江戸に帰る
やっと、板橋宿が見えて来たぜ。
腐っても僧侶だから、宿賃も食費もいらねぇのが助かるねぇ。
般若湯までは托鉢できねぇからお金がいるがな。
今日は田貫家下屋敷の門前の寺に草鞋を脱いでち~とばかし、探りを入れるかな。
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拙僧は空心、危険なことを弟弟子に押し付け安穏としているわけではない。
田貫様のご家中を通じ、情報を集めているのだ。
所詮いいわけに過ぎないと言われれば返す言葉はないがね。
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お江戸良いと~こぉ~♪一度ぉ~はぁ~おいでぇ~♪
酒は旨いし、ねぇちゃんは綺麗ってね…
讃岐出身のはずが、すっかりお江戸に「帰ってきた」って感覚になっちまったな。
田貫の殿様の悪いうわさがねぇのが不思議だねぇ?
むしろ家老の「木常平十郎輝紀」の悪い噂のほうが多いねぇ?
所謂、悪家老の専横ってやつかねぇ?
詳しく調べてみると田貫の殿様の言い分じゃ委農借りだって?
年貢を幕府に差し出せって意味じゃぁ同じだが、あくまで借り上げって言ってるようだな?
「稲生狩り」と「委農借り」じゃぁ同じようで結果は大違いだなぁ。
こりゃあ、悪家老による勝手な悪政のようだ。