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昨日今日明日  作者: がぁーやん
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日常からの脱出

タタタラ♪タラララ♪タタタタ~ララ♪♪・・・♪意識の向こうで喜びの歌が聞こえる・・・。音色に幸せな気持ちになり闇に引きずり込まれそうになる。やばい目覚ましだ・・・。頭が重くて起き上がれない。いつものように身体が反応しない。一瞬何がおきているのかわからなかった。

『そうだ、昨夜…』幼稚園からの親友の祐美ヒロミが失恋してやけ酒に付き合って散々飲んだんだった。外が賑やかだ。だるい身体を引きづりつつ玄関へ。隣家の新婚夫婦だ。バカップル。新婚旅行から帰って来たとかで土産を持って来た。ったく、他人の都合は御構い無しか。チッ、先が思いやられる。日曜日の午前6時30分の出来事だ。コレが隣人トラブルというやつか。噂に聞いていたがそんなバカが隣人なんて余程ついてない。ただ、土産が胡散臭置物ではなくハワイアンホストのチョコレートだった事がせめてもの救いだ。「面接行かなきゃ!!」ヒカリは手早く身支度を整えた。ヒカリにはタロウという恋人がいる。タロウはモテた。ヒカリの就活はタロウが原因である。ヒカリはサユリ、珠子という同級生3人で割烹居酒屋を共同経営していた。手ごろな値段でバランスのとれた飲食ができる店として評判が良く、来年には店舗数を増やす計画もしていたが、共同経営者の1人のサユリがタロウに夢中になり再三誘惑をしていた。タロウはサユリには興味がないのでお茶を濁さずハッキリと誘惑を辞退していた。その頃からヒカリのまわりで妙な出来事が勃発。深夜、玄関の扉を叩く音やドアノブをガチャガチャ触る音がしたり無言電話がかかってきたり、見知らぬ男性に待ち伏せされていたり兎に角妙な出来事だらけだった。ある日の事、サユリがヒカリの携帯からタロウにヒカリのフリをしてデートの誘いのメールを送りつけた。たまたま、タロウは都合が付かずヒカリに断りの電話をした。が、携帯はまだヒカリのバッグへ戻っておらず、ヒカリは何も知らない。その夜、ヒカリの弟の剣がヒカリの家へ遊びに来ており、タロウに会いたい。と電話をした。ヒカリの偽物からもタロウが誘われていた事をみんなが知ることになった。職場では同級生として普通だったが、直接嫌がらせをされた。突然、棚から段ボールが落ちてきて段ボールの下敷きになるところだった。その時、棚の側ではサユリが薄ら笑いを浮かべ立っていて『惜しかったね。労災までもうちょいじゃったのに』と言われた時、転職すると決意した。そして今、転職のための面接へ行くため電車に乗っている。実は、ヒカリは以前から、料亭を経営している都からスカウトを受けていた。だがヒカリは昔堅気で友情を捨てられない性分のためスカウトを辞退し続けていた。

降りる駅は終点で、車中は人がおらず貸切状態だった。その状態に安心したのと寝不足からうたた寝してしまった。あまりの賑やかさにハタと目覚めた。車中は満席で、鼻ピアスの男の子とグレイの髪の毛の20代のカップルが激しいケンカをしていた。突然、小学生の男の子がその女の子のスカートの裾から中を覗いていた。ぎゃ。と言う女の子の声が聞こえた瞬間、鼻ピアスの彼が小学生のお尻を躾をする程度に叩いた。やるな!鼻ピアス。そしてケンカは収束。やがて電車が終点に到着した。転職先の料亭は海沿いで交通量も少なくこの場所で経営やって行けるのかしら⁉️と、心配になるほど人気がない場所だ。『就職した途端にすぐ失業者に逆戻りなど冗談じゃないわ』と、ヒカリの口から思いがけず言葉が出ていた。

その料亭の営業時間は夜だけなのだが2週間に一度、昼の懐石も提供している。昼懐石の店内の様子を確認し、食し。レポートを作成。そして面接を受けてもらう。だがレポートはオーナーの都へ直接提出。そして都からの依頼で面接に来ていることは口止めされていた。素知らぬふりをして昼懐石を食し、レポート作成。食事代の清算を済ませ一旦退店。面接の約束の時刻は15時45分。まだ1時間程ある。カフェでコーヒーでも飲もうか?とも思ったが天気も良いので海岸まで散歩することに決めた。5月だと言うのに車がずいぶん停まっている。海にはサーファーやジェットスキーを楽しんでいる人々が見える。有名な海辺なのかな⁉️などと思いながらぼんやり眺めていると 初老の婦人から声をかけられた。その婦人は寂しさのあまりか突然見知らぬ私に身の上話しを始めた。老婆の20代の頃の話。時代は関東大震災直後だ。聞いても全く理解が出来ない話だったが老婆が非常に気の毒で相槌を打ちながら相手をしていた。そろそろ面接の時間…行かなきゃ。老婆に約束があるからと話しのコシをおり別れの挨拶をしてその場から立ち去った。老婆のすがるような眼差しに何故か心が傷む。料亭に着いたのは15時40分。

さて、面接だ。店内に入る前、髪の毛と衣服の乱れを少し整え、大きく深呼吸。ガラガラガラ年季の入った扉を開ける。40代の女性がトレーを拭いていた。『失礼いたします。私、15時45分に面接の約束をしております。沖田ヒカリと申します。女将さんはおられますか?』『こんにちは。女将さんとお約束ですね。少々お待ちください。』と言って奥へ消えて行った。直ぐ彼女が戻って来て奥へと案内される。『女将さん。沖田さんをお連れしました。』『ありがとう。スミレちゃん。下がっていいわ』とハスキーな声。障子を開けて中へ入る。女将さんをみて驚いた。実は彼女はサユリがタロウを誘惑する前に好きだった男性の婚約者だった。その男性に相手にされないサユリは数回の自殺未遂で脅迫。サユリが原因で彼女は破談した。「都さんはサユリと女将さんとの因縁を知ってるのかしら?全て承知で私達の事も?」アレコレと思考を巡らせたが今は面接に集中する事にした。

女将さんが履歴書を確認。退職理由を質問される。都さんからスカウトは口止めされている。共同経営者と男が原因で揉めた等とホントの事も言えない。無難に将来展望の方向性の相違だと答えた。滞りなく面接終了。女将さんにも気に入ってもらえたらしく即、始業開始日時の相談。来月1日からと決めた。女将さんが店から10メートル程先の海辺にあるマンションを一棟持っており、その一室を寮として賃借してくれるそうで破格の値段で賃借して貰える。とても魅力だ。今のマンションはマナーの悪い隣人、サユリの嫌がらせで非常に住心地が悪い。渡りに舟とはこの事だ。帰りの電車を待ちながら今後の人間関係の断捨離を思いあぐねていた時、電話の呼び出し音が鳴った。都からだった。『早速だが、今夜、食事をしながら意見が聞きたい。』話をするのは構わないがお昼が遅かったのでお腹が空いてない。ヒカリはちょっと迷って『明日の朝、ご一緒しませんか?』翌朝午前8時にホテルのロビーで会う約束をして電話を終えた。

家に着いたのが20時すぎ。シャワーを浴び、就寝の支度をしていると非通知着信、イタズラメール。玄関のドアが開いてタロウが入ってきた。非通知着信やイタズラメールに不機嫌になるタロウ。目覚ましを午前6時にセットし、明朝約束があるから休む事を告げるとタロウは「帰る」と出て行った。戸締りして寝床へ入ったのが22時。五月蝿い…喜びの歌ではなく玄関を叩く音と男の怒鳴る声。えっ⁇何⁉︎何処⁈何時⁈ヒカリは時計を確認。午前3時。騒ぎはバカップルの部屋だった。金をかしてくれ‼︎と中年男が暴れていた。関わらない事に決め2度寝をする。

やっと喜びの歌が聞こえた。隣室では今でも金かせ、貸す金が無いだのとだらだらやっている。3時間もやっていたのか。

情景-

7時50分。ホテルのロビー。

都の姿は見えない。(良かった。私が先だ。)ヒカリは時間厳守を日常にしており、都は地位のある男性には珍しく時間厳守なのだ。ヒカリはロビーのソファに腰掛け都を待った程なく、ロビー専用の給仕係の女性が温かい番茶とおしぼりを持って来てくれた。ロビーでティータイムではない事を告げたが、顔見知りのヒカリへの心遣いと給仕の女性がおっしゃるので有難く頂戴した。温かいおしぼりが手を温めて、温かいお茶が冷えていた内臓を温めてくれた。その温かさに包まれ、ヒカリは(生きている!)と改めて実感した。「おはよう!」朝だと言うのに爽やかな声。声の方へ向き直るヒカリ。そこには懐かしい笑顔。「片岡さん。おはようございます。」ヒカリも微笑みながら挨拶を返す。デパートのお酒売り場で勤務していた時のお得意様の片岡と都が立っていた。2人が知人だとその時まで知らずにいたのでとても驚いた。都には驚かされ続けている。朝食をご馳走され、懐石料理店”のどか”への意見を述べる。都が聞きたいのは客の満足度と売り上げ増への率直な意見だった。売り上げ増は無理だと思う旨を正直に述べた。温泉と寝床があって寛げても良いかもしれない。と提案。店舗拡大の計画があり2号店出店予定だという。そちらの店舗への意見も求められた。新店舗では会員制のシステムを導入し、会員と会員からの紹介客のみ。座席数、カウンターのみ10席程度。従業員は料理人が1名。下膳、洗い物などのお手伝いの方1~2名。予算2名で3万円〜要予約。

料理に合うアルコールの提供+特別な料理、日常を忘れる時間の演出、極上の空間の提供。を提案。

片岡氏も機嫌よく微笑みながら聞いていた。おもむろに片岡氏が2号店の経営をやってみたい。と言ってきた。実は片岡氏は輸出入貿易商を営んでおられ、輸入品目はワイン、チーズ、葉巻、車。輸出品目は日本酒、焼酎、和食等。ヒカリがお酒売り場で勤務している頃は、輸入のみだったがその後の日本食ブームで輸出も始めたそうだ。そしてTPP・FTA・EPA等の影響での事業拡大計画があり、以前から飲食店経営にも興味があったという経緯から2号店の話は都と片岡氏で今後相談する。と言う事で決着。都からヒカリへ”のどか”勤務後新店舗で女将をやらないかとスカウトがあった。「今後もよろしくお願いします。」と即座に返答するヒカリに都が大きく頷いた。マンションへ戻って驚いた。隣室は、まだやり合っていた。アリャリャ。転居急がねば!!


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