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授業という名の特訓

ちょっと書式を変えました。

今はまだまだ勉強中ですので、これからも変わるかもしれません。

温かい目で見守って頂ければ幸いです。

「んぁ……寝ちまってたか」

 目覚めたユキは、口から垂れているのに気づいて乱暴にこすりながら起き上がる。

 自分でも気づかない内に疲れていたらしく、体がすっきりとしていて軽い。

 今のコンディションなら、いつもよりスキルの出来がいい気がする。気のせいだろうけど。

「ん?」

 若干の鉄臭さを感じ、寝てる間に怪我でもしたかと全身を見回していると頭に声が響いた。

『やっと起きたか』

「あぁ。おはよう、アルテア」

『あぁ、おはよう……やはり、むずむずするのう』

 これまた久しぶりなのかむず痒そうに言うアルテア。天空王の威厳がないなと思いながら、ユキは軽く首を回す。

「それで、これから俺を鍛えるのか?」

『無論じゃ。とりあえずは我直々の教育と魔術を1セットとして鍛えていく』

「教育、ね」

『知識なき者は魔術を極めることは出来ん。魔術の基本は独学で身につけられても、強弱の関係、利点や弱点などの知識を知らなければ応用と発展を独学で身に付けるのは困難。故に教育じゃよ』

「確かにその通りだな」

 アルテアの言葉に反論の余地はないので、ユキは賛成してその場に座った。

『まずは魔術ではない超基本的な教育から行こうかのう。ステータスを開け』

言われたとおりに開くと、前と少し変化した部分があった。

『ユキ・セツナ

 Race:雪女

 Lv:35

 HP:500/500

 MP:350/350

 称号:神の加護を受けし者、氷神の血族、瀕死体験者、泥水を啜りし者、上級氷魔術師、天空都市南部の王者、天空王の被憑依者

 固有スキル:神の加護、ステータス閲覧、絶対零度、氷結、炎熱弱体Ⅴ、瞬間解凍

 スキル:絶対零度耐性Ⅱ』

 前との違いは、ボッチが無くなり、新しく天空王の被憑依者が追加されている2点だ。

『まず、絶対零度耐性があるのに冷気耐性や氷結耐性を持っていないことに疑問は持ったことはあるか?』

「あぁ、ある」

 あのデカ猪を倒した後に疑問に思ったことだ。

 絶対零度耐性が出るまでは、表示されないだけで冷気無効……とまでは行かずとも、冷気耐性が最大だと思っていた。

『スキルというのは実際に経験しなければ入手しているということはない。固有スキルは種族に準じたものか生まれ持ったもの(ギフテッド)でなければ、この欄に表示されることは無い。まぁレベルが上がれば増えることはあれど、減ることは無いのじゃよ』

「ふーん。でも、俺は氷に触れまくってたぞ」

 なのに、冷気耐性が無いっておかしくないか。

 そう思っていると、アルテアは割りと大きな声で笑った。

『ふっふっふっふ。それはお主の体温が氷より低いからじゃろうて! お主の氷はお主にとって汗をかかない程度の温度でしかなく、冷気を感じているとしたら、その時は氷よりも高く体温が上昇していたのじゃろう』

「つまり、今までの冷たさは冷気にカウントされていなかった?」

『その通りじゃよ。魔術をもっと極めれば、冷気耐性が上がる程の……いや、絶対零度の氷すら自由に出せるようになるじゃろうて』

「絶対零度……」

 ユキは自分の手を見つめながら、絶対零度を使った時のことを思い出す。

 自分自身も凍らせるほどの低温の氷。文字通りの絶対零度。

 その恐ろしさが蘇ったのか、ユキは体を震わせた。

『あぁ、間違えないように言っておくが、絶対零度耐性と冷気耐性は別物じゃからな』

「同じに思えるんだが?」

『まぁ同じといえば同じなんじゃがな。違うのは程度。冷気耐性は生物が寒さや冷気を感じる程度の温度で獲得できる。絶対零度耐性は生物が凍てつく温度で獲得できる。両方を並行して獲得することは出来ず、冷気耐性の温度なら冷気耐性、絶対零度耐性の温度なら絶対零度耐性のみじゃ。それでその温度じゃが……人間で言うならば、氷に触れれば冷気耐性。氷河の世界で全裸になって寒中水泳で絶対零度耐性と言った具合じゃ』

 アルテアの説明に、ユキは納得する。そしてそれと同時に絶対零度を使った時は本当に危なかったのだと理解した。

 自分の力で死んでいては世話がない。

 それに当たり前だろうが、それだと生物の種族次第で獲得できる条件が違うのだろう。

 その条件について聞いてみたいな。

 そう思い、ユキはアルテアに質問をすると、アルテアは得意げそうにこう答えた。

『確かにそうじゃとも。種族によって耐性を得る条件は違う。全体的に見れば違いは微々たるものじゃが、両極端にいる種族を比べたら大きな違いじゃ。例えば、お主の種族である雪女は凍河の世界に居なければ、放っておけば勝手に死ぬ程に熱に対して脆弱じゃ。だが、凍河の世界に居ればすぐに冷気耐性はマックスになる。冷気耐性に対してボーナスがあるからの。その代わりに、ちょっとやそっとの冷気では耐性は上がらん』

「なら、冷気耐性を上げるにはどの程度の温度になるんだ?」

 ユキがそう尋ねた直後、一瞬で洞窟内の温度が下がり、急激な温度差でユキは一度だけ体を震わせた。

『最適なのは寒さを感じる程度じゃよ。温度で表すならば-250度といったところじゃ』

「-250度……」

 それって確か絶対零度じゃなかったかと思うユキ。

 ユキの体から湯気が出て吐息も真っ白だが不思議と寒さで体は全く震えていない。むしろ、気持ち良さすら感じる温度だ。

 ユキは急激な温度差から関節が軋むのを軽く確かめながら、ステータスを見ると凄まじい速度で冷気耐性が上がっていっていた。

「お……おぉ……お?」

 困惑している間にとうとうⅤになり、そして無効にまでなった。後、氷結耐性もⅠだが獲得している。

 それをアルテアに報告すると、アルテアはあっけらかんに言った。

『自然では絶対にここまで温度は下がらん。雪女の冷気耐性は、普通は-50度当たりで数ヵ月かけて無効にまで上げるものじゃからな』

「殺す気か!」

 普通の5倍の超低温に晒され続けているという事実も忘れ、ユキはアルテアを怒鳴りつけた。とはいえ、普通の5倍の超低温でも雪女は生きれるようで、ユキはほんの少し関節が動かしにくい程度で問題なく動ける。

 雪女は本当に氷や冷気に対して凄まじいポテンシャルを持っている種族である。

『最適と言ったじゃろう。もっと低くすれば絶対零度耐性も得られるが、どうする?』

「それは……」

 アルテアの提案にユキは迷った。

 ユキにとって絶対零度はトラウマだ。

 流石に寿命まで死なないようにすると言っているアルテアが自分を見殺しにすることはないと思うが、それでも絶対零度に対しての恐怖は完全に拭い去れない。

 この恐怖を押さえつけて、絶対零度耐性を獲得し、無効にまでなれば恐怖に囚われることも無くなるだろうが……。

「いや、今はやめておく」

『そうか。では今教えた中で何か質問はあるか?』

 アルテアは特に気にするまでもなくそう言うと、質問がないかと尋ねてきた。

 気にしていないふりをしているのか、それとも本当に気にしていないのか。

 ユキには判断がつかないし、問いただすつもりもない。

「参考までに絶対零度耐性を得られる温度ってどのくらいだ?」

『そうじゃな……-1万度といったところか』

「いちま……馬鹿みたいな数字だな」

『正確には分からんぞ? 我が受けた絶対零度の氷がこの温度じゃったから、この程度なのではと思っておるだけじゃ』

「ふーん」

 何でも知っていると思っていたアルテアだが、それでも知らないことがあると知り、アルテアも全知ではないんだなとユキは思った。

 後、ユキは昔の絶対零度使用者ってスゲェなーと思うと共にそれを喰らって生きてるアルテアが漠然と物凄い存在なのだと感じていたが、それが少し明確に感じるようになった。

『では、次の教育じゃ』

「あぁ」

 アルテアによる、ユキの為の教育はまだ幕が上がったばかりである。

 この後もアルテアの教育は続く。

 もちろん教育だけでは終わらず、先に宣言していた通りに魔術の訓練がその次に控えている。

 教育で頭が疲れたユキがそれをアルテアから告げられて絶望するのは、数時間後のことである。


 ~教育・魔術の一部をダイジェストでお送りします~

『神の加護というのは───』

「ふむふむ」

『───簡単に言うと、ほんの少しお主に都合がいいことが起こるだけじゃ』

「なるほど。じゃあ、俺にそれをくれたのは神ってことなのか」

『恐らく、な』

「何だよ。何か含みのある言い方だな」

『気のせいじゃろう(根絶やしにして魂まで喰ったというのに……我が死んでる間に新しい神が生まれたのかのう。まぁそれはそれで面白いがな)』


『氷結とは空気中の水分を凍らせて───』

「うーん」

『───つまり作った氷を核にして、氷に触れた水分を凍らせてどんどん大きくしていくスキルということじゃ』

「ミョウバンの結晶みたいだな。核となる結晶に糸を付けてだんだん大きくしていく奴」

『おぉ。お主の記憶にあったあの水晶みたいな奴か。そうじゃそうじゃ。それと全く同じ原理じゃよ』

「そうか、同じ原理……って、おい待て。俺の記憶にあったってどういうことだ」

『あぁ、言ってなかったか。憑依すると憑依した相手の記憶が見えるのじゃよ』

「はぁ!?」

『そう怒るな。これは否応なしに見えるのじゃから仕方ない』

「俺はお前の記憶は見えなかったぞ?」

『これは憑依した者の特権という物じゃよ。諦めるがいい』

「変なもの見なかっただろうな?」

『もちろんじゃ。魔法を使っておったから数年分しか見ておらんよ』

「ならいいけどよ……」

(その分、知識面は全て見せてもらったがの)


『魔術には属性があり、通常は基本属性である火、水、電、土、風の5つと特殊属性の闇、光の2つを合せた7つじゃ。これらはほとんどの生物が使え、自分や種族的に適した属性が一番器用に使えるが、それ以外の属性も努力次第では使えるようになる。優位性は───』

「なるほど。優位性は、火は水に弱く、水は電に弱く、電は土に弱く、土は風に弱い。闇と光はお互いに弱いってところか」

『───その通りじゃ。まぁ魔族は使えんがな』

「あぁ、だからほとんどの生物って言ったのか」

『そうじゃ。魔族はその種族に合った属性しか使えないが、その代わりに魔族にしか使えず、先に述べた基本属性よりも強力な上位属性と呼ばれる属性を使う。炎、氷、雷、嵐の5つ。特殊属性はなしじゃ』

「なるほど。優位性は同じか?」

『いや、上位属性に優劣は無い。本人の力量次第と言ったところじゃな』

「なるほどな。こっちは努力次第では?」

『他の属性か。使うことは出来んの』

「そっか……待て、アルテアは洞窟を整備する時に色々と使ってたよな。後、さっき」

『我は特別じゃからな。例外で全ての属性を使える』

「うわ、チートじゃねぇか」

『そうかのう(最初から使えるわけじゃなかったがのう)』


『魔術はイメージと慣れじゃ。まずは氷を飛ばせるように───』

「おぉ、なるほど」

『───という風にやってみよ』

「……っは!」

『……小石程度の氷が落ちただけじゃな』

「は、初めてやったからだよ!」

『そうじゃな。では、それが出来るまで次には進まん。頑張って練習するがいい』

「え」

『終わったら起こしてくれ』

「ちょっおい、アルテア!」

『……』

「アルテアー!」



 どれほどの時間が経っただろうか。

 ユキは何度か休憩を挟みながら、かざした手から氷を飛ばす練習をし続けていた。

 何度も何度も失敗を繰り返していき、徐々にだが氷が飛び、飛距離が出てくる。

 それに一喜一憂し、続けていき、とうとう小石程度の氷の粒が、洞窟の壁に当たった。

 当たった氷の粒は粉々に砕けたが、それを見たユキは顔を明るくしてアルテアに声を上げて報告した。

「アルテア! 出来たぞ!」

『見ておったぞ。思ったよりも早いのう』

 寝ていると思っていたアルテアも見ていたらしく、そう言うと魔術の授業を再開させた。

『後は自由な形で放つことが出来れば完璧じゃ。それはおいおいやるとして、魔方陣の勉強をするぞ。まずは文字を覚えるところからじゃ』

「どんと来い!」

 学ぶのが楽しくなってきたのか、それとも出来ないことが出来るようになるのが楽しく感じているのか、ユキの次の授業に対してやる気満々だ。

『意欲があるのは良いな。では、次は───』

 こうして、アルテアによる英才教育の日々は1日、2日、3日、4日とページをめくるようにめまぐるしく過ぎていき───14日目。

『以上で基本的な授業を終える』

「ありがとうございました」

 アルテアからの基礎教育を全て教わり終えた。

『現在でも十分に使えているが、完璧には程遠い。それに戦闘時ではいつも通りというわけにも行かん。その為にも数をこなして、精度を上げれば並大抵の相手にも勝てるようになるじゃろう』

「上げて落とすなぁ。お前」

 ユキもたった2週間で世界最強(自称)の全てを継承できるなどと思ってはいない。

 鬼と思える程の過酷さ、そして神経をすり減らす拷問にも近い反復練習の数々。

 その分、2週間ずっと快眠だったけどな。

 だがまぁ、それでもだ。

(俺は十分に強くなった、はずだ)

 勉強中に一度だけアルテアの指示で絶対零度を使ったが、洞窟が氷で埋まって死にかけた。

 その時はアルテアが慌てて体に入って対処した為に事なきを得たが、アルテアからは絶対零度は禁止にされた。

 アルテア曰く、暴走しているとのことだ。

 絶対零度は相手を凍らせるのであって、氷で包み込むものではないらしい。

 つまり、氷を作り出すのではなく物を凍らせるものらしい。

 だが、暴走した場合はその限りではない。

 暴走状態は通常よりも強力な効果を発揮するが、その分、使用者にも負担がかかるし、使用者にも襲いかかる。

 そして、暴走する理由としては圧倒的な実力不足。

 アルテアが憑依した状態なら暴走状態でも色々なスキルを使用すれば御しきれると言うが、そしたら暴走状態じゃねぇじゃんとかそう言った突っ込みはしないようにした。

 同じようなことをしたら、授業がものすごく苛烈になったからだ。

 世界の支配者(自称)は狭量な奴でした。

『では、我は寝る。何かあったら呼ぶのじゃぞ』

「はいはい。おやすみ、アルテア」

『うむ。おやすみじゃ』

 頭の中から声がしないのを確認し、ユキは体に氷を纏わせて洞窟を出る。

 洞窟との気温差で霧が立ち込めているが、霧は上空に昇るに連れて霧散していく。

「久々の外だなぁ」

 2週間ずっと洞窟に篭もりっぱなしだったので、久々の外はとても開放的に感じる。

 滅茶苦茶暑いけども。

「食料食料~」

 少し浮ついた声色で鼻歌を歌いながら、ユキは食料であるリンゴを採りに森の中へと入っていった。

ここで一旦切ります。

次の話は、勉強と一緒になっちゃうのはちょっと違うなって感じのものなので。



↓ 本作品の改稿版的なものです。全く別物になっておりますので、こちらも見ていただければ幸いです。

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