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俺が勇者できみが魔王で  作者: 初雪
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窓の外では標高数千メートルの青空が広がっている。

飛行機の機内では、人生で一生に一度の旅行のプランが飛び交う。

対する俺はある人物の動向を観察することに全力を注いでいる。

その人物とは俺の通う学校で1、2を争う、いわゆる美少女、一ノ瀬春香(いちのせはるか)のこと。

長所を上げればきりがない、美少女という言葉は彼女のためのものだといっても過言ではない、はずだ。

そんな変態じみた行為にいそしむ俺に二人の少女と、一人の男子が話しかけてくる。

「ちょっと、どこ見てんのよ。話聞いてんの?あんた。」

「まあまあ、こいつはこいつで忙しいんだって、そっとしといてやれよ。」

「そ、そうですよぉ。」

やかましいな、なんで俺の班にこいつらなんだ、もっと他にもいただろうに。

そう思いつつもあからさまな態度で返事をする。

「あ?なんか言ってたの、ぜんっぜん聞こえなかった。」

「あ、あんたねぇ。」

そういいつつ肩を震わせ、握り拳を作っている少女は如月真(きさらぎまこと)という、俺の幼馴染で、何かと俺にかまってくる、ぶっちゃけてしまうと少々ウザい、が、なぜか俺はいつもこいつとつるんでいる、いわゆる腐れ縁、というやつなのだろう。外見はなかなかのものだと思う、成績も上々、運動もだ。まあ欠点というなら、短気、手料理が絶望的位だろう。

しかし、クラスでは相当の人気者だ。

空気は主に窒素、二酸化炭素、酸素の総称で、酸素、二酸化炭素ともに必要性がある、だが、窒素には特にその必要性が見当たらない。

何が言いたいのかというと、俺はクラスの空気の、窒素のポジションに位置しているということだ。

つまるところ、俺の人気はそんじょそこらの空気よりも薄いということだ。俺が完璧な空気人間にならないのは真のおかげかもしれない。

今にも堪忍袋の緒を切ってしまいそうな真をなだめようと、いかにもおとなしそうな少女が発言してくれる。

「えっとですね、今は明日の自由時間にどこに行こうか話あってたところなんですよ。ね、真さん。」

「そっか、ありがとな。」

そのおとなしそうな少女は宮村桃華(みやむらとうか)という。

見た目通りとても温厚な性格で、彼女を恨むような奴は、どう考えてもそいつの逆恨みだと断言できるほどだ。

こいつもこいつで、真の快活そうなやつとは正反対のタイプの美少女だ。

桃華も俺の幼馴染で真と同じくらいの付き合いだ。

桃華にフォローの礼を述べた後、何かを忘れているような感覚に襲われる、だが思い出せない、ということはだ、別に思い出さなくてもいいということだ、うん。きっとそういうことなのだよ明智君。

「そういやさ、真、桃華、ここんとこなんだけど・・・」

「ん?どこどこ。」

「どこですか?」

話を聞いていなかった俺は明日通るルートについて聞こうとしたとき、突然に悲鳴とも取れる声を上げ、注目を集めようと俺らの視界に無理やり入ってくる人物。

あれ?こんな奴いたか。

「お前等なぁ、このやり取り小学校の時から数えて何回目!?わざとだったらいいさ、でも、でも、これが、わざとじゃないのが、一番こたえるよ!」

そうだ、こいつの存在を忘れていた、こいつの名前は八島海人(やつしまかいと)こいつの特徴を上げるとしたらまあ、所謂お調子者というやつになるのだろう。

まあ十中八九こいつは俺らと一緒にいるときはいじられ役になるのだが。

「いいんじゃないかな?」

「いや何がだよ!」

とまあこんな風にいじるのが俺、いやさ俺らの楽しみである。

「まあそれは置いといてだな、明日の予定はどうなんだ真。」

「うん、明日はね、解散したあとはここに・・・」

真は言葉の続きを言うことはなかった、いや、いえなかったといった方が正しいだろう。

窓の外を見やると、絶対になくてはならないはずのものがそこにはなかった。

飛行機の右翼側のエンジンが消し飛んでいた。

ついさっきまでの和やかな雰囲気にとって代わり、機内は恐怖と混乱で支配される。

「お、おいどうなってんだ!」

「これ、落ちて行ってるんじゃないの!?」

俺らの前に座っていたクラスメイトが叫ぶ。

周りを見渡してみたがどこもそんな感じだった、真や桃華、海人も例外ではない。

だが、そんな中で俺は一人極めて冷静に、どうすれば脱出できるかを考えていた。普通ならこんな状況で冷静に物事を考えられるわけはない、その状況下で、自分を異常なまでに冷静にさせている要因を、大体は理解していた。

今自分の周りにいるのは、人が最も犯してはならない罪を偶然とはいえ、それを犯し、人一人殺めた奴であるにも関わらず、自分を一人の<人間>として扱ってくれたやつらだ、一生をかけても返せない恩がある、こんな時にしか返すことのできない恩が。

人間という生き物は通常人類としての全力の十パーセントも出せていない、しかし自身の生命が危うくなると、それを三十パーセント近くまで引き出すことができる。所謂火事場の馬鹿力というやつだ。この時自分に閃いたものはそういうものなのだろうと思う、普通ならこんな危険なことを、だれが考えるだろう。だが今は普通ではないのだ、だからこそなのだ。

今おれたちは太平洋の真上を飛んでいる。飛行機には救命ボートが積んであった。あとは・・・

「おい!みんな聞け。」

悲鳴やすすり泣く声、こんな時に喧嘩をしている奴らの怒号、それらが飛び交う機内にでも、俺の声はしっかりととどいたようだ。

「うるせー!黙れ人殺し!」

「そーだよ黙れ人殺し」

「お前は死んで当然かも知んねえけどな、俺たちは死にたくねえんだよ」

「手前一人で勝手に死にやがれ!」

予想はしていたもののここまでしっかりと死んじまえ宣言をされれば、仕方ない。

「そうか。」

そういって、俺は三人の方を向く。

「お前らはどうする?俺の話を聞くか。」

「いや、どうするもこうするも、ねぇ。」

「ああ、そうだな。」

「聞くに決まってるじゃないですか。」

なんでそんなことを、とでもいうかのように真、海人、桃華の三人に不思議そうな顔をされる。

(まったく、この三人は。)

「ありがとな、それでだ、どうすればこの状況で生き延びる可能性を少しでも上げるかというとだな、まぁやり方はいたってシンプルだ、飛行機から飛び降りる。それだけだ。」

「は、はぁ!?そんなことしたら死んじまうだろ!」

こいつ頭おかしいんじゃ、というような顔で海人に反論される。まぁその意見はもっともだ。

「いや、ちょっと待って・・・ううん、大丈夫、この高さからならきっと海に飛び込んでもちょっと痛いだけで済むはず」

「そうですね、確かあの棚には救命ボートもありました、飛び込んだ後も大丈夫です。」

「だろ?別に期待が着水するのを待つっていう手もあるが、そうするとだ、わかるよな?」

顎で叫び声をあげて猿のようにわめきたてている奴らを指す。

「ですね。」

「ええ、きっとそうなるわ。」

「おい、何がどういうことだよ。」

大体のことをほぼ理解している女子二人に対し、まったくもって理解できない奴約一名。

「お前は理解しようとしなくていい。そんなことより、これもて。」

そういって、明らかに重そうなものを渡す。

「いいか、海人、もしこれを飛び下りるときに無くしたり壊したりしてみろ、俺たち全員お陀仏だからな。」

「いや、俺飛び降りるとか言ってな、あ、あアアーーーっ!!」

説明しながらも飛行機のドア前についていた俺たちは一番に海人を機外へと蹴り落とし、真、桃華、俺の順に、まるでそこの見えない蒼色の水面にすいこまれっていった。





「俺が勇者できみが魔王で)読んでくださってありがとうございます。

主人公の名前ですが今はまだ出てきません、後々になって出します。

次話の書き出しどうしようかわからない小生なのでした

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