EX.400万PV記念SS『鋭きチョロ』
”髪に芋けんぴついてるぞっと”
「馬鹿じゃないの。そんなの起こるわけないじゃない」
少女漫画に駄目だしするのはサブイチチャンネルのリスナー達からもチョロ認定を受けた白銀連盟のエルフ、レナ。サブサブロに与えられた部屋で寛ぎ、ごろ寝しながら漫画を読む姿は現代日本人となんら変わりない。
元々知的好奇心が高い種族であるエルフ。彼女が前の生活に戻れることはないだろう。何より彼女はサブサブロに恋している。当人は秘めているつもりだがエルダインサイドにも現実サイドにもバレバレであった。
流石に全員からチョロと呼ばれる女ではない。細かく読み込むレナは作者が描く微妙な表情の変化に気づいた。
「待ってこの女もしかしてわざと?いえ、それはそうよね」
例え創作物だろうと頭に芋がついて気づかない女はいないと納得するレナ。そしてそんなものが女に付いていたらスルーできる男はいない。実際意中の相手を迫らせ、主人公の女性はほくそ笑んでいる。
この手があったかと妄想が進む。頭の中で主人公が自分にイケメンがサブサブロに切り替わった。取るために迫るサブロ。自然となるキスできる距離。
想像しただけで恥ずかしくなってバンっと漫画を閉じたレナはベットにつっぷした。何故ここまでサブサブロに惹かれているのかは分からない。けれど、魔法訓練で触れ合う度に思いが強くなってゆく。
忙しそうにしていてまだかなって思ってしまう。スパーダは退屈というわけではないが暇をしているのは事実。ここで自分ができることをいい加減見つけるべきかも知れないとボーっと考えるレナ。
自然とフライドポテトに手が伸び頭に乗せる変わり者エルフ。が、彼女が恋する相手も変わり者魔王。突如として現れ、固まるレナに淡々と話しかけた。
「訓練ヲ頼ム」
「ちょっ!だからノックしてから転移してって言ってるじゃない!」
「忙シイノダ。以後気ヲ付ケヨウ」
そうは言うが記憶無くしてるんじゃないかってくらい毎回飛んでくるサブサブロ。伝説の魔法をポンポン使うなと言いたいがもしかしてコイツも私に早く会いたくて使ってるのかもと思い始めて顔を熱くするレナ。
「じゃっじゃあさっさと準備しなさいよ。兜を外して手を繋ぐの」
素顔を晒したサブサブロと手を結んで集中。これはあくまで訓練であり、やましいことは一切ない。転移魔法という魔術を扱えるのに初級魔法ができないというサブサブロ。
そこに疑問はあるがこれは恩返し。集中するサブロを見つめながら考えるレナは漸く自分の隣に浮遊する板のようなものに気づいた。
◆───-- - - - - - - – --───◆
レナの頭にフライドポテトが乗っています
指摘する
上乗せする
見なかったことにする
◆───-- - - - - - - – --───◆
文字が書かれていた。知らない言語。漫画のものと同じものに見えるが、あっちは読めてこっちは読めない。鑑定魔法的な?サブサブロによるものだろうけど。矢印のようなマークが存在していてそれが迷いを見せるように何度も動き、そのたびにピンピン・ピンピン音が鳴って気が散る。
「頭ニ何カ付イテイルゾ」
「え?嘘」
板の事など吹っ飛びキタと心でガッツポーズ。サブサブロは立ち上がるとポテトを一本取りそれをレナの上に乗せた。
「?」
「落トスナ」
意味不明。しかし、ほほ笑んだサブロに撃ちぬかれピシッとレナは石化した。目撃していた高校生は真顔だったが幸せな時間は一瞬で終わってしまった。サブサブロは筋が良くもうすぐ扱えるようになりそうだ。これが終わりになるのはちょっと悲しい。魔法覚えようかなと再び漫画本を手に取るレナ。
創作と現実は違うため同じ通りにはいかない。でも私はここで知識を得た方がいいかもとページを捲るレナはふと考古学者である母の言葉を思い出した。
”案外娯楽からその時代の暮らしが探れるものよ。共通するものを探すの。全く同じならそれは想像されたものじゃない。そこから古代の人達の姿が浮かび上がってくるわ”
漫画という書物の中には理解できないものが沢山存在している。分からなくても愉しめるのがこの漫画ってやつの魅力だとレナは思う。摩訶不思議な建物が並ぶが共通する舞台が選ばれていることに流石に気づいていた。
「日本」
そこはサブサブロの故郷なのだろうか。そうでなくてもきっと彼に関係がある場所だろう。行って見たいとレナは更に漫画の世界に嵌り込むのだった。




