122.【俺】稀代の変人としてその名を轟かす
学生である俺は忙しい。大体が課題。デュアルミッシュでちょっとサボった結果、次忘れたらヤベエぞと真顔で担任に言われたので俺は追い詰められている。そう、実はゲームやってる場合じゃない。
だが、この最上一郎に死角なし。コントローラーを持たずとも強化を図る方法がこの世にはあるのだ。
「tom is a penっと」
英語、全く分からんとシャーペンを投げた俺はふっと笑みを浮かべ無人で稼働するコントローラーを見た。
その名、連コン。1秒間に15連打という超スピードの優れもの。MMOだと稀に放置連コンは禁止されたりもするがデュアミはオフゲーなので許される。
魔王であるサブサブロは魔物を倒しても経験値が微量しか手に入らない。正直、魔物のみでレベリングをするのは苦行。よって盗賊討伐クエストなどがベストだが、何か無駄にリアルに寄せてて面倒くさい。
そこで俺が目を付けたのは熟練度システム。レベルアップで貰えるスキルポイントだが一応武器を振ることでも熟練度レベルが上昇しそれにより少量ながらポイントを獲得することができる。
恐らく不殺プレイで詰まないようにした救済システムだろう。とはいえ結構な労力を強いてくるが。ゲーマである俺は見逃さなかった。
壁に向かって武器を振ると通常の1.2倍熟練度が溜まる事を。結果──
カン!カッカッカッカッカ!カンカンカンカン!
バワンと大福に湧きスポットで戦わせて魔物のレベリングし、その横でサブサブロがひたすら壁打ちするという構図こそが最効率となった。武器の耐久値がゴリゴリ減るが安物の斧を大量に用意した俺に隙はない。壊れた瞬間、上から装備されるので装備覧が埋まっている。偶々入ってきた冒険者達がドン引いた感じで去ってゆくが全く以って気にならない。
何せゲーム、むしろ入ってこられると困るのだ。更に英語の課題も完璧にこなすという超効率プレイ。この最上一郎に──
「パスポートとりたいですっと」
一寸の死角なし。ビっと俺はシャーペンを振り、筆箱に閉まった。そして更に俺のターンはまだ終わっていない。親に内緒でゲームはつけっぱなしにする。つまり、俺は寝るがサブサブロ達はデスマーチ。ブラック企業も真っ青だがゲームだからいいのである。
さあ、ポイントを稼げサブサブロ。そして俺に新技でキャッキャウフフさせるんだ。仲間を失わないために俺はデュアミを本気でやると決めた。決して配信者がモテることに気づいたからではない。決してないのだ。
◇◇◇
朝、起きてチェックを行う。何か仲間のバワン達にもドン引かれてる気がするがサブサブロは未だカンカンやっていた。
「よし」
ちょっと考えて魔王であるサブサブロはHPが低く死にかけ状態になることが多かったので≪瀕死の時こそ滾る力≫というパッシブスキルを取る事に決めた。後、火力アップ技もと選んで決定。どんどんサブロが脳筋キャラになってる気がするけど気にしない気にしない。
≪パワーチャージLv1を覚えました≫
≪瀕死の時こそ滾る力Lv1を覚えました≫
新スキルゲット。でもポイントが思ったより少ないと確認してうわぁっと俺は顔を顰めた。
「次ヤバいな」
必要熟練度がエグイことになってた。流石に一気に技解放とはいかないようだ。まぁできてしまったらレベルの意味がステータス上昇以外で無くなってしまうのでそれはそう。あるだけ有難いと考えよう。
バワンと大福もチェックするとレベルが上がっていた。状態が疲労困憊になってるのが心配だが相手にしていたのは雑魚なので体力は言うほど減ってない。
連れ歩ける従魔は二匹まで、他の面子を軍に参加させてしまったためペルシアではこの二匹固定。ってわけで取得技はPTのバランスを意識したい。
やはり見た目通り大福がタンクでバワンが牽制だろうか。回復役が欲しいがどう見たって彼女達にはできそうにないので、俺ことサブサブロがその役目を担うことになるだろう。攻撃役兼アイテム撒きオジサンである。今日やる予定のマルタノ迷宮攻略では回復薬を余分に持とうと思う。仲間用のポーションは職人で作れるようになっている。
≪大福がふもっふシールドを覚えました≫
≪バワンがフェザーショットを覚えました≫
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ふもっふシールド :体を風船のように膨らませ、物理攻撃を70%カットする。発動中は動くことできない。元に戻るのに息を吐きだす時間を要するだろう
フェザーショット :羽根を銃弾のように撃ちだす遠距離技。生え変わる羽根のみなため弾数に限りがあるので注意が必要。弾は羽根マークで表示
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うん、いい感じと帰還させて学校なので電源を落とす。流石に自分がいない時はこの手法はできない。親バレすればしばかれ最悪データを消される。間違いなくあの母ならやる。
支度を整えて出ていくときに俺はチラっと机に置いた白百合学園の招待状を見た。一人で来いとは言ってない。友人として猿も呼ぼう。決して生贄、身代わりなどではない。話せば絶対に行きたいという。これは友人を思ってのことなのだ。




