お江戸銀座の裏長屋
お名前をお借りしましたが特定の宗教団体とは一切関係ありません
はい・・・決して教義を調べるのがめんどくさいんじゃないんです。
高僧を目指すも夢破れた四十路の青年僧侶の青春劇?
俺は、戒空。
いわゆる乞食坊主、願人坊主と言われている・・・裏長屋に巣食う落ちこぼれだ。
生国は讃岐の国の山奥。そう、あの信厳宗の開祖「香坊大師空階」様の生まれ故郷の近所だが
残念ながら宗派は新宗に属する。
一応ちゃんとした僧籍がある僧侶だ。
なぜ乞食坊主と呼ばれているかって言うとだな・・・
徳を積むぞと勇ましく誓って国を出たのに・・・
夢破れ、江戸の町でうらぶれているわけだ。
月路の奔頑寺に行けば僧籍を確認してもらえるし末寺になら転がり込める。
信厳宗に傾倒しすぎ師僧に怒られた結果、寺を出てしまったので行きにくいのもある。
俺にはこの裏長屋でくすぶっているのが似合っている。
「おい!生臭!!・・・くたばってないようだな。御一日に先年亡くなった爺さんの法事をやるんだがお足がないから、生臭もたまには役に立つとこ見せてみろ!!」
隣に住む大工のお上さんのお熊が騒いでいるなぁ・・・
「お足がねぇって言っても俺に礼金出すぐらいはあるんだろうな?」
「生臭のお経だと成仏しないだろ!飯食わせてやるからそれで我慢しろ!」
やれやれ・・・どうもただ働きのようだ。
まぁ普段汚れ物を洗濯してもらっている恩をここらで返しておくか・・・
「俺は新宗だぜ?めぇさんとこは、情渡宗じゃないのか?」
「はぁ?お前さん讃州と言ってなかったかい?うちの滓食いの宿六と同じ信州なのかい?御国言葉が違うけど?」
ん?・・・・
「膳香寺の信州じゃねぇ!月路の奔頑寺の方の新宗と言ってるんだ!」
「わかりにくいねぇ・・・でもお足が要らないんならお経はおんなじだろ?」
お互い裏長屋住まい・・・懐は知れてるし。
一応これでも・・・お経を読むのは師僧に次いで上手かったんだが。
得度を得たときは空戒と名乗っていたんだが。
信厳宗の御開祖「香坊大師」様の僧名が「空階」と知ってあわててひっくり返したんだ。
読みが同じ「くうかい」になっちまうからな。
あんな徳の高い高僧と同じ読みなんて・・・恥もいいところだ。
さてと・・・般若湯のお足を稼ぎに門付けに行くか。