :成程、リーデシアの兵士さん。ですが、それが今冒険者登録にでしょうか?
魔王サブサ風呂 :仲間トハグレ。本国マデ戻ル路銀ガナイノダ。マタ教会デ治療ヲ受け、ソノ 謝礼ヲ少シデモ手渡シタクテナ
大丈夫か?その言い訳。そして長いと読み難っ。
受付嬢シアラ :そういうことだったんですね。えっと……
魔王サブサ風呂 :サブサブロ ダ
受付嬢シアラ :サブサブロ様ですね。では登録させていただきますこちらの記入用紙に……
問題ない。ペルシアの町人はザルい。そして俺が付けたサブロー・ブローって名前が完全にどっかいった。もう遂に自分からサブサブロつったぞこいつ。