二つ目の後悔
やっと村の名前が出せます!
今回の投稿も楽しんで貰えたら幸いです!
バタバタと廊下を騒がしく走る音が聞こえ、バンっと音を立てて、突然開かれる部屋の扉。
「報告致します!クエト村へ向かった部隊との連絡が途絶えました!」
その報告を聞いていた金髪碧眼の男は微笑みを浮かべたまま冷静に言う。
「ねぇ、ドアはちゃんとノックしてよ。」
その緩すぎる態度に、報告をした男はこめかみをひくつかせた。
「何を悠長なことを言っているのですか!突然部隊からの連絡が途絶えたということは、道中で何か大変な事が起こったに違い無いのですよ、それなのに貴方はいつも……」
そう長々と続きそうな男の言葉を遮り、金髪碧眼の男は微笑んだまま言った。
「その部隊の隊長に持たせていた記録水晶があったよね。それが破壊されていなければ何が起きたのか分かるんじゃないの?」
その言葉を聞いた男はハッとした表情をすると、己の懐から飴玉ぐらいの小さな水晶を取り出した。
その様子を金髪碧眼の男は愉しそうに見ていた。
「メルトってしっかり者に見えて、何処か抜けてるよね。」
その言葉を聞いたメルトと呼ばれた男は、頬を少しだけ染めると、気を取り直す様に咳払いをした。
「レイヴィス様には言われたくありません。さあ、何が起こったのか見ましょう。」
記録水晶とは二つで一つであり、録画機能が付いた魔導具だ。
一つの記録水晶からもう一つの記録水晶へと録画された映像が送られる。
これは怜が考えたものだった。
メルトは記録水晶を手に乗せると己の魔力をあてた。
すると部屋に大きなスクリーンが現れ、そこに部隊の様子が記録されていた。
途中までは順調に歩みを進める兵士達。
だが、その後突如として異変が起こる。
急所を一撃でやられて、どんどん倒れていく兵士達。
黒い仮面と変わった軍服を着た、長い銀髪の男によって行われる一方な蹂躙。
あまりにも一方的な展開にメルトは己の体が冷えていくのを感じた。
そして、大量虐殺を終えたであろう男は記録水晶に仮面を被った顔を近づけると呪う様に言った。
『お前ら、絶対に私が殺してやる。』
そこからは記録水晶によっては、何の情報も得られなかった。
メルトは内心冷や汗をかきながらも、努めて冷静な声で言った。
「一体、この仮面の男は何者なんでしょう?軍服を着ていましたが、見た事の無いものですし、戦闘能力も格が違う……」
焦り悩むメルトの心情を他所に、部屋中にレイヴィスの愉しそうな笑い声が響いた。
「いいねぇ、面白い。さぁ、楽しくなって来たよ。」
そんなレイヴィスを、メルトは呆れた様に見つめた。
ルネとマユが手を繋いで楽しそうにクルクルと回っている様子をネルは微笑ましく感じながら、昨日の出来事について考えていた。
昨日この村、クエト村を攻めに来た兵士達を皆殺しにした。
それによってシナリオは少し変化して、今マユは生きていて、この村は平和だ。
だが、まだこれからもルネとマユが幸せに生きていけるか?と問われたら答えは否だ。
クエト村を攻めろ、と言った黒幕が存在する限り、この村が襲われマユが死に、ルネが絶望するというフラグは立ったままだ。
そのフラグを完全に折るには黒幕である人間を突き止め殺す必要がある。
あの兵士はクエト村に重要な砦があると言っていたが、漫画の作者からすれば、そんな設定は創っていない。
まして、何故クエト村が襲われたのか、という事自体僕は知らない。
知っているのは、ただ隣国の兵士に攻め込まれ、滅ぼされた村、ということだけだ。
それに本当に重要な砦があるのは、この村から少し離れたエト村という村の筈だ。
それなのに、クエト村を襲うのはお門違いだろう。
だから、恐らく黒幕の狙いは砦ではなく、他の何か別のものだろう。
クエト村には黒幕が欲しい何かがある。
だがネルにはそれが分からなかった。
漫画にもそんなものは登場していない。
だが、まぁ別に構わない。
それは、黒幕に聞けばいいのだから。
取り敢えず、ネルはこれからどうするのか考えた。
黒幕は、ほぼ間違いなく隣国の身分の高い者、つまり貴族だろう。
隣国の貴族と会う方法……
それを考えて、ネルに一つの方法が浮かんだ。
もうすぐ王都で、大規模な舞踏会が開かれる。
その舞踏会に潜入する、それがネルの考えた方法だった
そこには、いろんな国々から貴族が訪れる。
例え、黒幕に出会えなくとも何か情報は掴める筈だ。
そう考えたネルの脳裏を、もう一つの後悔がよぎる。
ネルが闇だとしたら、この漫画には光、即ち主人公がいる。
そして、その舞踏会で主人公は大切な人を失い絶望するのだ。
ネル!王都へ行く!
次回の投稿も読んでくれたら嬉しいです!