ネルの決意
ネルとルネ、ややこしすぎます!
間違っていたらすみません。
因みにネルの一人称は幼い頃は僕、青年の時は私です。
血の匂いと焦げ臭い匂いが辺りに漂う。
「マユっ、死ぬな!」
そんな荒廃した場所で少年の悲痛な声が辺りに響いた。
腹部から血を流す少女は、少年に弱々しく笑いかける。
「お兄……ちゃん……生き……て」
少女は掠れた声でそう少年に言うと、生き絶えた。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
少年の悲しい絶叫が響き渡る。
少年は少女の手を取ると言った。
全てを呪い、拒絶し、恨みながら
「殺してやる!全員殺してやるー!」
突然頭の中に入って来たネルの記憶と強すぎる負の感情に、怜は思わずよろめき、壁に手をついた。
ルネとマユはそんな怜を心配そうに見ている。
「お兄さん大丈夫?」
怜は、心が壊れそうになるほどの衝撃を受け、荒い呼吸を繰り返していた。
何という強い殺意。
漫画でしか知らなかったネルの思い。
それが、こんなにも強く哀しいものだったなんて。
今は、描いていた漫画の世界の十年前。
こんな悲劇が今、これから起ころうというのか。
怜はルネとマユを見た。
二人とも心配そうな顔で怜を見つめていた。
死なせたくない。
この二人には幸せになってほしい。
そう、強く思った。
それはネルが思ったのか、怜が思ったのか分からなかった。
怜はルネを見つめた。
「君がルネ?」
その問いにルネは笑顔を向けると明るい声で言った。
「そうだよ!僕がルネ!お兄さんは一体誰?」
その問いに怜は迷った。
ネルと怜どちらを名乗るべきか
でも、これから僕は暗殺者として生きていく。
死神と呼ばれる最強の暗殺者ネルとして
「私の名前はネル。」
その答えに二人は目を丸くすると声を出して笑った。
「お兄さん、自分の名前とお兄ちゃんの名前、間違えるなんて変なのー」
「お兄さんと僕の名前そっくりだね!面白いー!」
ケラケラ笑う二人を怜否、ネルはとても優しい目で見守っていた。
泊まる所がないと言ったら、ルネとマユが自分の家に泊めてくれると言った。
二人の母親もいいと言ってくれたので、有り難くネルは家に泊めてもらうことにした。
野菜がゴロゴロ入ったポトフの様なものをご馳走になりながらネルは考えていた。
確か、隣国からいきなり攻め込まれる前日、この村では収穫祭があった筈だ。
ネルはルネの方を見つめた。
「ねぇ、ルネ。この村の収穫祭はいつなんだ?」
「収穫祭?それは今日だよ!」
その返答にネルは目を剥いた。
じゃあ、明日この村は襲撃される。
そして、蹂躙され全て奪われる。
あの悲劇が起こる。
「ルネ、マユ。何があっても私が守るからね。」
その言葉に二人は首を傾げると楽しそうに笑った。
「よく分からないけど、お兄さんかっこいい!」
その言葉にネルは内心微笑んだ。
表情には出なかったが。
絶対にこんな残酷なシナリオを変えて見せる。
そうネルは決意した。
見せてやろう。
死神と恐れられた、暗殺者の力を。
次回、ネルが力を見せます。
次の投稿も読んでくれると嬉しいです。