14.【俺】ペルシアの街に辿り着く
マジでこいつら仲間にしなかったら詰んでいたかも知れないと俺は空を飛ぶバッツの影を追いながらまるで変わらない景色にそう思った。
「マップないのってやっぱヤベえわ」
絶対に遭難してた自信がある。いや、もう最初からしてたようなものだけれども……。こいつらなしにあのトレントのファームまで戻れる自信はなかった。
「まずは地図だな」
と駆けながら俺は肩に乗るバワンの嘴を撫でていた。バワンを選んだのは女の子だから。ちなみに、バワンとバッツには裁縫職人で作った魔物のスカーフを装備させている。十分可愛いがちゃんとしたものを付けてやりたい。お金は死んだ兵士からくすねたものがそこそこあるので職人道具とか装備も買い揃えたいところである。
「いや、流石に防具揃えるのは厳しいか」
物価とか見ねえとなとぼんやり考えていればバッツが回り出し到着を教えてくれた。遠くを見れば外壁に囲まれた西洋風の町が目に入る。
「おおお」
結構でかい。カッコいい。駆けようとしておっとと止まる。鳥をどうしようかと。
「うーん、魔物連れて街入るのは不味いよな。ガバなら行けるだろうけどこいつらトレントのファームまで戻ったりできねえかな」
軽く弄るとコマンドが表示された。
・拠点帰還
・待機
・狩り
「なんだあるじゃんか。じゃあお前ら助かった。帰還してくれ」
トレントファームが拠点かはぶっちゃけ怪しいけれど、バワンがじっと見つめてきた。俺が見ればクイっと顎を上げる。多分、顎撫での催促だろう。NPCの要求が凄い。
「フルッフッゥゥ フルゥフルッ」
「クワックワ」
「あーはいはいお前もな」
バッツも嫉妬したのか降りてきて俺の肩をツンツンする。撫でてやると満足したのか羽ばたいてくれた。
「じゃあ、早速街入り」
《警告 変装の必要性があります。死者であることが露見した場合、街に入れなくなるので注意してください》
「ええ……」
圧倒的先に言えよ感。
「急に変装って言われてもな」
何もない。あるとすれば……布。
◇◇◇
門番アラン :よお、アンタ偉い怪我だが大丈夫か?リーデシアの兵士様だよな?魔族との戦争って噂を聞いたがその帰りかい?
「あーこんな感じなんか」
画面下に顔写真が出て文字が出る感じ。やっぱ昔のゲームだ。フルボイスなのが凄いけれども。ちなみに顔を隠すために包帯でグルグル巻きにした。
魔王サブサ風呂:ソウダ 怪我ヲ負イ 教会デ 治療をウケ ヤット 動ケルヨウニ ナッテナ
「何で俺こんな片言なの!?しかも誤字ってね?」
しかも超嫌な誤字である。バグっぽい。そして何だサブサ風呂って。
門番アラン :そうか……大変だったな。身分証は持っているか?
◆───-- - - - - - - – --───◆
選択肢
・家に忘れた
・失くしました
◆───-- - - - - - - – --───◆
「何この選択肢……いらなくね?」
一応、失くしたを選択。
魔王サブサ風呂:激シイ 戦イデ 失クシテシマッテナ
門番アラン :それは災難だったな。冒険者ギルドで仮の身分証を作るといい。 この町は初めてか?
魔王サブサ風呂:ハジメテダ
門番アラン :そうか、ようこそペルシアの町へ
≪アランの好感度が上がりました≫
「なんでだよ。どこでだよ。こいつチョッロ。んで、警備ざっる」
異世界ゲーム特有のザルさ。まあ、入るだけでグダグダされても困るけども。兎に角、街への潜入に俺は成功したのである。後、名前がサブサブロになった。
ペルシアの町。RPGで言う最初の町というよりは中盤クラスの結構な規模の町。東西南北に区分けされ、商業地区や冒険者地区、貴族街に平民の住宅地があるとのこと。かなり広いので探索は明日だなと俺は決める。
≪警告:本ゲームはオートセーブですが種族が魔王の場合、宿屋で落ちなければ獲得アイテムが巻き戻ることがあります≫
「あーマジかーそりゃちょっと面倒だな」
終わろうとしたら警告文が出て顔を顰める。仕方なく歩き回って宿屋を見つけた俺はこの町の複雑っぷりを理解し、疲れ果ててしまい今日のプレイをそこで終えたのであった。