125.【俺】迷宮制作を思い描く
「はいチョロサブロ」
豪快プレイができるゲームは最高に気持ちがいい。ぶっ刺さったスネークバイトがダランと垂れ下がり、サブサブロ達が勝利ポーズをとった。
「完全勝利」
自宅警備兵 :あれ素材回収できなくね?
「完全勝利」
小蕎 :わら
名無しF :凄い迫力。なんてゲームですかこれ
名無しB :デュアルミッシュ
うん、戦闘中でも一人称視点にできるのに気づき最後の一撃で使ってみたがマジでリアルだった。まあ、物理法則無視したアンリアルな飛び方したけども。
百獣 :守護者って仲間にできませんでしたっけ?
「うん、できる。ただ低確率だし条件あるぞ。放棄された迷宮しかできないっていう」
小蕎 :もしかしてダンマスがいる?
「ここにはいないっぽいけど、サブサブロと同じ迷宮主が多分登場する。前の配信でも言ったけどここが最後の迷宮だからシナリオ的に何かあると思ってる」
自宅警備兵 :マジ楽しみ。今日最後まで行くよな?
名無しG :もしかしてプレイヤーってことですか?
名無しF :これってMMO?他のプレイヤーいる系?
おっと質問が一気にきた。
「えっと順番に答えると最後まで行きたいけど7時までには終わる予定。勿論間に合えば最後まで、ただちょい早めに切り上げて街で道具も買いたいかな。デュアミはMMOじゃなくオフゲー。だから、他のプレイヤーもいない。ただNPCがプレイヤーとして出てくるかも知れない感じ」
そう、プレイヤーという存在を物語に組み込んでる可能性はある。まあこれはあくまでそういった存在の匂わせがあったのでそこからの予想。
考察する必要はない。きっとマルタノの最下層に答えがあるはずだから。果たして何が待ち受けているのか。ワクワクしながら俺はスティックを倒したのだ。
ゲーマーある俺から言わせると迷宮攻略はどうしても少しダレる。個人で楽しむならまだしも配信で行うならサクサクが肝心だ。その辺りがアクションゲームで迷宮という題材が余り選ばない主因なんだろうか。それに俺は迷宮を作る側でもあるので多少効率を考えないとプレイ時間がえげつないことになる。あっ不思議系は俺も大好きだ。
ってことで最下層まで半無視の全力疾走。大福を頭にバワンを肩にサブサブロを駆けさせる。ガシャンガシャンと金属音を鳴らして走る黒甲冑男の姿はリアルで見れば恐怖以外の何者でもないだろう。
自宅警備兵 :冒険者引いてね?
小蕎 :ってか周りに冒険者いるって珍しいっすね
「よなー。ゲームだとかなり珍しいと思う」
リアルだとこうなるのだろうけど、周りに人がいると迷宮にアトラクション感がでてしまうのは何でだろうか。
「個人的には迷宮作りの参考にしたかったんだけどな……」
百獣 :厳しいですか?
余裕とまでは言わないがケルベッククラスの冒険者なら楽に突破できてしまうだろう。現にマルタノダンジョンは攻略済。ギルドがコアを取ることを禁止しているので崩れていないだけだ。
というか大体のダンジョンがそういう状態らしい。迷宮は経済に関わり、彼らも失う訳にはいかないのである。
「うーん、やっぱこの形式のダンジョンで冒険者をとどめるって無理あるよな」
所謂、物語でありがちなテンプレダンジョン。10層毎にボスを配置し、準備を整えさせてくれるというある意味冒険者のために作られたかのような迷宮だ。
まあ小説やゲームなんて主人公が活躍するために描かれるのでそりゃそうなるか。
自宅警備兵 :でも崩されないなら結果ありじゃね?
警備兵の言う通りだが……
「確かにマルタノダンジョンはスパーダの理想形。経済依存させて当人達にクリアさせないってのは安全って面では一番かも知れない。でも、3つ問題がある」
彩高 :その問題って?
高瀬さんっ!じゃなかった。ここは真面目に。
「マルタノがどうして経済的に影響力を与えられているかっていうと、乱獲されても値段が落ちない希少かつ有効な素材がドロップするからってのが大きい」
モブ聖人 :そんなとこまで設定されてるんですか!このゲーム
「ああ、デュアミは細かいぞ。魔物図鑑見るにこの辺りに生息してないし、出現もレア。そいつらを引っ張ってくるのはストーリーを進めないと無理っぽい」
そういう意味ではこのマルタノは凄い。ドロップ素材の売値が高いのだ。そんな中、俺は蛇を無駄にしちゃったわけだけど。
「二つ目、スパーダはメインの拠点でもあるので冒険者を最奥に辿り着かせるわけにはいかない」
これは大きい。サブ迷宮が作れるようになったら話は変わってくるだろう。
「そして最後だ。メイズポイントを手に入れるには迷宮内で撃退しないといけない。得られる手段が限定的だからこのポイントを兎に角稼げるようになりたい」
百獣 :つまりサブイチさんは戦闘で冒険者を阻む迷宮を作りたいと
つい頷いてしまう。
「理想はマルタノダンジョンみたいになることだけど迷宮移転や迷宮創造はメイズポイントを使う。仲間のためにも余らせておきたいんだよ。このゲームかなり自由度が高いから皆の意見が欲しい」
彩高 :了解 アイデア思いついたら書くね
小蕎 :ボス部屋って概念無くしてみたらどうっすか?
「それあり。まあできるか分からんけど色々試してみようとは思ってる。序盤だし適当にやってもいけると思うけど一回作ると手直し大変そうなんよな」
細かく設定できるからこその手間。なのでできれば一発で完成形へ持っていきたい。マルタノダンジョンのように経済に寄生させた迷宮を作れればまさに理想的といえる。うん、段々見えてきた。
「うっし到着っと」
そして何よりも配信者でもある俺が心がけるべきはサクサクプレイであること。それを体現するように80層に到達。ズザザっと地を削ってサブサブロが止まる。
名無しF :何かめっちゃ面白そうなんですけど何このゲーム
モブ聖人 :正体不明のゲームらしい。VRじゃないけど見専でも楽しいよ
自宅警備兵 :これ今VR主流じゃなきゃ絶対話題になってるよな
「配信ある日はつぶやきキングで宣伝してるんでフォローよろしく。配信は極力作業なしでやるつもりなんで見てくれ。ってことで最終層のボス戦です」
門を前にした待機ルーム。やっぱり冒険者に接待するかのような造りだが、それくらいしないと冒険者がきてくれないのかもだ。
食らっていたので、回復薬を使って準備を整える。
「うし!じゃあマルタノダンジョンクリア目指して最終層ボス挑戦すっぞ」
小蕎 :おー
名無し :いけいけのりこめー
モブ聖人 :やってやれサブイチっ
現在18時、流石にボス戦で一時間は掛からないだろう。ああ、やってやろうじゃねえか。たとえどんな敵だろうと今の俺とサブサブロは止められないっ!
そして俺は扉を開き、そっ閉じしたのである。
「オホン、じゃあ迷宮攻略は一旦ここまでにしますね」
自宅警備兵 :おい
名無しF :まだ18時ですよ
百獣 :一瞬見えた気が……
ココアイ :日寄ってんのかー
ゆうゆう :へーいへーいサブイチ日和ってる
うるせえ!お黙れ!ってかお前ら日常とキャラ変わってんだよ。特に盛賀はチャットだと豹変するタイプか?見てなかったのかよ。あれは不味いっ最高に不味。
俺にとって最強の敵が現れた。暗くて隠れていたのが残念……じゃなかった幸いだった。間違いない奴は──
(サキュバスっ)
しかも余りにもセクシーだ。あれは歩くBPO。映したらBANになるやつ。違うベクトルからの最凶が一郎とサブサブロの前に立ちはだかったのである。




