164.【俺】それでも最上一郎はこのルートを選ぶ
「5000人か」
あっこの人絶対しょぼって思った。しょぼって思った声のトーンだった。言っとくがな登録者5000集めるの容易じゃねえんだからな。完全にデュアルミッシュのお陰だけど同じことできんのか鬼瓦先生。
この先生顔怖いから絶対口には出さないけど。
「最上言っちゃなんだがこれでストーカーがいるというのは」
「いや、俺もそう思うんですけど俺の配信ちょっと特殊っていうか。結構学校の知り合いがみてるんですよ」
「何」
俺の予測ではモブ勢含めるとまだいそう。俺、弥彦、高瀬さんに加え、あのス・キでお馴染みのラブラブカップル盛賀優斗と峰岸心愛まで把握しているのだ。正直、口軽そうなのもいるし間違いなく漏れてる。リスナーになってないにしてもチラ見した奴は何人かいるはずだ。
「実は白百合学園のお嬢様もまあそのリスナーみたいな感じで、だからそういう関係じゃなくて全部勘違いっていうか。その西島先輩には誤解ってのを先生の口から言って頂けると。あっ配信してることはその先輩には」
「分かってる言わん。しかし、成程な。それならばあり得るか」
勢いで頼んじゃったけど大丈夫かな。西島先輩のことは知らないし怖いけど勘違いなので説明すれば分かって貰えると思ってる。
「はい、知り合いから聞いて本人が近くにいるっていうならどんな奴か顔だけ見にいこって人がいないこともないかなって。正直俺にはそれくらいしか心当たりがない感じです。あの先生……」
「何だ?」
「その、何でそこまで気に掛けてくれるのかなって」
今時ここまで対応してくれる先生は多分、珍しい。普通は実際に事が起こってからとか、え?虐めがあったとか聞いてないですとかいう難聴系校長先生が現れたりするものだが。
それに俺は鬼瓦先生と仲良かったわけじゃないし、正直ちょっと気になってた。
「生徒のことを教師が心配するのは当然だと言いたいところだが最上、お前はあんまりニュースは見ない感じか」
「え?あっとはい」
てか全く。
「就活でいずれ必要だから読んでおけ、まあ今は五月蠅くは言わんがな」
そう言って先生が電子タブレットでニュースを映し出すとパンパンっと手の甲で叩いた。
「最近、学生が学生を狙った事件がやけに多いんだ」
「学生が学生を?」
「記事によると不良ってわけでもない。普通の一般学生が他校の生徒を襲撃する。妙だろ?取り越し苦労ならそれでいいが、タイミングがタイミングだし多すぎるからな。実際、うちの校門にカメラがついたのもそれでなんだ。収まるまでは警戒しておこうってな」
「それでカメラが」
うん、成程。正直学校に監視カメラとか言われてギョッとしたけどそういうことだったか。
「まっとはいえ俺にできるのはこの学校のことだけだ。この辺りの不良どもには顔が利く。何かあったら相談しろ、ほれ」
何やったの?というか何者なの先生。そう言ってスっと鬼マーク差し出す先生、これはいらないやつ。
「いやシールはもういらないです」
「ワッペンだ。胸に付ければこの辺の不良なら寄ってこんはずだ」
もっといらねえ。そして本当かそれ。更に絡まれる未来しか見えんが。ゲームでも存在しないだろそんなバッチ。
「前から思ってたんですけどこれ先生が作ったんですか?」
「なんだ、最上はオーガナイトを知らんのか?最近の子は皆知ってると思っていたがな。VRのキャラと同じ服をオーダーメイドできる流行りのブランド店だ。そこで配られるシールを丁度いいんで使わせて貰っている。カッコいいだろ」
へーVRの情報を遠ざけているとそういうのにも乗り遅れるらしい。オーガナイトか。そのネームセンスダサくない?って俺は思いつつもその名を認知したのだった。
◇◇◇
場所が変わって屋上そして昼休み、いつもなら猿といる場所で俺は高瀬さんと弁当を広げていた。
「うおぉお旨そうおお。すっげえこれ全部高瀬さんが?」
「うん、口に合うか分からないけど」
いや、もう合うとか合わないとかそういうレベルじゃない。有り難うございますって土下座するのが当然。
「マジで感謝な。買いに行くの大変ってだけで作って貰って」
「骨折だしね。大変そうだったし。つっ次いでだから」
ああ、そう骨折。今も包帯巻いてるし松葉杖ついてる。あーマジで幸せ。こんな美少女とお昼を一緒にしかも弁当まで作って貰えるとかどこのラノベ主人公かって話で。高瀬さんの優しさだろうが脈が無いってことは無いだろう。こっこのまま高瀬さんと付き合っちゃったりして。
「「あ」」
ガチャっと扉が開いて見ると俺の親友、猿飛弥彦と目が合った。ちょっと暗い表情になってすっと閉じる。うん、このまま高瀬さんと二人きりの方が一緒の時間ができて彼女と仲良くなれるかもしれない。もしこれが恋愛ゲームなら選んじゃいけない選択肢かも知れないが──
「なあ、高瀬さん。あいつと大体一緒にいっつも食っててさ。悪いけどここに入れてやってもいいかな?」
「え?うん勿論」
ニコッと高瀬さんがほほ笑んだ。かわよ
◇◇◇
「おい、猿」
「んだよイチか。俺今日別んとこでっぐわ」
モンゴリアんチョップからの肩組み。
「ほら、戻るぞ。三人で食おうぜ」
「いいって邪魔だろうし、俺だってなそれくらいの分別はあんだよ」
「まだ付き合ってるとかじゃねえって。単純に高瀬さん優しいからな。弁当ちょっとくらいならあげるぞ」
「マジかよ、持つべき者は親友かよ。ってかイチお前普通に歩いてね?」
「ふっその設定忘れてたわ」
「さては歩けはするなてめえ、よし!高瀬さんに言いふらしてやろう」
「おい!持つべきものの親友。お前言ったら絶交だからな猿!痛ぁっ!!走ったら痛ぁあ」
まっ女の子とイチャイチャしたいし全力で彼女が欲しいけど。こういう空気を俺、最上一郎は選ぶ。3人でデュアミの話して盛り上がって、やっぱこのルートで良かったって俺は思ったのだ。




