寺へ…
幕府が異能者狩りを始めたらしい。
師僧を同じくする兄弟子が手を貸せと言ってきた。
幕府の基本は変化のない安定を願っているからなぁ。
僧侶や神官の、除霊はどう思っているんだろうな?
あれも異能なんだが・・・
稲生狩りだったらしい。
幕府財政悪化を受けて、各大名家から稲生(稲がよく育つ地)の献上を自主的に行えってお触れだったようだ。
つまり貧乏人には関係のねぇ話ってわけだ。
じゃあ兄弟子が会いたいってぇ話は何だろう?
自慢じゃあねぇが・・・宗派の上にはトンと縁がねぇ俺に
立派な御住持を務めておられる兄弟子様が会いたいってぇわけがねぇ?
さっぱり思いつかねぇ。
「空心ご住持様、弟弟子の戒空ご用命により推参いたしました。」
「おお、戒空や元気にしておったか。わざわざ貴僧に足労をかけさせたのは、他でもない。」
「この戒空、卑賎の身為れど、兄弟子のご用命があれば即座にご足下に参りますぞ。」
稲生狩りで唯一の穀草地を取り上げられそうな下位大名が、菩提寺に泣きつき総本山が
幕府老中の菩提寺を任されている空心様の丸投げってぇわけか・・・
そして、菩提寺旦那の機嫌を損ねたくねぇ兄弟子様は、市中に住まう僧に責任を転嫁・・・
まぁ・・・あれだな・・・兄弟子にはいろいろ借りがあるし。
俺が不興を買っても、せいぜい御老中の領地と江戸に住めなくなる程度。
ここらでド~ンと、恩返しでもしておくか。