16.【俺】町を探索し装備を作ろう
学校がマジでだるい。速攻で家に帰りたいと悶々と思ってしまう。それだけ俺があの10円ゲームに嵌り込んでしまっている証拠だろう。
色々できるようになって超楽しいタイミングなのだ。高校帰りの電車内、俺はデュアルミッシュを調べてみたがやはりどこにも表示されず、完全な無名ゲーであることを再確認した。
「結構面白いんだけどな」
やはり数がないゲームなのかもしれない。そういうゲームはプレミアが付いてたりするが10円なのでマジで知られていないゲームなのだろう。個人製作の可能性が高まったが22世紀で色々機材が揃っているとはいえあれは凄い。
「まあやったもん勝ちだよな」
ほんのちょっとだけ俺は恐怖を感じた。が、アホなので秒で忘れた。
◇◇◇
帰宅して速攻ゲームを始める。暗転から目覚めたのは前回泊まって落ちた宿屋。一悶着あったがごり押しで行けた。安宿なので余り綺麗ではないが、それが逆にファンタジーっぽい。二階の窓から外を見渡せ人々の営みを見ることができた。
住人一人一人がかなり作り込まれていることが窺えた。
「とりあえず装備だな」
包帯男は目立つので嫌。このゲーム、プレイヤーがダサいとしっかり町人が振り返るのだ。ゲーマーとしてもカッコ悪いままいたくない。ただ宿屋に止まった感じからして、間違いなく顔を隠せる装備を買う金が足りない。
となると──
「作るしかねえよな」
職人で作ってしまう。そのための素材なら何とか手を出せるだろうと考えたのだった。
宿の主人ドルコ:おや兵士さんお出かけですかい?
魔王サブサ風呂:アア
宿の主人ドルコ:夕方 鳥時までには帰ってきてくだせえ。飯の取り置きはやってませんで
魔王サブサ風呂:アア ワカッテイル
この誤字ホントどうにかならないものか。そして主人公は口下手のようだ。
(MMOっぽくありながら主人公が人格を持って話すタイプか。最近じゃ珍しい……じゃなかった。これ昔のゲームか)
おっさんと挨拶を交し、出ようとしたところで小さな女の子とぶつかった。
宿の看板娘リリ :キャ
魔王サブサ風呂 :スマナイ
下に出た少女リリちゃんの顔グラがメッチャ怯えている。やっぱり包帯グルグル巻き男は不味そうである。このゲーム恐らくその辺りシビアと見た。町を追い出されれば面倒極まりない。ギルドにもいってみたいが装備最優先だ。
俺は女の子にエモートで謝罪を示し、ペルシアの街に飛び出したのだ。
まず向かったのは鍛冶屋。打って貰いたいが絶対金が掛かるだろうから自分でやるつもり。幸いレシピを持っていたので失敗しなければまあ大丈夫だろう。
【鍛冶屋ガストロ】
鍛冶屋ガストロ、土管の生えたガラクタの家。それがこの町の鍛冶屋のようで、場所は東の商業地区その奥に構えられていた。巨大な鍛冶場がその横にあってハンマーを持ったドワーフがトンカントンカンやっている。
湯気が凄い。ゲーム越しでも熱を感じた。
カラランっと店の中に入ると頑固爺さんみたいなドワーフがギロリと俺を睨む。彼の上にガストロと名前が出ているのでここの主人で間違いないらしい。何かジョブ名?みたいなのが大鍛冶師とやけに仰々しいのが気になったが。
大鍛冶師ガストロ:リーデシア兵か。随分とやられたな。魔獣か?
魔王サブサ風呂 :ソンナトコロダ
大鍛冶師ガストロ:何だ?その話し方は喉でも潰したか?
魔王サブサ風呂 :ソンナトコロダ
サブロ風呂さん超コミュ障。同じ返事を繰り返しちゃ駄目ってコミュ強の母が言っていた。ほら見ろ互いに無言になって変な空気になった。
大鍛冶師ガストロ:っチ……悪いが俺はリーデシア兵士ってやつが大っ嫌いでな。幾ら積まれても打たんぞ?
安心してください。積む金がありません。
魔王サブサ風呂 :ソザイヤブキヲ カウノモ ムリカ?
大鍛冶師ガストロ:素材?武器はまだしも素材など何に使うつもりだ
魔王サブサ風呂 :ジブンデ ソウビヲツクル カジバヲ カシテイタダケルト アリガタイ
大鍛冶師ガストロ:くっははは 正気か? ふっまあいい鉄までなら売ってやる鍛冶場は端なら使っても構わん。ただ汚したり壊したりすれば弁償させるがな
魔王サブサ風呂 :オンニキル
俺は鉄を買い、ドワーフ達にエモート連打でペコペコしながら隅っこを確保し、職人ページを開くのだった。