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あたし、転生したら巨乳になるんだ~そして気付けば異世界無双~  作者: ナ月
第一章【転生・友情・おっぱい】
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第7話【こきーん無双】


 一方、ジェシカ。


 ここはどこだろう、と連れてこられたジェシカは思った。

 石造りなのに埃まみれで、茶色い木箱が積まれている。

 ここは、何かの倉庫だろうか。


「ひょー、お嬢様おっぱい尊いわぁ」

「まさに貴族のサフタンク。うひゃひゃひゃ」


 下衆な笑い声を上げる三人の男たち。

 彼らはジェシカが魔法を使えないのを知っている。


「……」


 ジェシカは苦渋を噛みしめるように俯いた。


「ところで、このサフ水が入った小瓶、中身はどうしたのかなぁ?」

「げへへ、所詮はまがい物。使っちまったんじゃねーの?」


 ニヤニヤとした笑みを浮かべたまま、男たちはジェシカに歩み寄る。

 指先で彼女の顔を上げ、無理やり目を合わせた。


「大変だよなぁ。この国のお姫様は象徴としていなければならない」

「なのに、今回の第一王女はその素質が少し足りない」

「だから、サフ水で増強せざるを得なかった。さしずめ、そのサフ水は万が一のためのものだったんだろ」


 く、とジェシカは言葉に詰まった。

 この男たちは全てを知っている。


 そう、ジェシカはこの国の王女である。


 そして、歴代のお姫様はHカップでなければならない。

 ジェシカはそこに少し足りなくて、サフ水で補わざるを得なかった。


「さぁ、ジェシカお姫様。お選びください」


 男はいやらしい笑みを浮かべた。


「俺たちを魔法で倒し、象徴としての立場を失うか」

「または、俺たちにおもちゃにされるか」


 そんなの、選べるはずがない。

 悔しさと絶望が胸にこみ上げる。


 この身はどうなってもいい、とジェシカはすでに覚悟を決めていた。

 ただ、今まさに泣きそうになっているのは。

 育ての親同然だった執事と、初めての友達に見限られたことだ。


「だんまり決め込んでんじゃねーぞ、お姫様ぁ!」


 がつん、と強く平手打ちをされて、ジェシカは地面を転がった。

 埃がワンピースを汚す。


 地面に投げ出されたジェシカの肢体を見て、男たちは欲情し、舌舐めずりをした。

 

「助けが来るとでも思ってんのか?まさか」

「残念。あの執事はグルでしたぁ!あっひゃひゃ」

「ああ、いいねぇいいねぇ。無抵抗な女性をいたぶる快感!たまんないねぇ!」


 男たちがジェシカににじり寄る。

 その動きは先ほどまでのものとは違っていて。

 

 まるで、欲情した獣の行進。

 さすがのジェシカにも恐怖が走る。

 だからせめて、それ以上は近づかないでと。


「それ以上―――「それ以上、近づくんじゃねーよ。発情した猿ども」


「お?」


 急に口調が変わったと思い、男たちは互いの顔を見渡す。

 そこで、見渡す顔が二つしかないことに気付いた。


「あれ?あいつどこ行っ……ぐほぉ!」


 男の一人が急にうめき声をあげて倒れた。


「なっ、どうした相棒!」


 突然の異変にすかさず身構える、最後の一人。


「あ……あ……!」


 男を打ち倒したその人物を見て、ジェシカは声にならない言葉を出した。

 猫みたいにすらりとした体に、猫みたいな黒髪ショートカットに、猫みたいな鋭い瞳。

 でも、猫じゃない。


「トーコちゃん…!」


 彼女が暗がりからぬっと現れた。


「てめぇ、どっから沸いてきやがった。見張りはどうした!」


「見張り?そんなん、みぃんな地面にキスしてるぜ」


 男はやられたやつをちらりと見る。

 股間を抑え、うずくまっていた。

 男が耳を澄ませば、入口の方から言葉にならないうめき声が聞こえてくる。


「まさか、お前。見張りの奴ら全員…!」

「男はみんなこうして蹴り上げろってパパンに教わった」

「な、何の躊躇もなく、男のゴールデン・ボールを蹴り上げるだなんて…!」


 ひいぃ、と男は震えあがった。

 しかし、トーコも傷を負っている。


 額からは血さえ滴っていた。

 ましてや、胸が、しぼんでいる。

 今ではかすかな膨らみしか残っていない。


 ジェシカは問いかける。

 どうして、どうしてそこまでしてくれるのか、と。


「トーコちゃん、そんな、そんな(傷らだけ)になってまで、助けに来てくれたの?」

「ああ、そうさ、そうだよ。こんな(Aカップ)になってまで、助けに来てやったさ」


「どうして?どうしてなの?どうしてそこまでして助けてくれるの」


「そんなの、決まってるだろ。

あたし(のおっぱい)よりも、友達であるジェシカ(のおっぱい)のほうが大事だからに、決まってるだろ!」


「と、トーコちゃん……!!」


 どこか噛み合っているようで噛み合っていない友情の歓喜を分かち合う二人。

 そんな甘いやり取りに、最後の一人になってしまった男が思い直す。

 そうだ、所詮は小娘なのだ。男はルフを使える。サフとは違い、戦闘用の魔法を。


 だから言ってしまう。

 だから、ボロを出してしまう。

 けして言ってはいけない、その一言を。


「はは。ここまで来たのはさすがだ。褒めてやってもいい!

だがな、そんなタカが知れてるAカップで俺と渡り合おうってのかぁー?!」


「誰がタカが知れてるAカップじゃボケーーーーーーッッ!!!!!」


 こきーん!


「ぐぉぉぉぉおおあぁぁぁあああぁぁぱぁああああああ!!!?」


 悪は滅びた。


「ほら、行くよ。ジェシカ」


「と、トーコちゃん…王子様みたい」

「そりゃどうも。お姫様」


 ため息交じりに二人は手を取り合って。

 埃くさい倉庫から出ていった。

今回のまとめ「Aカップは尊い」

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