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戦姫ロイアス譚   作者: 藤出雲
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episode 0 「灰色の悪意」 第七話

第七話


リィルナルが統率する、リ・ユプナ派の総寺院には王宮議会でも踏み込めない謎が多い。

国軍並の兵力を有しているとか、失われた古代魔術の研究機関があるとか…一種の都市伝説みたいな話も幾つかある。

そしてその実、そうした馬鹿馬鹿しく聞こえるものに限って真実だったりするのだ。

それをセイラガイス王国民は、痛感する事になる。

「ぎゃあ!」

セイラガイス王宮に、衛兵達の断末魔が響き渡る。

「うふふ…いよいよですね、お母様」

王宮内に敷かれた血の絨毯を優雅に踏みしめながら、セイラガイス第三王女トリアネルと、セイラガイス第一王妃リコが満足そうに嗤っていた。

「東側の緑優殿、制圧しました」

其処に駆け寄り、跪いて報告したのは、リ・ユプナ派総寺院僧兵団の兵士だった。

「ご苦労。…で?王宮警護に残った第十二騎士団は?」

リコが尋ねると、僧兵はにやりと笑って王宮の南側にある後宮大殿を指差した。

其処から立ち昇る火の手と煙、そして聞こえる阿鼻叫喚。

「ふふふ…長年の我が怨み、今こそ晴らす時!傀儡の如き人生の運命を課したセイラガイス王を、討ち取る…」

リコは、トリアネルの手を握りしめた。

「はい、お母様…」

トリアネルは、母の手の温もりを感じると、にっこり微笑んだ。

武闘大会三日目の朝の事である。

リィルナル・アペリィーシュの事を語るには、セイラガイス国とその近隣の民族等について、幾つかの歴史を紐解かねばならない。

彼が産まれた当時のセイラガイスは、戦乱の時代であった。

「北方の雄」、北方主神タンビルを崇めるスバンダゥル系民族バンドル族が「国家」を宣言し、近隣の西エルーヴィ族、タロン族等を征服・吸収しながら、南西部国境を隣とするセイラガイスに宣戦布告。

後の世で言う「北方の聖戦」の幕開けであった。

更に、国内の魔的濃度の強い呪場が暴走するという事件が多発。これにより、呪場から大量の魔物や低級悪魔が発生し、王国は内外共に対応を求められた。

リィルナルの出自は、定かではない。前述の、バンドル族との国境線沿い…つまり当時の戦争の最前線地域で産まれたと言われる。

セイラガイスのルーツであるプルレ、セイール、レラ人に見られる外見的特徴は無く、どちらかといえばバンドル族に吸収された西エルーヴィ人に近いものがあったという。

いずれにしても、戦災孤児として戦場で産声をあげ、戦場で生き抜く事を迫られる人生だった。

少年期は傭兵の真似事をして敵味方の区別無く、金と食事の為にどんな戦場にも行った。

やがて、魔的センスを買われてセイラガイスの魔法僧兵団に入る事になるのだが、その時に出会ったのが当時のリ・ユプナ派総寺院大総僧、トクラレン・ハンプナーである。

リィルナルの才能を見出し、正規に僧兵団に入団させる為にと、養子縁組まで行った。

彼の人生が、初めて花咲いた時期でもった。

正規の魔法戦闘、リ・ユプナの宗教を基軸にした教育により、一流の魔法僧兵としてめきめきとその才能を伸ばしていくリィルナルであったが、しかしある日それも無惨に崩れ去る日が来る。

それは…。

「トクラレン様…とうとうここまで来ましたぞ…」

武闘大会二日目の夜。

星空を見上げながら、リィルナルが呟いた。

時を同じくした、武闘大会二日目の夜。

14歳以下の部二回戦の全てが終わり、コアナの街は盛り上がるばかりである。

リナリナ(ロイアス)VSエンネランスの事で、話は持ち切りなのだ。

武闘大会会場になるこの街は、武勇を尊ぶ事に重きを置く風潮が強い。そして、酒の産地でもある。

コアナ原産のコアナキビで造られる蒸留酒「コアナラム」は、王族御用達から街中の屋台まで、幅広く親しまれている銘酒であった。

「あの娘は優勝候補だね!間違い無い!」

「いや!総騎士団長の息子が圧倒的だった!俺ぁあいつに全財産つぎ込むぜ!」

夜の街中で、人々が祭を謳歌する。

恐らく、この日の酒が最後になる者は極めて多いだろう。

「おー、すげえじゃねーの、アス坊。優勝候補筆頭ってのは間違いねえんだな」

ユタがコアナラムをロックで飲みながら、アスドガリスの肩をばんばんと叩く。

「い、いやいや、俺なんてそんな。それより、ユタさん…」

アスドガリスが、真剣な面持ちで言った。

ユタも酒を飲む手を止める。

「…おう。任せとけって。必ず…な」

言って、拳を握りユタはアスドガリスの方へ向ける。アスドガリスも頷きながら、握った拳をユタの拳に軽くぶつけた。

「必ず」

「必ず」


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