10.【俺】ゲームなのに激務なんですが?
「木サウザンドワン……お前で終わりだ」
キャラが天を仰ぎ、俺も天を仰いだ。まあ自室の低い天井しか見えないが。何故俺はゲームをやっているはずなのに仕事のような作業を行っているのかと。
俺の1時間が名前決めというかその入力だけで終わった。なんと総木数1001体。もうトレントの大魔王を名乗っていいレベルである。
「やり切ったな俺」
言葉にできない達成感が俺の身を包む。目の前に広がる光景は壮観の一言。この膨大な数のトレントがファームの中で幸せそうに暮らしている。
「ふふっもはや何のゲームやってんのかわからなくなってきたぞ俺」
400辺りから狂いそうになったのは内緒だ。そして一つ気づいた事がある。トレント達の葉っぱの色が違い、空白の大地の東に生息とか書かれていた。ツリーたちは西。俺は東に行ってない。つまりだと踊るツリーを俺はカメラでとらえた。
絶対にこいつが呼びに行ったに違いないという確信。
(ただそうなるとやっぱ時間が進んでるってことになるんだよな)
電源を切っても時間が進むゲームの存在は俺も知ってる。でも、22世紀とはいえ個人製作でそこまでできるだろうか。そして企業製品だとするともうちょっと話題に上がっててもいい気がするが……。
「うーん」
後、思うのがトレント1000体でも制限が掛からないってこと。一体魔物をどこまで使役できるのか。
「よく考えればこんだけ綺麗でこの数のモブが動いて処理落ちしないってすごくね?」
色々と違和感を覚え始めたこのゲーム。ちょっと考えた俺だったがまあいっかという結論に達した。これがゲームであることには間違いないのだし、何だろうと楽しんだもの勝ちだと思うから。
≪使役魔物が1000体を超えました マナ作成が解放されました≫
「うお」
何かわからんけどもまた力が解放された。ワクワクしてみて見れば待ちに待ったもので俺の目が輝く。
◆───-- - - - - - - – --───◆
≪マナ作成≫
マナを使用することによって特殊なアイテムを生成できる
アイテムボックス小袋 1000 マナ
収納ボックス 500 マナ
トレントの気持ち 40000 マナ
所持マナ1001
◆───-- - - - - - - – --───◆
「きちゃああ」
念願のアイテムボックス。重量が限られているとはいえこれで持ち運びができる。しかもゲットできるとテンションが上がる。
「っと待て待てどうやって所持マナ増やすかみとかねえと」
≪ファームで過ごす魔物からマナを吸い取り、貴方に与えます。一日一回。回収量は魔物により異なります≫
「げっ一日掛かるのか」
となればトレント大量使役は正解だったかもしれない。なんていってもトレントしかいないのだし。慎重に使うべきポイントだと理解しつつも絶対必需品だと俺は即アイテムボックスを製作した。光が満ち、掌に小袋がポトリと落ちメニュー欄にボックスが追加された。
「よし」
斧を出し入れし使える事を確認した俺は先の事を考える。
「収納ボックスも欲しいけど……場所決めてからだよな」
気になるのはトレントの心か。
「もしかしてトレントと話せるようになるとか?」
未だにぴっとり付いてくるツリー。正直、配下と意思疎通できないのはかなり不便極まりないが……流石に4万マナは遠い。マナを多く落としてくれる配下獲得が必要だろう。
「場所決めのためにここ離れてえけど……こいつらここで待機してくれねえかな」
幾つものエモートを使用し何とか意志を伝えてみる。するとツリーが反応しその場で転がり出した。うん、伝わってるのかわからない。ただ、ゆっくり離れてみるが付いてこなくなった。
「いけたってことでいいのか?ちょっとの間ここで大人しくしてくれよ。後もう絶対増やすなよ?フリじゃねえからな」
俺が離れることを理解したのか。ずらりと並びいってらっしゃいっぽい動きをするトレント達。1001体いるのでえらいことになっているが見なかったことにした。兎に角、これでやっとまともに冒険に旅立てると俺はホッとするのだった。




