第5話【姫は囚われるもの】
閲覧数が伸びるたびにおっぱいが膨らめばいいのに(読んでくれてありがとう!)
あたしがジェシカの胸の中で泣いて、しばらくして。
彼女がサフ水の入った小瓶を、また胸元に戻したころ。
「お嬢様、そろそろお戻りくださいませ」
「…わかったわ」
いかにも上流階級の執事ですといった佇まいの老人が、腰にサーベルをぶら下げながらやってきた。
「え?お嬢様?ジェシカって、何者」
「…お嬢様、なのよ」
うふふ、と彼女はどこか寂しそうに笑った。
どこのお嬢様なんだろう。
いやでもあのおっぱいだ。もしかしたら、大魔術師の娘とかかもしれない。
「ところでお嬢様。そちらのお方は?」
「ああ、私の友人です」
「さようでございましたか…フム」
執事はどこか考え込むように、唇に指を添えた。
「じゃ、またね、トーコちゃん」
「お、おう」
またね、って、いつ会うつもりなんだろう。
という質問をする前に、執事がさっと塞がってきた。
「…トーコ様、というのですね、では、これで」
そ、っと執事はあたしの手を取り、ぎゅっと何かを握らせた。
「なにも見なかったことにしてくださいませ」
「は?」
ジェシカは馬車に向かっていく。
ああ、シンデレラが乗りそうな、お洒落な装飾が施された馬車だ。
執事もその後に続く。
手のひらを開くと、そこには二枚の金貨が握らされていた。
「……なっ」
嫌な予感を覚え、顔を上げる。
友達の危機かもしれない、と、そう思ったのに。
「きゃぁぁああ!」
時すでに遅く、黒服の男たちが三人がかりでジェシカを羽交い絞めにした。
「はっはっは!おら、執事は動くな!お嬢様はいただいていくぜっ!」
などという台詞を吐いている男たちに対し。
「お、お嬢様…っ!」
と、執事はわざとらしく戸惑い、手をこまねいている振りをしている。
「誰か、誰かっ!誰か助けてぇ!」
ジェシカの声に応えるものは誰もいなかった。
誰もいなかったのだ。
身を挺してまで彼女を助けようとする者は、誰も。
「……そんな」
ジェシカの目が曇った。
ああ、あたしは、その目を一生忘れない。
あんなにも、絶望に曇った、その目を。
あたしはただ呆然と、何もできないまま事はあっという間に済んで。
ジェシカは、あっという間に町の闇へと消えていった。