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「一樹っ!避けてっ!」
母親の必死の叫びと同時にぼくの身体は宙を舞っていた。
中学一年の夏、話題となっていた流星を両親と共に見に行った帰り、泥酔した六十代の男性の運転する車はハンドルの操作を誤り歩道へと乗り上げ一人先を歩いていたぼくへと接触した。
病院に運ばれた当初、軽い脳震盪と診断されていたぼくは何故か目を覚ます事がなく、四日が過ぎた夕方…目を覚ましたぼくのベッド際には睡眠不足で疲れ果てた両親が涙を浮かべて安堵の表情で佇む姿があった。数日の精密検査の後に異常はないと退院したぼくは数日を何事も無く過ごしたのだが………気付いてしまったのだった。僕にとって大切な物が失われている事に………。
………その日を境にぼくから世界の輝きが消えてしまったのだ。