第3話【サフ水】
この世界には魔法が日常にあるらしい。
そしてそれは、女性と男性で性質が異なる。
この世界の女性は占いや魔術に扱う魔法の素【サフ】をその身に宿らせることができるらしい。
サフとは、量が全て。その身に宿す量で効果の規模を指定できるからだ。
そのサフ量とは、すなわち、おっぱいなのだ。
この世界の魔法は、おっぱいに蓄積されるのだ。
巨乳であればあるほど強く、貧乳であればあるほど……って。
「結局おっぱいで女の価値決まるんじゃねーか…」
「そういっても過言ではないわね」
いや、むしろあたしがいた世界より残酷だ。
なんとなく貧乳の方が低ステータスという話ではない。
明確なる低スペックなのだ。貧乳は。
「あたしにおっぱいがあったなら…
夢も魔法もあったのにな…」
あたしの涙が月夜に光る。
切ない、なんて切ないんだ……!
「トーコちゃん…」
「触るなっ、この、巨乳!」
「……ッ!」
「……ごめん、あたしに、優しくしないで」
「…トーコちゃん…!
トーコちゃん、あのね、私、今日は楽しかったの!」
「あたしも楽しかったさ」
「私の、初めての友達、だったから」
さぁ、と夜風が吹き抜けた。
赤くほてった頬を、そっと冷ましてくれるような、そんな風が。
「……初めて?」
「うん」
「今まで友達はいなかったの?」
「……うん」
「どうして…」
「どうしても、だよ」
「…そっか、あたし、初めての友達に、酷いこと言っちゃったな」
「私にも、非はあるよ。トーコちゃんはてっきり、サフを使い切ったものだとばかり」
「使い切った?サフを?」
「サフは使えば、おっぱいがしぼむのよ」
「なん……だと……」
捨て身すぎるだろこの世界の魔法。
「あ、でもすぐに元に戻るのよ。その人の基礎値までは」
「あぁ、よかった。それ聞いて安心したわ」
ジェシカの国宝級のおっぱいがしぼんでしまう日が来るのかと思って、ヒヤヒヤした。
あたしの基礎値?ゼロですが何か?
「そしてサフ水は、その基礎値を一度だけ引き上げるの」
「二度とは元に戻らない、ということね」
「そう。しかもサフ水は超希少なジェムからしか作られない。
もしも世に出回れば、呆れるくらいの巨額の値で売り買いされるわ」
「そりゃそうでしょ。だって、おっぱいが大きくなるんだもん」
誰もが欲しがる上に希少。そりゃ値も張るだろうさ。
だって、おっぱいが大きくなるんだもん(真理)。
「…こっちの世界に来て、特にするアテもなかったけど、今できたわ」
「まさか、探すの?本気でサフ水を探すつもりなの?」
「本気なんかじゃないさ。ただ、あたしが想像しうる最大限の行動で探してみようというだけさ」
「人はそれを本気と呼ぶのよ」
「あたしは諦めない。ここは確かに残酷な世界ではあるけど、希望があるんだ」
「…そう、トーコちゃん。探すのね、サフ水を」
「うん。探す」
「そっか、うん。そうだよね…」
す、とジェシカは自分の胸ぐらに手を突っ込んだ。
手を入れてなおも余る胸の谷間に、あたしはひゅっと息を呑んだ。
するりと彼女が取り出したそれは、水色の小瓶。
「これが、サフ水よ」
「…………ちょっとまって異世界目標が早くも達成する目前にある」
「貴重なものだけど、トーコちゃんが喜んでくれるなら、あげるよ」
「え、ちょ…あ…え…(声にならない戸惑い)お、おう……ええ、いいの?」
「うん」
「ほんとに、いいの?」
「うん」
「後悔しない?」
「うん(ぽよん)」
確かに、そのおっぱいが答えだ。
それ以上、しかも一時的に大きくする必要性はないのかもしれない。
「じゃ、じゃあ…もらうね」
そう言って、あたしはその小瓶に手を伸ばす。
手が震えた。
心の底から求める秘宝がそこにあるのだ。
かくして、あたしはこの天使みたいな女神さまから。
おっぱいが大きくなる魔法の水を受け取った。
説明ばかりになってしまった…(´・ω・)
次はちょっとえっちくしようか(錯乱)