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上杉景虎

 さて、景勝の本心を聞いた俺だったが、心は変わらなかった。悪いが、こんな破滅願望的な人物と手を組んでも武田家の存続は望めない。

「悪いが、俺は武田家を守るために最善の手を打つ」

「どうしても敵対するというのであれば我らは織田家と結びますぞ!」

 兼続が苦し紛れに言い放つ。

「残念だが、そんなことが出来るなら誰も苦労はしない」

「くっ」

 兼続も無理とは思っていたのか、無念そうに唇を噛んだ。

「せいぜい景虎殿の刺客に気を付けて帰るがいい。変なところで死なれては後の越後統治の障害になるからな」


 俺の言葉に景勝は一礼して席を立つ。兼続はまだ何か言おうとしていたが、景勝は無言で帰るよう促し、二人は退出した。

「さすが殿、堂々とした振る舞いでした。これぞ武田当主としての振る舞いでございます」

 傍らの昌恒が感動の眼差しで見つめてくる。

「武田当主か……」

 何とも実感がわかなかったが昌恒にそう言ってもらえるということに悪い気はしなかった。



六月十日 御館

 その後武田軍二万はいくつかの越後の城を接収した後、景虎方が本拠とする御館に入城した。景虎軍は六千ほどであったのと比べ物にならないほど多く、もはや景虎軍というよりは勝頼軍であった。

「兄上! ようこそおいで下さいました!」

 そう言って出迎えたのが景虎である。明るい色の髪をちょこんとサイドテールに結び、顔全体から愛嬌がにじみ出ている。景勝と違って天真爛漫活発な雰囲気で、一軍の将にも関わらず俺を見るとたたたっと駆け寄ってくる。景勝とは似ても似つかない。まあ、全く血は繋がっていないのだから当たり前だが。


「兄上?」

 俺は首をかしげる。

「はい、時姉様が嫁いでいるので兄上です!」

 そう言えば俺の妻の時姫も景虎も氏政の妹と弟だったか。

「遠路はるばるようこそおいで下さいました! ささ、どうぞ中へ」

 どうぞと言っているがここは上杉憲政の館だった気がするが。俺はそんな突っ込みをスルーして景虎に手を引かれて中へ入る。


「ようこそ御館へ。共に景虎様の勝利のため頑張りましょう」

 そう言って恭しく一礼したのは北条景広。上野の景虎派武将、北条高広の嫡男で武勇に優れていると聞く。只者ではない風貌をしているが、さすがに武田家当主が相手だからかどこまでも恭しい。

 御館に集っているのは上杉一門衆が多い。一門衆は上田長尾家の血縁が本家を継ぐのを良しとせず景虎に味方したという。一方、謙信の旗本や側近は直江兼続を筆頭に景勝に味方している。その他の国衆は地域やそれぞれの対立関係により両派に分かれていた。

 そんな景虎派武将との対面や武田軍の滞在場所の決定などが行われた後、俺は景虎と改めて対面していた。


「改めましてようこそ越後へ! 氏政姉上が来れないのに兄上だけに来てもらってすみません」

 景虎はちょこんと頭を下げる。そんな仕草が可愛い。

「でも姉上も一生懸命なのであんまり責めないであげてくださいね。そこは景虎に単独で勝つだけの実力がなかったのが悪いんです」

「景虎は悪く思わないのか?」

 健気なことを言う景虎に思わず聞いてしまう。

「はい。北条家は離れていても、家が違っても皆繋がっているんです。それは氏照姉上も氏邦姉上も同じです。今度は私の番ということですよ」

 ちなみに氏照は大石氏に、氏邦は藤田氏に養子に入っている。簡単に言えば他家に養子に入り、家を乗っ取っている。


「なるほどな」

 勝頼の兄たちは切腹したり寺に入ったり夭折したりでそういう連帯感はまるでない。

「じゃあ景虎は上杉家を継いだら、上杉家の力を使って北条家の役に立ちたいか?」

「もちろんです」

 景虎はぱっと花が咲くような笑顔になる。

「あ、でももちろん勝頼兄上の役にも立ちたいです。姉上からも兄上のため馬車馬のように働くようにとの指示が」

「お、おう」

 相変わらずあいつは人遣いが荒いな。

 改めて景勝と景虎、全く違う二人だな、と俺は感じた。


ここで景勝ルートを選ぶとトゥルーエンドが見れますが、景勝ルートは失敗すると史実エンド(ある意味トゥルーエンド?)になります(適当)。

主人公は順当に勝率が高そうな方を選びますが。

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