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戦姫ロイアス譚   作者: 藤出雲
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episode 0 「灰色の悪意」 第十一話

第十一話


「何だあ?この騒ぎは…」

ガシャガシャと、大きな金属音と共に闘技場に入った無精髭の男と、少女。

闘技場から聞こえる衝撃音と、人々の叫び声。

よく見れば、騎士団が避難誘導を行っている。

「悪魔だ!伝説の悪魔が出た…」

「もう駄目だ、此処から出られずに皆死ぬ…」

泣き叫ぶ人々の様子に、只事ではないことを察する男と少女。

「ねえパパ、これって…」

「あー…間に合ったんだか、間に合ってねえんだか…。とりあえずテルヴィントレスのおっさんを捜そうや。お偉方の席っぽい所に行きゃ会えるんだろ」

場の緊迫感に余りにも不似合いな、のんびりとした口調で男は言った。

一般観客席を走りながら、ロイアスは闘技場の様子を伺った。

「お父様とお姉様とテルヴィントレス達が闇に包まれて、この間のおじいさんが悪魔で…?」

頭の中は、混乱しっ放しである。

しかし、ロイアスは自らの身体を止める事はしなかった。

「と、とにかくアスドガリスと、リトラスを助けなきゃ…あんな場所に居たら、巻き込まれちゃう!」

「マジかよ、全然効きゃしねえじゃねえか!」

斬撃を与えた筈のユタが、舌打ちする。

「まずいな…」

キルンが、冷静さを取り戻しながら現状を分析する。

こちらの戦力は…。

カルトローサと第一騎士団長補佐1名及び、第一騎士団上位騎士約20名。

ユタ。

自分。

更に列席していた第六騎士団長クルレ・ツィーヴァと第六騎士団上位騎士約20名、第七騎士団長ハパトラ・ナムヤ・ナムルデンと第七騎士団上位騎士約20名は、避難誘導を終えればすぐに加勢する筈だ。

その他の、騎士達は恐らく戦力外。悪魔に立ち向かうよりも、観客達の守護に専念させる…。これはテルヴィントレスも同様に考えていたらしく、実際、彼等が闘技場に降りて来る事は無かった。

「…第八騎士団、第九騎士団、第十騎士団達の気配が掴めなくなっている…これは…」

恐らく、避難誘導で闘技場の外に回ってしまった為、リィルナルが張った灰色結界の中に入れなくなっているのだろう。

「フィルさんの気配も、あの時から全く感じられない…」

第十一騎士団は、元々諜報活動が専門の部隊であり、団長のフィル・リムルが王、姫、テルヴィントレスの護衛も兼ねていた為、恐らくリィルナルが王族賓室内に施したあの闇結界に囚われているのだと、キルンは推測した。

…そして。

「俺の気のせいじゃ無さそうだな…この化物、さっきから…」

そう。リィルナルの魔力は、先程から増大し続けていた。

セイラガイス王国史の、どの文献にも、上級純悪魔との戦闘は記されていない。

理由は単純である。

「龍魔戦」以来、上級純悪魔は絶滅したとされており、実際に(少なくともセイラガイス王国領内では)現れる事が無かったからだ。

しかし、今、現実に。

爪が。

牙が。

角が。

尾が。

灰色の巨体が動く度に、其処に居た者達は死んでいった。

皆殺し。

そんは言葉が、逃げ惑う観客達から聞こえてきた。

「くそっ!こっちの攻撃全部喰らってんのに、見向きもしねえ!」

…こんな事なら、戦線基地から自分の得物を持って来ておくんだった。こんななまくらじゃ、ろくな攻撃が出来ねぇ。

ユタが、歯軋りと共に後悔を吐き棄てた。

「第一騎士団!ヨーハ、シルヴァー、トアンヌ、サティン!奴の背後に回れ!「天鹿の陣」で備えろ!カシュア、ケールは左右展開!隙を見て俺と一緒に奴を叩くぞ!」

カルトローサが、部下に指示を出す。その内容は、大型の魔物に対する戦術としては非常に優秀なものであり、キルンはカルトローサの騎士としての能力に「流石…」と呟いた。

「カルトローサさん!ちょっと大きなのをやります!第一騎士団の方をお二人付けてください!」

言ってキルンは右の膝を地面に付け、両腕を空に振りながら呪文の詠唱を始めた。

「よし、コザ、アライア!キルンの術式完了迄、彼を護れ!残りの者は「天鹿の陣」を解かぬ様、隙を見て交代!左右展開の二人のサポートも忘れるな!それと一人!リトラスとアスドガリスを頼む!」

カルトローサが、素早く、的確な指示を伝える。

「ユタは…」

ユタが居た方に、カルトローサがちらりと視線を移した。

「だーっ!たった一撃で剣が粉々って…。っと、剣…どっか其処ら辺に落ちて無かったか…?」

やれやれ。カルトローサはこの土壇場で、ユタの様子につい苦笑してしまった。

要は、この「お祭会場」に、ユタの剣撃に耐え得る武器が無いという事なのだが、それだけ彼の攻撃能力は今この場で必要不可欠である。

「おい!第二騎士団長殿!こいつで良ければ使ってくれ!」

言って、カルトローサは自分の腰に携えていた剣を投げた。

「おいお前、これ…」

聖剣ガラ。

カーロ家につたわる名剣である。

ユタの眼が、獣の如くぎらりと光った。


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